瀬戸際に追い込まれる愛馳汽車

2023/05/24 18:40

中国の新エネ車メーカー「愛馳汽車」(Aiways)が、今年3月分と4月分の給与を支給しておらず、社員の話では5月分も手に入れていないという。社内の通達によると、今は4月分の社会保険や積立金の納付問題に取り組んでおり、結果が出次第発表するとしている。

愛馳汽車は2017年に設立され、発表車種はこれまで主にヨーロッパ向けの2車種のみで、成長著しい中国国内の新エネ車市場で力を出し切れていない。好調な市場に乗り遅れた上、ヨーロッパがやや閉鎖的であることから売上が伸びず、2020年は2600台、2021年は3011台で、今年第一四半期は去年同期の564台とほぼ横ばいの536台となっている。

この影響で社内の成長が望めず、経営は外部の融資頼みとなっている。公開情報によると愛馳汽車はこれまでにCATL、ディディ、テンセントなど有名企業から合わせて9回の融資を受け、発表済みの限度額情報によると総額100億元(約2000億円)近くに達している。

愛馳は2021年に給与削減、賞与の中止、仕入れ先への代金未払いといった問題が発覚し、2022年に改めて数億ドルの融資を受け、経営陣を入れ替えた。さらに時価50億~60億ドル(約6923億円~約8307億円)での全米上場計画を実行に移している中、新たな投資家である陳炫霖氏が自己都合で費目の一部を支払えず、一段と苦境に陥っている。

中国ではここ2、3年、一時脚光を浴びた拝騰汽車(Byton)、賽麟汽車(Saleen)など新興自動車メーカーが相次ぎ姿を消しており、上位陣に加わった実績のある威馬汽車(WM Motor)も去年から経営困難となり、給与未払いが何か月も続いている。長安汽車の朱華栄会長は5月上旬に、「この3年間で淘汰された自動車ブランドは計75社にのぼる。向こう2-3年は少なく見ても60%-70%が淘汰されるだろう」と述べている。

(中国経済新聞)