かねてから噂されていたBYDの高級車ブランド情報が11月8日に発表された。「車名は『仰望』で2023年第一四半期に発表予定。価格はタイプ別に80万~150 万元(約1600万円~3000万円)の見込みで、詳しくは発売時に発表する」と同社の担当者が述べている。また、同時に初めてのオフロード車種も披露するという。
先ごろ、広汽埃安(AION)が100万元クラス(約2000万円)のスポーツカー「昊鉑」(Hyper)を発表した。さらにVWグループの元執行副総裁であるウェイミン・ソー氏が立ち上げたBeyonCaも、初のコンセプトカーを発表しており、今後の量産タイプは100万元前後(約2000万円)となるとのことである。
中国の高級車市場は、ガソリン車の時代は海外メーカーに占領されており、領克(Lynk)やWEYなどを代表とする中国勢は「高級ブランド」とは言われながらも、値段や主な競争相手としてVWやトヨタなど従来の外資系ブランドをにらんでいた。
ところがここ数年、EV化やスマート化、および利用者の位置づけなどをバックに30万元(約600万円)の大台を超える各車種が続々と出始めるなど、アグレッシブな動きを見せている。蔚来(NIO)、理想(Li Auto)、極氪(ZEEKER)などが30万元~50万元(約600万円~1000万円)でがっちりとシェアを獲得した後、高合(HiPhi)、BYD、広汽、紅旗など各メーカーが挟み撃ちをかけるように既存の高級ブランドへ攻め込み始めている。
Jaguar Land Rover中国現地法人のある幹部は、「現在、高級車メーカーが打ち出しているEVはどれもガソリン車という位置づけのままで、次世代のクルマを作り直すというコンセプトである。ガソリン車のポジションを抜け出していないからであり、クルマから販売サービスまで従来のままなので、見所もなく利益もニーズも見いだせないでいる」と述べている。
スマートEVの登場により、中国の自動車産業に差をつけるチャンスをもたらしたほか、長らくヨーロッパ勢が独占していた高級車市場に殴り込む機会が生まれたとも見られている。
主な市場となっている新エネ車は現在、国内競争が激戦であり、蔚来、小鵬(Xiaopeng)、理想などの新興メーカーと従来の国内メーカー、そして外資系メーカーが、細分化が進む市場の奪い合いを演じている。今なおガソリン車が中心である100万元(約2000万円)クラスの超高級車市場が次なる争いの場になり得ることも考えられる。
(中国経済新聞)