中国では夏休みシーズンに入り、国内の消費市場が活況を呈している。電子製品の「買い替え需要」や暑さ対策商品の販売が伸びる一方、観光・文化体験も活発化。さらに、没入型体験やスポーツと観光を組み合わせた新たな消費モデルも相次いで登場している。夏の旺盛な消費が、中国経済に新たな成長エネルギーを注入している。
北京市南部の京東MALLでは、大学進学を控えた娘とともにスマートフォンを選ぶ消費者の姿が見られた。政府の補助金に加えて店舗独自の割引も利用できることから、買い替えを検討する消費者が増えているという。
京東MALLの関係者によると、夏休みに入ってから「受験後消費」が活発になり、さらに新学期シーズンも重なったことで、スマートフォンやタブレット端末などの販売が好調に推移している。7月以降、複数店舗でスマートフォンやBluetoothイヤホンの販売数量が前年同期比で100%以上増加した。

厳しい暑さも「涼を求める消費」を押し上げている。
広州市の石牌橋では、今夏オープンした「喜茶工芸」の全国1号店が人気を集めている。工芸茶を使った特別ドリンクなど5つの新商品シリーズを展開し、店内には「工芸長バー」を設置。茶葉の加工から抽出、調合までの工程を間近で見られる体験型の空間を提供している。
電子商取引(EC)市場でも、暑さ対策商品の需要が拡大している。天猫では、家庭用製氷機や製氷機能付き浄水器などの販売が大幅に増加し、製氷冷蔵庫の取引額は前年同期比で80%以上伸びた。快手でも夏の暑さ対策キャンペーン期間中、冷却マットや冷却シートなどの注文数が約30%増加した。
中国各地では、「食・宿泊・移動・観光・買い物・娯楽」を組み合わせた多彩な夏季消費シーンの開発も進んでいる。
広東省では「夏休みはもちろん広東へ」をテーマにしたキャンペーンを展開し、地域全体を巻き込んだ夏季消費のエコシステム構築を目指す。天津市では、水上レジャーや夏の涼感をテーマにした8シリーズのイベントを開催。浙江省では「中国で買おう・浙江の夜を楽しもう」をテーマとした2026年夏季消費シーズンをスタートさせ、特色あるグルメ、スポーツ、夜間の光・映像イベントなどを一体的に楽しめる環境を整えている。
中国商務部の鄢東副部長は、夏休みの親子消費、レジャー、家事・生活サービスなどの需要に対応し、生活サービスプラットフォーム企業による「8・8サービス消費フェスティバル」を推進していると説明。「イベントで人を呼び、人の流れを商業の活力につなげる」ことで、オンラインとオフラインを融合した消費拡大を図るとしている。
観光市場も夏の消費を牽引する重要な分野となっている。湖北省随州市の随州博物館では、VRゴーグルを装着して歴史を体験できる「青銅器時代をタイムトラベル」と題したデジタル展示が人気を集めている。VR空間では、宮廷の人物が青銅製の楽器を運ぶ様子などが再現され、実際に鼓を叩くことで古代の音楽文化を体験できる。
旅行予約サービス「去哪儿旅行」によると、7月以降、避暑旅行が全国の旅行者の主要な選択肢となっているほか、博物館を活用した教育・研修型旅行の人気も前年同期比で7割以上上昇。ラフティングや渓流遊びなど、水辺のアクティビティの検索数も前月比で数十倍に増加した。
また、240時間のトランジットビザ免除や出国時の税還付などの政策効果も重なり、今夏は海外のSNS上で「China Cool(クールで涼しい中国)」というキーワードが注目を集めている。
西安、シャングリラ、シリンホトなどでは、旅行プラットフォームにおける海外からの航空券予約が前年から倍増するなど、インバウンド市場の活力が高まっている。
西安では夜間の文化イベントも外国人観光客を引き付けている。金色の甲冑をまとった武士や、灯籠を手にした唐代の女性に扮した出演者が観光客を迎え、英語による案内も提供。コロンビアから訪れた観光客は「唐代の雰囲気を感じることができた」と感想を語った。
清華大学新聞・コミュニケーション学院の蒋俏蕾副院長は、「China Cool」の人気について、外国人観光客の中国旅行が従来の「観光名所を訪れて写真を撮る」スタイルから、中国の歴史文化、先端技術、ライフスタイルをより深く体験する旅行へと変化していることの表れだと分析している。
新業態・新シーンが消費の新たな原動力に。消費者のニーズが個性化、多様化、高品質化する中、新しい業態や体験型の消費シーンも各地で生まれている。
湖南省長沙市では、没入型の菓子体験施設「零食王国」が注目を集めている。色とりどりの菓子で作った「夢の回廊」や、7万本以上の棒付きキャンディーを使った巨大な人物画など、SNS映えする空間が人気となっている。
施設面積は約1万3,000平方メートルで、世界各地の3万5,000種類以上の菓子を取りそろえる。単なる買い物の場ではなく、ショッピング、写真撮影、インタラクティブな体験を組み合わせた「探索型」の消費空間を構築しており、夏休み期間中は1日平均3万人以上が訪れているという。
スポーツと観光を組み合わせた消費モデルも広がっている。吉林省延辺では「スポーツ+観光」「スポーツ+民俗文化」などの取り組みを展開し、スポーツイベント「東北スーパーリーグ」のチケット半券を提示すると、観光施設の無料・割引入場などの特典を受けられる。
上海では天文博物館での夜間観測など、親子向けの「夜型」体験を開発。長沙でも没入型演劇や小劇場のスタンダップコメディーなどが人気を集め、夏の夜を活用した新たな消費市場が形成されている。
中国が最近発表した「消費拡大『第15次五カ年計画』」では、「新たな消費業態・モデル・シーンの育成」を明確に打ち出している。
小売、文化、観光、健康、スポーツなどの分野でデジタル技術の活用を進め、創意工夫を強化することで、消費体験の向上と市場の拡大を図る方針だ。
鄢東副部長は、商務部が関係部門と連携して、新たな消費業態やビジネスモデル、消費シーンの試行事業をさらに推進し、幅広い波及効果が期待できる代表的な消費シーンを創出していくと説明した。
中国の今夏の消費市場では、単純な「モノの購入」から、観光、文化、スポーツ、デジタル技術、エンターテインメントを融合した「体験型消費」へと消費の構造が変化している。暑さを商機に変える商品開発に加え、新たな体験とサービスを組み合わせることで、夏の消費は中国経済の新たな需要と成長力を生み出している。
(中国経済新聞)
