在中国の日系企業、投資意欲は過去最低に

2023/01/1 09:00

日本貿易振興機構(JETRO)が11月24日に発表した日系企業の中国現地法人に対するアンケート結果を見ると、「中国への投資を拡大する」と答えたのは33・4%にとどまっている。コロナのさなかだった2021年は40・9%であり、わずか1年間で7ポイントも落ち込んでしまった。また香港についても「投資を拡大」はわずか18・3%であった。

このアンケートによると、世界的範囲で今後1~2年間に現地の投資を拡大する予定と答えた割合は45・4%で、コロナ前の2019年(48・9%)と比べてさほど減ってはいない。ただし中国に対しては「失望感」が広がっている。

海外に進出している日本の企業はおよそ7万社で、そのうちの半分にあたる3万5000社が中国に立地している。JETRO中国事務所の調査によると、「今後2年以内は現状維持の予定」が60・3%、中国での投資を縮小する」が約6%となっている。

これと反し、「インドへの投資を拡大する予定」が72・5%、「ベトナムへの投資を拡大する予定」が60・0%であった。

間もなく終わりを告げる2022年、日本企業の中国での業績はどうだったか。

JETROのアンケートによると、中国の日系企業のうち黒字経営を維持したのが64・9%であったが、この数字は2021年より7・3ポイント少ない。また赤字が16・8%、損得ほぼゼロが18・4%であった。

また、各社の利益は2021年に比べてどうだったか。

JETROのアンケートでは、現地日系企業の中で「悪化した」と答えた割合は、ロシア進出企業(71・0%)に次ぐ41・9%であり、各社にとって中国は2番目の「減益国」となってしまった。「利益が増えた」は26・8%にとどまり、残りの31・3%は2021年並であったという。

この大きな理由は中国政府による過激なコロナ対策によるもので、「行動の自由が奪われた」(55・6%)、「物流コストが急増して経営を圧迫した」(46・5%)、「原材料価格が上昇した」(45・8%)、といった答えが寄せられた。

また中国の景気動向指数(DI)については、2021年の「改善」(14・1)から2022年には「悪化」(-15・1)へと29・8%も落ち込み、5か国あったDI減少国のうち中国が一番の下がりようだった。逆にインドはDIが51・3%に達し、ベトナムも「悪化」から「改善」に転じてDIは30ポイント増え、25・0となっている。

「今後1~2年に中国の駐在員を増やすか」との問いについては、「減らす」と答えた企業が23・4%、「増やす」が11・0%であった。

DIのこれらの報告によると、2022年は中国進出企業の4割が業績を悪化させ、中国への投資意欲も最低となったことが分かる。

中国経済新聞はDIのある幹部に対し、この投資意欲の大幅な後退について尋ねてみた。

すると、「最大の問題は中国の先行きであり、特に市場の先行きが心配なこと。今後数年間は中国経済の回復が望めない」との答えが返って来た。また今後について透明性を欠いており、中国市場に対する期待を失っている企業が増えているというのである。

また、ウクライナを侵略しているロシアに対して世界各国から制裁が行われ、この結果ロシアの日系企業が莫大な損失を蒙って次々と撤退している。こうした経験から、もし中国政府が台湾の統一に向けて戦争を始めたら、「ロシアの悲劇」が再現され、しかも中国が受ける制裁はロシア以上のものになるとの見方が広まっている。こうした「悲劇」を繰り返さないためにも、中国への大規模な新規の投資はできるだけ避けようとしている。

さらに、20~30年前から中国進出をしていた企業も、現地の同業他社の急速な成長など市場や投資環境の変化に見舞われ、優位性を失って、東南アジアへのシフトを考えなければならない状態である。

それともう一つ、日本政府が経済の安全性確保に走り、またアメリカの呼びかけに応じて中国により築かれた世界の産業チェーンを離脱し、半導体、先端事業、部品の中国への投資に対して審査や制限を講じ始めている。ただしその最低ラインが不明確である故、各社とも中国への投資拡大を考える際に線引きをしづらくなっており、新規投資に待ったがかかるのを恐れて慎重になり始めている。

このDI幹部は、「中国への投資意欲については、国内の本社へのアンケートではおおむね低いが、今回は現地法人に尋ねても33%にとどまっている。これはすなわち、各社とも中国事業拡大の意欲をほぼ失っていることを意味するもので、この点について中国政府がしっかり認識すべきだ」と語っている。

ただ中国の各地方政府は、このような投資意欲の大幅な減退をあまりよくわかっていない。中国では11月から「ゼロコロナ」政策を放棄し、社会的な規制をすべて解除した中、江蘇省、浙江省など沿海部でビジネス団体の大規模な海外訪問が始まっている。浙江省は、「1万人による外国誘致」と銘打って、日本やヨーロッパで企業を訪問したり見本市に参加したりして、3年分の損失を取り戻そうとしている。改めて外国企業に対して中国市場への期待感を持たせ、失った受注を取り返そうという懸命な取り組みをしている。

コロナ禍の3年間で中国経済は疲弊を極めている上、中国人の今後への期待も揺れ動き始めている。民間の企業関係者の中には、市場全体が落ち込んでしまった中国から他国へシフトする動きも出ている。さらに中国は、ゼロコロナを放棄してからコロナが猛威をふるっており、北京市や河北省では医師の半数以上が「院内集団感染」のため出勤できない病院が相次ぎ、医療体系が一部でマヒしている。北京市では、発熱した患者がマイナス5度の寒さの中で6時間も診察待ちをしている。こうした状態が2か月は続き、全土に感染が拡大した中国はまたも経済的ダメージを受けると見られる。

2023年、中国経済は大変深刻な状態になるだろう。経済を改めて回復し、日本など各国の企業を撤退させることなくさらなる期待を持たせ、中国への投資を引続き拡大する。中国政府はこうした険しい課題に取り組まなくてはならない。

(中国経済新聞)