中国発のティーブランドが海外市場で店舗網を拡大している。国内市場で激しい競争を繰り広げる中で磨き上げてきた商品開発力やサプライチェーン、店舗運営、デジタル化のノウハウを海外に展開し、単なる商品の輸出から、ブランドや運営システムそのものを輸出する段階へと進みつつある。
上海を訪れた米国在住の中国系の少年は、中国のティードリンクについて「自由に選べる」ことを実感したという。米国と比べて価格が1杯当たり約40元(約920円)安い上、種類も豊富で、店舗でもデリバリーでも比較的すぐに購入できるためだ。
一方、ニューヨークでは中国のティーブランド「喜茶(HEYTEA)」の購入客が2時間並んだことがニュースになるなど、中国発ティードリンクへの関心が高まっている。韓国でも、ソウル・江南区に出店した「霸王茶姬(CHAGEE)」の旗艦店が人気を集め、繁忙時間帯には注文から商品の受け取りまで3時間を超えるケースもあるという。
CBNDataによると、2025年末時点で中国のティードリンク店舗数は47万8000店に達し、3000人未満に1店の割合となっている。国内市場では競争が激しく、価格競争も進んでいる。喜茶(HEYTEA)では一部商品が7元(約161円)を下回り、店内飲食の価格は2015年ごろの水準に近づいている。
蜜雪冰城(Mixue)では国内の売上総利益率が32.5%から31.1%に低下し、中核事業の売上総利益率も30%を下回った。霸王茶姬(CHAGEE)も純利益率が18%から12%に低下し、今年第3四半期の新規出店数の伸び率は前年同期比64%低下した。

ブランドの知名度や店舗数が拡大する一方、利益率が低下する状況は、業界全体で競争が激しくなっていることを示している。
こうした国内市場の競争激化が、ブランドの海外進出を後押ししている。海外のティードリンク市場は、国内に比べてブランドの浸透度が低く、消費者の選択肢も限られているため、中国企業にとって成長余地が大きいとみられている。
海外では国内のような「最低価格」をめぐる競争がまだ形成されていないため、各地域の需給関係に応じて価格を設定できる。例えば、喜茶の米国での平均販売価格は中国国内より約40元高い。蜜雪冰城のレモネードは米国で1.99ドルで販売されており、中国国内価格の3~4倍に相当する。
それでも消費者の支持は続いている。霸王茶姬は海外店舗が345店にとどまる一方、海外のGMV(流通取引総額)は3四半期連続で前年同期比75%以上の伸びを記録しており、中国国内を上回る成長率となっている。
中国のティーブランドの海外展開を支援する決済サービス企業PingPongの童見雷・アジア太平洋地域副社長兼グローバル消費者向け事業責任者は、中国ブランドには国内の激しい競争によって培われた商品改良、サプライチェーン、店舗運営、デジタル化の能力があると指摘する。
ティードリンクは標準化しやすく、1店舗当たりの運営モデルも比較的軽量で、他地域への複製がしやすいことから、国際展開に適した業態でもあるという。

中国茶飲ブランド「霸王茶姬(CHAGEE)」のベネチア店
また、海外ではコーヒーに代わってティードリンクを選ぶ消費者も増えており、中国ブランドにとって新たな市場機会となっている。
MenuSifuが発表した「2025年米国現製ティードリンク市場データ報告」によると、米国の現製ティードリンク市場は年間9.1%のペースで成長しており、今後5~10倍に拡大する余地があるとされる。現時点では単一ブランドの市場シェアが5%を超えておらず、市場の勢力図はまだ固まっていない。
公開資料によると、2026年には少なくとも44の中国ティーブランドが海外で約1万5000店舗を展開している。
童氏によると、中国ティーブランドの海外展開は、これまでの「商品を海外に持ち込む」「まず1店舗を試す」という段階から、商品、サプライチェーン、店舗運営の標準作業手順(SOP)、フランチャイズ制度、デジタル経営などを含む「仕組みの輸出」へと変化している。
海外展開の地域戦略も分化している。東南アジアは、中国からの距離が近く、消費習慣が比較的似ているほか、中国系住民の基盤やフランチャイズの環境も整っていることから、規模を拡大しやすい市場とされる。一方、米国や欧州は、短期間で大量出店する市場というより、ブランドの国際化能力を検証し、世界的なブランドイメージを構築する上で重要な市場と位置づけられている。
檸季(NING JI)の創業者・汪潔氏は米国のティードリンク市場について「発展途上の市場」と位置づけ、「中国のティードリンクには米国でまだ大きな成長余地がある」としている。
ただし、海外進出は中国国内で成功した商品をそのまま持ち込めばよいわけではない。
例えば米国では、果実茶やタピオカミルクティーについて一定の認知があるものの、中国のティードリンク業界が近年生み出してきた商品や消費シーンについては、まだ十分に知られていない。店舗の立地、許認可、内装、雇用、税務、サプライチェーンなども、中国とは異なる環境に対応する必要がある。
東南アジアでも、国によって所得水準、人口構成、宗教、商習慣、法制度などが異なるため、中国国内で実績のある商品をそのまま展開しても成功するとは限らない。
海外展開における重要な課題の一つが法令順守だ。米国のフランチャイズ市場では、FDD(フランチャイズ開示書類)制度による規制があり、申請手続きには通常1~2年かかるとされる。一部ブランドでは、効率を優先して、ブランドライセンス契約によって先に店舗を開設し、その後に必要な手続きを進めるケースもあるが、問題につながる例も出ている。
2026年6月には、茉莉奶白(MOLLY TEA)が米国のニューヨーク、ロサンゼルスにある主要5店舗とのライセンス契約を正式に終了すると発表した。このうちニューヨークの4店舗については、裁判所が予備的差し止め命令を出し、商標の使用権を失わせた。また、コロンビア大学内の店舗については、そもそも正式な許可を得ていない侵害店舗と認定された。
さらに、店舗数が増えると、課題は商品や集客だけではなくなる。複数店舗、複数の運営主体、複数の決済手段、複数通貨を扱う中で、店舗管理や資金管理をどのように統合するかが重要になる。
童氏は、海外展開を成功させるブランドには、商品と組織の現地化、デジタル化と資金管理基盤の早期整備という二つの特徴があると説明する。
単にメニューを翻訳するのではなく、現地消費者、雇用、店舗立地、サプライチェーンを理解した上で事業モデルを構築する必要がある。また、店舗数が増えてからシステムを整えるのではなく、最初の段階から口座、決済、請求、売上分配、照合などの仕組みを整えることが求められる。
ティードリンクの海外展開では、表面的には商品や集客力が競争力に見えるが、事業を継続する上ではサプライチェーンの安定性が重要になる。
各ブランドはそれぞれ異なる方法を採用している。蜜雪冰城は原材料の自社生産を含む一貫したサプライチェーンを構築し、海外では8カ国に現地倉庫を設けている。冰淳茶飲や甜啦啦などは、茶葉やシロップを中国から輸出する一方、カップやストローなどは現地生産する「二本立て」の方式を採用している。
喜茶や奈雪は地域ごとの物流・倉庫ネットワークを構築し、北米では中央倉庫や前置倉庫を設け、米国の食品サービス大手Syscoなどとも協力して主要原材料を現地調達することで、生鮮果物などの廃棄を抑えている。
檸季の汪氏は、サプライチェーンを判断する際には単純な仕入れ価格だけでなく、物流費、関税、倉庫費用、廃棄ロス、供給の安定性などを総合的に考える必要があると指摘する。
特に生鮮果物や生乳など、保存期間が短く輸送コストが高い原材料は現地調達を検討する一方、商品の品質や味を左右する重要な原材料については、現地で安定した品質を確保できるかを踏まえて調達方法を選択する。
中国のティーブランドによる海外展開は、単に中国のサプライチェーンを海外へ移すことではなく、商品の品質基準を維持しながら現地の資源も活用できるグローバルな供給体制を構築する段階に入っている。
中国国内で激しい競争を勝ち抜いてきたティーブランドにとって、海外市場は新たな成長機会となっている。実際、米国や韓国などでは中国ブランドの店舗に長い行列ができる例もみられ、「中国より高い価格でも売れる」可能性が示されている。
一方で、海外で店舗を増やすこと自体が成功を意味するわけではない。商品開発からサプライチェーン、法令順守、資金管理、店舗運営まで、現地市場に合わせた仕組みを構築できるかどうかが、今後の中国ティーブランドの海外展開を左右することになりそうだ。
(中国経済新聞)
