中国の電池大手、北米での工場建設を延期

2022/08/5 18:00

中国の車載電池大手・CATLは、海外進出の計画がつまずいたようである。

関係者の話によると、CATLは、テスラやフォードなどへの電池供給のために数10億ドルをかけて北米で工場を建設する予定であったが、延期を発表したという。

CATLはこれまで、メキシコ国内でテキサス州に近いところ、もしくはアメリカ国内に2つの工場を建設する方向で動いており、場所選びやインセンティブ関連の交渉もすでに大詰めに入り、数週間後の9月または10月に正式発表するものと見られていた。

この工場建設案は「公式発表」ではないが、単なる「噂話」でもなかった。CATLの曾毓群社長は2021年度の業績説明会で、「新興勢力やなじみの自動車メーカーも含めてアメリカとのやり取りが多く、様々な仕入策や提携案、およびローカライズの可能性について双方で検討してきた。ただ詳しいことは、従業員の教育や効率、労組などによる品質やコストへの影響を考える必要がある」と述べていた。

ただしこの時点で、会社からも「国外の市場環境や政策が原因で思わしくない状態が発生した場合、または生産体制などが国外のニーズに適時に応えられなくなった場合、または国外市場の開拓が進まなかった場合は、会社の業績に悪影響が生じるだろう」といったコメントが出ていた。

この件については、フォードが7月下旬にCATLと事業提携すると公式発表しており、双方の契約に基づいてCATLが来年から北米フォードのMustang Mach-E向けに、さらに2024年初めから同じくEVピックアップトラックF-150 Lightning向けに、リン酸鉄リチウム電池のセルを供給するとのことである。

フォードは、全世界でのEVの生産台数を来年末までに60万台に、2026年末までに200万台以上とするとの計画を立てているが、データを見ると、2021年の全世界でのEV販売台数は6.42万台にとどまっている。

また、CATLは10月以降にテスラにM3P電池を供給するとの報道もあり、72kwhのセルを搭載するModel Yが2023年初めに発売開始とのことである。

今回、CATLの北米工場建設の延期により各自動車メーカーとの提携にどういった影響が出るのかは定かではないが、中国の電池メーカーにとって海外進出が一大選択肢となっていることは事実である。

CATLの決算によると、2018年~2021年にかけて、年間売上高に占める国外の収入の割合は順に3.53%、4.37%、15.71%、21.38%という具合で、年々高まっている。またSNE Researchによると、今年上半期、海外の車載電池利用分におけるCATLの出荷割合は23.91%となっている。

車載電池について、2025年までの世界の勢力地図ははっきりしており、CATLがシェアをひたすら伸ばし続けるだろう。海外で急速に普及が進み、2025年には全世界おけるシェアが38%となる見込みである。

(中国経済新聞)