中国では近年、都市部だけでなく地方の小さな町を訪れる「小城游(小さな町への旅行)」が人気を集めている。こうした中、各地で中小規模の空港の建設・運用開始が進み、これまで航空交通から距離のあった地方都市も、徐々に国内の航空ネットワークに組み込まれつつある。
空港の整備は、住民の移動手段を増やすだけではない。交通アクセスの改善によって、これまで知られていなかった地方の観光資源が注目を集め、地域経済や観光産業の活性化につながることも期待されている。
その一例が、貴州省の威寧県に建設されている威寧草海空港だ。9月27日、同空港では中国民用航空飛行校験センターの検査飛行機が無事に着陸し、民間航空業界で最高級の歓迎儀礼とされる「ウォーターサルート」が行われた。今回の試験飛行は、空港建設が主要施設の整備段階から、正式な開港・運航開始に向けた準備段階へと移行したことを示す重要な節目となった。
威寧草海(ウェイニン・ツァオハイ)空港は標高2450.1メートルに位置し、完成すれば貴州省唯一の高高原民間輸送空港となる。総投資額は18億1600万元(約417億6,800万円)で、2019年3月23日に着工した。今回の計画では、年間旅客処理能力35万人、貨物・郵便取扱量1050トンを想定し、飛行区域の等級は4Cとなっている。
空港の開港によって、貴州省の「一枢紐・十三支線」という空港ネットワークがさらに整備される。威寧および周辺地域の対外アクセスが改善されることで、農村振興や観光産業の高度化、地域間交流などにも新たな効果が期待されている。
新疆ウイグル自治区でも、地方空港の整備が進んでいる。6月12日夜、華夏航空のG52637便がバインゴリン・モンゴル自治州輪台県の輪台空港に無事着陸した。これにより、輪台空港は試験運用の段階に入り、新疆で29番目の民間輸送空港となった。同空港は2011年に立地選定が始まり、10年以上をかけて建設が進められた。2026年6月3日には空港使用許可を取得している。
四川省でも、楽山空港の開港に向けた準備が進む。7月10日には四川航空のA320型旅客機が同空港の滑走路に着陸し、検証飛行を無事に終えた。正式な運航開始に向けて大きく前進した形だ。楽山空港は、楽山市が省内の重要な地域交通・物流拠点を構築するうえで中核的な役割を担う施設と位置づけられている。2030年時点で年間旅客処理能力200万人、貨物・郵便取扱量1万2000トンを想定し、関連施設の整備も進められている。
中国の航空ネットワークそのものも拡大を続けている。中国民用航空局が発表した「2025年民間航空業界発展統計公報」によると、2025年末時点の中国国内の輸送空港は、前年末から7カ所純増した。
新たに加わったのは、麗水(リーシュイ)空港、巴里坤大河(バーリークン・ダーハー)空港、贛州瑞金(ガンジョウ・ルイジン)空港、亳州(ボージョウ)空港、嘉興南湖(ジャーシン・ナンフー)空港、銅仁徳江(トンレン・ドージャン)空港、蚌埠滕湖(バンブー・トンフー)空港などだ。大規模な国際空港や主要都市のハブ空港だけでなく、地方の中小空港が増えることで、中国の航空交通網はより広範囲に広がっている。
地方空港のメリットは、単に航空便を利用できるようになることだけではない。厦門大学経済学系の丁長発副教授は、小規模空港は規模が小さいため、空港内での移動などにかかる時間的コストが低く、利用者にとって利便性が高いと分析している。また、高速鉄道と比べて支線空港の建設費は比較的低い一方、都市によっては観光産業や地域経済の発展を大きく後押しする可能性があるという。
特に中国西部では、地方空港から支線航空便でハブ空港へ移動し、そこから別の航空便に乗り継ぐことで、これまで交通アクセスが限られていた地域の「通達性」を大きく向上させることができる。
つまり、地方空港は地域を大都市と直接つなぐだけでなく、全国的な航空ネットワークに接続する「玄関口」としての役割を果たしている。
一方、中国では旅行スタイルそのものにも変化が起きている。大都市の有名観光地を巡る従来型の旅行だけでなく、特色ある自然景観や文化、食などを持つ地方の小さな町を訪れる「小城游」が人気を集めている。
9月24日に開かれた国務院新聞弁公室の記者会見では、文化・観光部の満宏衛資源開発司司長が、「第15次五カ年計画(2026~2030年)」期間における文化・観光の質の高い発展について説明した。
その中で、都市と農村の協調発展に重点を置き、32の観光ハブ都市、33の重点観光都市、23の特色ある観光地を整備するとともに、県域観光にも力を入れ、より多くの「観光名県」や「宝蔵小城(知られざる魅力的な小都市)」を育成していく方針が示された。
ここに地方空港の整備が重なる。これまで鉄道や高速道路などで長時間の移動を必要としていた地方都市でも、空港が整備されれば、遠方からの観光客を呼び込みやすくなる。逆に、航空アクセスが生まれることで、それまで旅行先として認識されていなかった小さな町が、新たな観光目的地として注目される可能性もある。
実際、去哪儿旅行のデータによると、2026年の中秋節・国慶節期間には、中国の三線級以下の都市にある「宝蔵百城」への航空券予約数が前年同期比で30%以上増加した。
中国では今後も、とりわけ中小規模の空港が増えていくとみられる。航空ネットワークの拡大によって、地方の住民にとっては都市部へ移動する選択肢が増える。一方、観光客にとっては、これまでアクセスしにくかった地方の小都市へ足を運ぶハードルが下がる。
交通インフラと観光需要が相互に作用することで、「空港があること」そのものが地方都市の競争力の一つになる可能性もある。
大都市から地方へ、そして有名観光地から「まだ知られていない小さな町」へ――。
中国では航空網の拡大と「小城游」ブームが重なり、これまで注目されてこなかった地方都市が新たな観光市場として浮上し始めている。今後、どの町が「次の宝蔵小城」として脚光を浴びるのか、地方空港の開港とともに、その動向が注目される。
(中国経済新聞)
