久方ぶりの北京滞在(その1)

2023/11/17 20:30

私は2022年2月に長年住み慣れた北京を離れ、北海道に移住したが、このほど妻と2人の子供の帰省も兼ねて久々に北京を訪れた。

  • 出発前の機内の様子。乗客は少なかった

11月14日に札幌→北京の直行便に搭乗したが、シーズンオフのせいか写真の通り乗客は少なかった。ただしなぜか欧米系の乗客が多いように見えた。

空港での待ち時間とおよそ4時間半の飛行時間、その後の移動も含めて、都合11時間半かけて北京市内の妻の実家にたどり着いた。今回の訪問の目的はいずれも北京生まれである妻子3人の帰省であるが、私個人的には、コロナによる行動規制からどの程度回復したか、マスク着用者や検温の係員だらけだった風景がどの程度変わったか、という点を見極めたかったのである

到着2日目は、携帯電話の登録手続きに行ったり銀行に行ったりしたが、概して対応ぶりは親切だった。もともとキャッシュレス化が進んでいた中国はコロナ禍で「健康コード」のアプリ登録が事実上義務付けられたことから、スマートフォン携帯が必須となっている。逆に言えば、その電話の中にお金をたくわえておけば不自由なく過ごせる、ということである。

この日は午後から、おもむろに市内を散策した。

  • 何気なく見た街中の風景左側。左側の自転車専用レーンは、相変わらず“轻型摩托车”(日本で言う電動スクーター)ばかりが走っている。普通に足でこぐ自転車は随分少なくなった。
  • 北京在住中に定期購読していた新聞。「習近平主席が米で首脳会談」との見出しが躍っている。

メディアもオンライン化が進んで新聞発行数も随分減ってしまったが、「新京報」は平日のみ発行ながら未だに健在である。かつてこの新聞を初めて手にし、一般記事や社説などを読んだ際に、鋭い切れ味のコメントが大変印象に残り、意外と中国は言論規制されていないものと感じた。のちにマスコミの仕事をするにあたり、大いに参考になったものである。

さらにその翌日、かつての住まいを訪れるべく地下鉄に乗った。

  • 地下鉄のホームにて。

車内はマスク着用者もそれなりに多かったが、以前と変わらぬ様子に懐かしさを覚えた。一方で、長年翻訳業務に携わっている立場として中国語の表記もかなり気になった。

▲“爱心座椅”と書かれた座席。意味はお分かりだろう。

日本は今、あちこちに中国語の案内や注意書きなどがあるが、いずれも直訳調でネイティブ表現とはだいぶかけ離れている。私の住む札幌の市営地下鉄には、「優先席」との表示のわきに“优先座位”と書かれてあるが、本場の中国ではこの通り“爱心座椅”という。

  • 同じく地下鉄の車内にて。

こちらも日本語的に言えば「監視カメラ作動中」だろう。ちなみにこれを直訳すると「映像採集区域」というややおかしな表現になってしまう。

  • こちらは車内から見た風景。北京市の母なる川「永定河」である。

この路線はほぼ全線高架路線を走るので景色を堪能できる。長い橋から見た永定河は御覧の通りに干上がってしまっていた。ひところは“南水北调”(中国南部から北部への水の移送)でなみなみと水をたたえていたが、また元の風景に戻ってしまった。

  • 北京の「軌道交通」の路線図。

北京暮らしを始めた当初はわずか4路線だった軌道交通網も、今は御覧の通り網目のごとく都心部をびっしりと埋め尽くしている。

なお中国では、これら軌道交通を総称して“地铁”という。“地铁”は辞書には「地下鉄」と訳されているが、実際には日本で言えば私鉄やJRの通勤路線も対象となる。一方、中国では“地铁”と“铁路”は別物であり、直通運転などもない上に私鉄もない。

よって、北京や上海が「地下鉄の走行距離が世界で〇番目」などと表現しているが、これは首都圏で言う東京メトロや都営地下鉄の走行距離のみを対象とした順位である。北京も通勤は随分と便利になったが、路面電車、新交通システムなども発達している東京や大阪の方がやはり便利である。

電車を降りて、かつての住まいへと足を運んだ。

  • この上の部分がかつて住んでいたマンション。オフィスビルのように見えるが住宅である。
  • こちらはそのマンション群の中の広場にある遊戯施設。ここに越してきた当初はよく子供を連れて遊びにきたが、のちにコロナによる行動制限で使用禁止となってしまっていた。
  • 駅前の交番。中国語で“警务站”という。今は街中のあちこちにある。

街中の風景は相変わらずで、北京はどうやら元の姿を取り戻してくれたようだ。安心したと同時にまた住みたくなってしまった。以下、引き続き現地の様子をレポートする。

文:森 雅継

****************************

【筆者】森雅継、東京都出身、早稲田大学商学部卒。北京在住歴17年で中国人の妻との間に2児、現在は家族4人で北海道札幌市に在住。