「光谷七星」、上期売上高1,000億元突破へ――万億元規模の産業資本マトリクスを構築
中国・武漢市の光電子産業集積地「光谷」で、半導体と光通信を軸とするハイテク企業群の存在感が一段と高まっている。
武漢・光谷に拠点を置くA株上場6社、長飛光纖(601869.SH)、光迅科技(002281.SZ)、華工科技(000988.SZ)、烽火通信(600498.SH)、高徳紅外(002414.SZ)、中信科移動(688387.SH)は、2026年上期に合計406.42億元(約8,950億円)の売上高を計上し、親会社株主に帰属する純利益は50.04億元(約1,101億円)となった。(※以下、本稿では1元=約22.0円で換算する。)
ここに、現在科創板への上場を進めている長江存儲を加えると、「光谷七星」と呼ばれる7社の上期売上高は1,000億元(約2.2兆円)を突破する可能性が高い。長江存儲は2026年第1四半期だけで470.42億元(約1兆354億円)の売上高と333.79億元(約7,343億円)の親会社株主帰属純利益を計上しているためだ。
7社は、光ファイバー・光ケーブル、光モジュール、光チップ、通信設備、赤外線センシング、メモリーチップに至るまで、武漢の先端製造業を支える幅広い産業チェーンを形成している。特に2026年上期は、AI向けデータセンター投資の世界的な拡大が追い風となった。
AIデータセンターやコンピューティングセンターの建設が加速するなか、光通信部品、特殊光ファイバー、赤外線光電製品などの需要が急増。長飛光纖、光迅科技、華工科技、高徳紅外の4社は、この高景気サイクルの恩恵を大きく受けた。

長飛光纖は上期売上高98.09億元(約2,158億円)で前年同期比53.64%増、親会社株主帰属純利益は29.25億元(約644億円)と、前年同期の約9.9倍に急増した。
AIデータセンターの建設を背景に、偏波保持光ファイバーなどの需要が拡大。光伝送製品の売上高は61.26億元(約1,348億円)で約59.2%増、粗利益率は63.11%に達した。光インターコネクト部品も22.38億元(約492億円)と約55.0%増加し、粗利益率は48.97%となった。
G.654.E超低損失光ファイバー、空芯光ファイバー、多芯光ファイバーなど次世代製品の商用化も進んでおり、海外事業の比率は40%を超えた。
光モジュール・光チップ分野では、光迅科技と華工科技がデータセンター市場の高速化に対応している。
光迅科技は800G光モジュールの量産出荷を実現し、1.6T製品も量産能力を確立。さらに3.2Tシリコンフォトニクスモジュールについても大手クラウド事業者による検証を完了した。
その結果、上期売上高は66.10億元(約1,454億円)、前年同期比26.07%増。親会社株主帰属純利益は5.82億元(約128億円)で、56.34%増となった。
華工科技は光インターコネクト、インテリジェントセンシング、スマート製造の3事業を展開する「複合型」のハイテク企業だ。2026年上期は売上高78.22億元(約1,721億円)、前年同期比2.53%増、親会社株主帰属純利益11.86億元(約261億円)、30.17%増を記録した。
とりわけ海外事業は116%増と急拡大し、売上高に占める比率は初めて20%を超えた。
光インターコネクト事業はすでに同社最大の収益源となっており、上期の売上構成比は48.62%。800G、1.6T光モジュールのグローバル量産供給を進める一方、3.2T、6.4T、12.8Tといった次世代超高速光インターコネクト製品にも開発領域を広げている。
さらに、同社はAIを活用した製造現場の自動化にも注力する。デジタルツイン、業界特化型小型モデル、産業インターネット、産業AIエージェントなどを組み合わせ、AI溶接ロボットなどの実用化を進めている。
非通信分野では、高徳紅外の成長が目立つ。同社の上期売上高は42.16億元(約928億円)で前年同期比117.94%増、親会社株主帰属純利益は13.51億元(約297億円)と6倍超に拡大した。
国防装備、産業検査、車載暗視など幅広い用途で赤外線製品の注文が集中しており、ドイツ子会社やタイ生産拠点を活用した海外売上高も120.04%増加した。
一方、急速な成長の裏側には注意すべき点もある。営業活動によるキャッシュフローはマイナス6.75億元(約149億円)となり、前年同期比で735.23%減少した。受注拡大に伴う売掛金や在庫の増加など、成長局面特有の資金繰りリスクには警戒が必要だ。
一方、「光谷七星」の全社が好調というわけではない。烽火通信と中信科移動では、売上高が増加する一方で利益面の苦戦が続いている。
烽火通信は上期売上高123.76億元(約2,723億円)と11.33%増加した。しかし、業界の価格競争、為替差損、従来型事業の粗利益率低下などが重なり、親会社株主帰属純利益は1.93億元(約42億円)にとどまり、前年同期比32.72%減少した。
同社はAIコンピューティング、海洋通信、AIサーバーなどを新たな成長領域として育成している。
AI分野では、データセンター内のラック間通信からデータセンター間、さらにはコンピューティングハブ間の広域接続までをカバーする全光接続ソリューションを開発。800Gコヒーレント光モジュールや1.6T製品、NPOシリコンフォトニクススイッチなどにも取り組んでいる。
ただし、これら新規事業の多くはまだ投資・育成段階にあり、短期的に従来型通信事業の利益減少を補うまでには至っていない。
中信科移動は「光谷七星」で唯一の赤字企業となった。上期売上高は25.40億元(約559億円)で前年同期比0.09%増とほぼ横ばいだったものの、親会社株主帰属純利益は3,422万元(約7.5億円)の赤字だった。ただし、赤字幅は前年同期比44.57%縮小している。
6Gなど次世代通信技術の研究開発を進める同社は、上期だけで国内外の特許出願689件、特許取得583件を新たに積み上げた。だが、研究開発投資が直ちに大規模な利益につながる段階にはまだ達していない。
「光谷七星」のなかでも、今後の産業構造を大きく変える可能性を持つのが、中国のNAND型フラッシュメモリー大手、長江存儲だ。
同社は5月19日に上場準備に向けた指導届出を完了し、8月19日には指導検収を通過。わずか3カ月で重要な上場プロセスを進め、科創板への上場申請が受理された。
予定調達額は330億元(約7,260億円)。長鑫科技の295億元(約6,490億円)、中芯国際の200億元(約4,400億円)を上回り、科創板開設以来で最大規模の調達額となる見込みだ。
業績の伸びも際立つ。長江存儲の売上高は2023年の187.44億元(約4,124億円)から、2024年452.03億元(約9,945億円)、2025年631.85億元(約1兆3,901億円)へと急増した。
さらに2026年第1四半期だけで売上高470.42億元(約1兆354億円)、親会社株主帰属純利益333.79億元(約7,343億円)を計上。四半期純利益は2025年通期の約2.35倍に達した。
第1四半期の総合粗利益率は78.73%、中核となるメモリーチップ製品の粗利益率は84.23%。生産設備の稼働率も98.02%と高水準を維持している。
市場シェアでも存在感を高めており、2026年第1四半期の世界NANDフラッシュ市場では、売上高・出荷数量の双方で世界3位、中国1位となった。
長江存儲が計画する330億元(約7,260億円)の資金調達は、半導体事業に集中投入される。このうち208億元(約4,576億円)は量産ラインの技術高度化、122億元(約2,684億円)は先端技術研究開発に充てる計画だ。
232層を超える3D NANDフラッシュ、HBM(高帯域幅メモリー)、MRAMなど次世代メモリー技術が重点分野となる。運転資金や非中核事業への投資には使用せず、半導体の技術革新と生産能力向上に資金を集中させる。
長江存儲を中心に、武漢の半導体産業はチップ設計、ウエハー製造、パッケージ・テスト、材料・装置などを含む一貫した産業エコシステムへと発展している。
2025年時点で光谷には集積回路関連企業が300社以上集まり、半導体産業の総生産額は1,000億元(約2.2兆円)を突破した。
2026年に始動した「梧桐樹計画」では、長江存儲を中心とする半径4.5キロ圏に「5分間産業協力圏」を構築。すでに約140社の半導体関連企業が進出し、フォトリソグラフィー、エッチング、計量・検査など半導体製造の重要工程をカバーしている。
長江存儲の上場が実現すれば、「光谷七星」は光通信、レーザー、赤外線センシング、メモリーチップなど、中国のハードテックを代表する企業群として資本市場に勢ぞろいすることになる。
重要なのは、7社が単なる「優良企業の集合体」ではなく、産業チェーンとして相互に結びついている点だ。
AIデータセンターの急増は光ファイバーや光モジュールの需要を押し上げ、次世代通信技術は高速光インターコネクトや半導体への投資を促す。さらに長江存儲のメモリー生産能力拡大は、半導体製造装置、材料、検査など周辺企業の成長を誘発する。
こうした連鎖が進めば、武漢・光谷は「光電子+半導体」を中核とした巨大な産業集積地へと進化する可能性がある。
AI算力投資を起点とした光通信需要、メモリー半導体の国産化、赤外線・センシング技術、次世代通信といった複数の成長軸が重なり、「光谷七星」は武漢の産業政策だけでなく、中国のハードテック投資を象徴する存在になりつつある。
今後、7社が技術・サプライチェーン・資本市場の各方面で連携を深めれば、武漢は「光電子+半導体」を軸とする1兆元(約22兆円)級の産業資本マトリクスを形成する可能性を秘めている。
「光谷七星」の本当の価値は、個々の企業の業績だけではなく、AI、光通信、半導体という次世代産業を一本の産業チェーンとして結び付け、資本と技術を地域内で循環させる点にある。長江存儲の上場は、そのエコシステムが次の段階へ進むための重要な起点となりそうだ。
(中国経済新聞)
