中国の大学、芸術系「専門試験」廃止相次ぐ

2026/08/8 19:45

中国の大学で、芸術系学部・学科の入試方式を見直す動きが広がっている。近年、複数の大学が一部の芸術系専攻で独自の実技試験(校考、大学独自試験)を廃止しており、大学入試の文化科目の成績や各省の統一試験(省統考)を重視する方向へと転換している。

中国伝媒大学はこのほど、2027年度の学部芸術系専攻の募集・選抜方式を発表した。今回の改革では、複数の専攻で募集を一時停止するほか、入試区分も変更する。

演劇・映画監督、放送・テレビ番組制作など8専攻は一般入試の枠に移行し、大学入試の文化科目の成績を基準に選抜するため、芸術系の校考を実施しない。また、ゲームアートデザイン、録音芸術など6専攻も校考を廃止し、省統考の成績と大学入試の文化科目の成績を組み合わせて合否を判定する。

こうした動きは中国伝媒大学に限らない。南京芸術学院では2026年度から、舞踊学や音楽教育の専攻で一般学部入試の独自試験を実施せず、各省が実施する芸術系省統考の成績を専門科目の試験成績として使用している。

2026年度の学部入試では、中央美術学院が美術学専攻の大学独自試験を廃止したほか、天津美術学院も視覚伝達デザイン、工芸美術など10以上の専攻で大学独自試験を取りやめた。

「芸術だけできればいい」からの転換

背景にあるのが、国を挙げた芸術系入試制度の改革だ。中国教育部が2021年に発表した「普通高等学校芸術類専攻試験・募集業務のさらなる強化・改善に関する指導意見」では、各省・自治区・直轄市が条件を整え、芸術系専攻の省統考の対象範囲を段階的に拡大する方針を示した。2024年までに、芸術系専攻で省統考を基本的に全面実施することを目指し、大学独自の試験についても対象となる大学・専攻を厳格に管理するとした。

同時に、文化科目の成績要件も段階的に引き上げる方針が示された。芸術系の人材育成の特性に応じて各専攻を分類し、大学入試の文化科目における最低合格ラインを徐々に引き上げることで、これまで一部の大学で見られた「専門科目を重視し、文化科目を軽視する」選抜方式の是正を目指している。

こうした政策を背景に、中国のネット上では「文化工作者一定要有文化(文化に携わる人こそ文化的素養を持つべきだ)」という言葉が話題になった。

つまり、芸術の才能だけでなく、一般的な学力や教養も備えた人材を育成しようという方向への転換である。

中国では長年、芸術系入試が大学進学への「近道」と見られることがあった。

芸術系専攻は従来、一般学部と比べて文化科目の成績要件が低いケースが多く、文化科目の成績に自信のない高校生が高校1、2年生の段階で芸術系予備校などに通い、実技試験を突破した後に文化科目の勉強を補うという進路選択も存在した。

教育問題を研究する21世紀教育研究院の熊丙奇院長は、芸術系入試の人気低下について、人工知能(AI)の発展による影響もあるものの、最大の要因は入試制度改革だと指摘している。

従来の「低い文化科目の成績でも、芸術系試験を経れば大学に入れる」という仕組みが変わったことで、芸術に強い関心があるわけではなく、「大学進学の別ルート」として芸術系入試を選んでいた学生が減少したと分析する。

一方で熊氏は、芸術系入試の沈静化は、芸術系専攻の学生募集や人材育成にとって必ずしも悪いことではないとみている。

「低い文化科目の成績でも合格できる」という実利的な動機が弱まれば、学生は自分の興味や能力、将来のキャリアを考えたうえで、より合理的に芸術系専攻を選択するようになるからだ。

芸術系専攻にも「淘汰」の波

さらに、新興産業の急速な発展に伴い、中国の大学では産業構造の変化に合わせた専攻の再編も進んでいる。芸術系専攻も例外ではない。

例えば、暨南大学が公表した2026年度の学部専攻設置案では、新設3専攻に対して2専攻を廃止する計画が示され、その中には音楽学が含まれている。

南昌大学も2025年に、演劇・映画文学、放送・テレビ番組制作、アニメーション、芸術デザイン学など4つの芸術系専攻を含む計8専攻の廃止案を公表した。

また、華東師範大学では2025年に、絵画、彫刻、芸術教育などを含む24専攻の募集停止が明らかになった。

こうした動きを見ると、中国の大学では芸術系専攻そのものが縮小しているようにも見える。しかし、教育・就職関連の調査機関である麦可思研究院は、個別の芸術系専攻の廃止が芸術学全体の衰退を意味するわけではないと分析している。

むしろ、従来型の専攻が姿を消す一方で、芸術と科学技術を融合した新たな専攻が登場している。

その代表が「芸術+テクノロジー」だ。教育部が2025年に新たに追加した芸術系専攻には、スマート映像芸術、バーチャル空間芸術など8専攻が含まれており、AIやデジタル技術と芸術を融合させる方向性が鮮明になっている。

中国の芸術系教育は今、単純に「芸術を学ぶ」時代から、「芸術×テクノロジー」「芸術×産業」を学ぶ時代へと移りつつある。

独自試験の廃止、文化科目の重視、旧来型専攻の縮小、新興分野の台頭――。中国の芸術系入試改革は、単なる入試方法の変更にとどまらず、AI時代に求められる芸術人材そのものを再定義する動きになっている。

(中国経済新聞)