ようやく涼しくなってきたこちら札幌で10月1日、21.0975㎞のハーフマラソンによる「札幌マラソン」が開催された。その前日の30日午後に、台湾からやって来た市民ランナーとその同伴者の通訳を務めた。
▲一行10人が乗り込んだマイクロバスの車内。
台湾からやって来たのは7人で、うち出走する選手が3人だった。それに札幌市のコーディネーター、運転手、および私の計10人が、市内見学に向けて午後2時50分にホテルを出発した。
スタート・ゴール地点の真駒内公園を通り過ぎてから、大倉山シャンツェにある「札幌オリンピックミュージアム」に到着した。
▲札幌オリンピックミュージアム。かなりの高台にある。
スキーのジャンプ競技の開催地として有名なこの地で車を降りた。標高の高い山以外は雪が降らないという台湾の一行は、見慣れないこの地に興奮気味の様子だった。
▲ジャンプ台下での集合写真。
この写真の中央の男性は、1994年冬のリレハンメル五輪でノルディック複合団体で金メダルを獲得した阿部雅司さんである。今はミュージアムの館長を務めている。
その阿部館長の案内で、リフトに乗ってジャンプ台の一番上まで行った。台湾の一行はリフト初体験だったようだ
▲ジャンプ台の頂上から札幌市街地を一望。天候に恵まれ、マラソンコースの折り返し地点となる大通り公園もくっきりと見えた。
▲その絶景をカメラに収める台湾の一行。
▲阿部館長とともにジャンプのスタート地点に座った台湾の2人(右側)。スリル満点だったようだ。
▲阿部館長との2ショット。
中学校から大学まで運動部生活を送った私は、金メダリストとの出会いに大変感激してしまった。普通の人が行けないような場所に足を運べたり、相当の有名人と対面できたりできるのが通訳という仕事の醍醐味である。
ただし、ビジネス関係の通訳をする場合、えてして「自分だけが門外漢」というつらい立場に置かれてしまう。また、この日のメインだったスポーツ分野、特にウィンタースポーツは、専門用語がことごとく外来語となるが、中国語はほぼすべて訳した漢字を使うので、かなりの難易度がある。「スキー」(=滑雪)や「スケート」(=滑冰)といった簡単な言葉も外来語は使わず、「ノルディック複合」は“北欧两项”、「バイアスロン」は“冬季两项”という。
一行はさらにミュージアムの中を見学し、実際の金メダルを手にしたり、ジャンプ競技のシミュレーションを楽しんだりした。
▲阿部館長(中央)とともに金メダルを手にする台湾の2人。
一行はここで約1時間過ごした後、またバスに乗り込んで出発し、車中から「白い恋人」の工場を眺めた。そして午後6時20分ごろに、懇親会の会場である札幌市内中心部の大通り公園のテレビ塔下に到着した。
▲懇親会場には、台湾の一行を歓迎する横断幕も出ていた。
ここで私はお役御免となり、別の通訳に交代して家路についた。
そして翌日、青空のもとでハーフマラソンが開催された。
▲やや強い日差しの中を力走する選手たち。
このレースを12㎞地点付近で見守っていた私は、阿部館長や台湾勢の走りをしっかりと見届けることができた。
ところで今回私は、実に30何年かぶりで台湾の人たちと突っ込んだ交流をした。当時20歳の大学生だった私は、自転車競技の大会で海外に遠征し、現地で台湾の選手とかなり親しく話をした。学びたての中国語(いわゆる「標準語」)が面白いように台湾人に通じたのを今でもよく覚えており、のちに中国語にのめり込む大きなきっかけとなった。
何かとメディアを賑わせる中国と台湾の関係であるが、普通に中国語を学んでいればどちらにも通じるのである。
最後に中国語一口メモを。日本のメディアは「中国」、「台湾」、「香港」とそれぞれ表現するが、中国ではこの場合もちろん「中国」とは言わず、香港、マカオ、台湾に対して “大陆”という。この“大陆”には日本語の「大陸」という意味もあるが、一般的にはこのように中国本土を示すことが多い。ちなみに「(世界)7大陸」は“七大洲”という。
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【筆者】森雅継、東京都出身、早稲田大学商学部卒。北京在住歴17年で中国人の妻との間に2児、現在は家族4人で北海道札幌市に在住。