大学より専門学校を選ぶ中国の若者 

2026/08/11 13:30

中国で、4年制大学よりも高い合格ラインを設定する職業系専門学校が増えている。大学の合格ラインを上回る成績を収めた受験生が、あえて専門学校を選ぶケースが広がっており、中国の大学進学における「学歴重視」から「就職・技能重視」への変化を映し出している。

四川省では8月9日、2026年の専門学校の入学選考が始まり、約11万5000人分の受験生の情報が大学側に提出された。今回の入試には1179校、3042の専門分野グループが参加している。

その中で、教育内容や就職実績などで評価の高い公立の職業系大学では、複数の専門分野で合格ラインが本科の合格基準を上回った。

四川省では今回、252の専門分野グループで合格ラインが大学入学の基準を超えた。内訳は文系が109、理系が143となっている。

人気を集めているのは、国の産業政策と密接に関わる実践的な分野だ。例えば、具身知能ロボット技術、低空インターネット技術、ドローン応用技術など、デジタル経済、人工知能(AI)、先端製造、現代農業、現代サービス業などを支える専門分野に受験生の関心が集まっている。

「本科に入れるのに、なぜ専科を選ぶ?」

この現象は四川省だけではない。湖南、広東、江蘇、湖北、山東、黒竜江などでも、本科の合格ラインを超えた受験生が専門学校を志願するケースが相次いでいる。

湖南省が公表した2026年の専門学校入試の初回投档ラインでは、文系・理系合わせて165の専門分野グループが本科ライン以上となった。特に理系では、最も高い専門分野グループの合格ラインが本科ラインを51点上回った。

広東省でも、大学ラインに達した職業系高等教育機関が複数登場。江蘇省では、理系学部ラインが456点だったのに対し、江蘇衛生健康職業学院の定向医学生専門グループは最低合格ラインが547点となり、大学ラインを91点も上回った。

つまり、受験生の一部では「本科に入れるかどうか」だけではなく、「卒業後にどのような仕事に就けるか」を基準に進学先を選ぶ動きが強まっている。

「卒業=就職」の確実性が人気を押し上げる

専門学校の人気を支える大きな要因の一つが、就職への「確実性」だ。

専門学校では、特定の企業や業界を対象にした人材育成プログラムなどが設けられており、卒業後の就職先が比較的明確なケースもある。特に、卒業後の進路が見えやすい「定向養成(特定分野・企業向けの人材育成)」は、受験生や保護者から強い支持を集めている。

中国では現在、電子情報、高度な装備製造、新エネルギー、スマートカー、新素材、省エネ・環境保護などの戦略的新興産業で、高度な技能を持つ人材が不足している。

厦門大学経済学系の丁長発副教授は、近年、一部の公立専門学校では実用性の高い専門分野が増えており、技術を身につければ就職の見通しも良く、学費も比較的安いため、費用対効果の高さが評価されていると分析している。

大学卒業後に「学び直す」動きも

専門学校の人気上昇は、高校卒業時の進路選択だけにとどまらない。

近年、中国では大学卒業後に技術学校へ入り直して技能を学ぶ「学び直し」や、大学学部を卒業した人がさらに専門学校で専門技能を身につけるケースも増えている。

広東省機械技師学院では6月15日、「大学生技師クラス」に関する交流・研討会が開催された。同校は、大学卒業生に実践的な技能を身につけてもらい、「高学歴」と「高技能」を両立させることを目指している。

また、鄭州鉄道職業技術学院では、本科卒業生を対象に含む専科の募集も行われている。同校では以前から本科卒業生を対象とした募集を実施しており、大学卒業後にさらに専門技能を身につけるという進路が定着しつつある。

「学歴」から「技能」へ 中国の高等教育に変化

教育関連の調査機関・麦可思研究院は、本科ラインを超える受験生による高職への「逆方向の選択」の背景には、受験生や保護者が教育の価値や将来の就職可能性を見直していることがあると分析している。

ただし、すべての専門学校が大学入学ラインを上回っているわけではない。こうした「大学入学超え」は、現時点では評価の高い有力校や定向養成など、特定の学校・専門分野に集中している。

専門家からは、大学生が技術学校に戻ったり、大学学部卒業生が専科へ進学したりする現象について、一部の大学の専門分野や人材育成の内容、教育方式が市場の需要に追いついていないことの表れだとの指摘も出ている。

中国ではこれまで、「大学学部を卒業すること」が安定したキャリアへの重要なステップと考えられてきた。しかし今、受験生の価値観は少しずつ変わり始めている。

「どの大学を卒業したか」だけではなく、「何ができるのか」「どんな仕事につながるのか」が進学先を決める重要な基準になりつつある。

大学学部より高い点数を取った受験生が、あえて専門学校を選ぶ――。この「逆転現象」は、中国の高等教育と就職市場の変化を映し出す新たな動きとして注目されている。

(中国経済新聞)