中国ロボット産業が爆発的成長 上期売上高3兆円超、「AI搭載ロボット」が実用化へ

2026/08/20 16:00

中国のロボット産業が急速な成長を続けている。2026年上半期のロボット産業における一定規模以上の企業の売上高は1655億元(約3兆4000億円)に達し、前年同期比24.5%増となった。中国政府は今後、人工知能(AI)との融合を軸に、ロボット産業のさらなる高度化と実用化を進める方針だ。

8月19日、2026世界ロボット大会が北京で開幕した。大会で明らかになったデータによると、2025年の中国ロボット産業の一定規模以上企業の売上高は3000億元を突破。過去5年間の年平均成長率は20%を超えている。2026年上半期も高い成長を維持し、1655億元に達した。

中国工業情報化部は今後、ロボット産業の発展において「スマート化」を中心軸とし、イノベーションを加速させる。特にコア部品や「具身知能(エンボディードAI)」などの重要分野に重点を置き、大学・研究機関と企業の連携を強化。国内外の研究機関や企業による共同研究を促し、先進的で実用性が高く、使いやすいスマートロボット製品の創出を目指す。

AIが「デジタル」から「現実世界」へ

現在、世界ではAI技術の革新がかつてないスピードで進んでいる。ロボットは、AIをデジタル空間から現実世界へと拡張する重要な存在として注目されている。

中国科学技術協会の賀軍科副主席兼書記処第一書記は、スマートロボットについて、先端製造技術に加え、認知科学、計算科学、神経科学などの最先端技術を融合した存在だと指摘。AIの応用領域を広げると同時に、ロボット技術そのものにも大きな発展余地をもたらしているとの認識を示した。

今回の世界ロボット大会には300社以上の企業が出展した。展示内容からは、産業分野だけでなく、商業施設や家庭など幅広い実際の利用シーンを意識した製品開発が進んでいることが分かる。

特に企業の関心は、ロボットを「作る」ことから、実際の現場で「使い、届ける」ことへと移りつつある。ロボットが周囲の環境を認識し、人間や物体と相互作用する能力も着実に向上している。

ヒューマノイド、実用化・量産化へ

中国のロボットメーカー、優必選(UBTECH)は、2026年のヒューマノイドロボット業界について、「概念実証」の段階を終え、シーン対応、実用化、量産化に向かう新たな段階に入ったと説明する。

同社は「基盤モデル―世界モデル―行動モデル」からなるフルスタックの独自技術体系を構築している。

ロボットの基盤モデルでは、特に2つの能力に重点を置く。一つは、ロボットの一人称視点から周囲の状況を認識し、作業内容を計画する能力。もう一つは、物理的な相互作用を可能にする精密なセンシングと空間認識能力だ。

具身知能の実用化に向けては、「世界モデル」も重要な技術となる。

ロボット向け世界モデルの開発担当者によると、現在の大規模言語モデル(LLM)は言語を理解できるようになったが、次の段階ではAIが「現実世界そのものの仕組み」を理解することが求められる。

世界モデルは単なる動画生成技術の延長ではなく、機械が現実世界の動きや法則を理解するための能力を構築するものだ。世界モデル、強化学習、ロボット技術が融合すれば、具身知能が実際の現場で自律的に活動するための基盤になるとみられている。

ロボット関連企業、116万社超に

中国ではロボット産業を支える企業層も急速に拡大している。

企業情報データベース「天眼査(Tianyancha)」によると、現在、中国にはロボット産業チェーンに関連する企業が116万5000社以上存在する。2026年に入ってからだけでも約14万4000社が新たに設立された。

新規企業の業種を見ると、科学研究・技術サービス業が約5万4000社、情報伝送・ソフトウエア・情報技術サービス業が約2万2900社、製造業が約1万7200社となっている。

この構成からも、ロボット産業への新規参入が、ロボット本体を製造する企業だけにとどまっていないことが分かる。

アルゴリズム開発、システムインテグレーション、用途別ソリューション、ソフトウエアプラットフォーム、エンジニアリングサービスなど、ロボットとAI、ソフトウエア、自動化システムを融合させる分野へと裾野が広がっている。

課題は「賢さ」と「現場対応力」

もっとも、中国のスマートロボット産業がすべての課題を克服したわけではない。

中国工業情報化部の辛国斌副部長は、現状について、ロボットのスマート化レベルが十分ではなく、複雑な作業をこなす技能もなお不足していると指摘した。

今後は「スマート化」を軸としながら、「実用化」を重要な方向性として、技術開発、産業育成、利用シーンの拡大、安全管理を一体的に進める考えだ。

特に農業、医療、介護、災害・緊急対応など、応用範囲が広く、実証効果の高い分野を重点対象とする。企業と利用側を結びつけ、共同で技術開発や実証実験を行い、成熟した利用シーンを広げることで、新技術や新製品の改良を加速させる。

「小規模試用」から「大規模導入」へ

中国電子学会の徐暁蘭理事長は、具身知能製品が「小規模な試用」から「大規模な導入」へ移行する重要な転換点に差しかかっているとの見方を示した。

今後は、コア部品、ソフトウエア・アルゴリズム、データ、ロボット本体の製造、用途別ソリューションまで、産業チェーン全体での連携が重要になる。

特に、柔軟な触覚センサー、精密な作業を可能にする高機能なロボットハンド、世界モデルなどの先端技術について、企業や研究機関が共同で研究開発を進める必要があるとしている。

中国のロボット産業は現在、単なる「製造業の自動化」から、AIによって現実世界を理解し、自ら判断して行動する「具身知能」へと大きく軸足を移している。

上半期の売上高が前年同期比24.5%増となったことに加え、関連企業が116万社を超えるなど、産業基盤も急速に拡大している。今後の焦点は、AIの性能向上だけでなく、それを搭載したロボットを実際の工場、病院、農場、家庭などにどこまで大規模に普及させられるかだ。

中国では、「ロボットを作る時代」から「ロボットを社会で使う時代」へ――産業の成長ステージが次の段階に入ろうとしている。

(中国経済新聞)