人工知能(AI)による短編ドラマ制作が急拡大する一方、作品数の爆発的な増加による競争激化が進み、業界は「量産時代」から「淘汰時代」へと移行し始めている。大量のAI短編ドラマが市場に投入される中、ヒット作を生み出す難易度は急速に高まっている。
DataEyeが発表した「2026年上半期AIドラマ・漫画ドラマデータ報告」によると、今年上半期に中国全土で新たに公開されたAI短編ドラマは22万1900本を超えた。しかし、再生回数1億回を突破した作品は1055本にとどまり、爆発的ヒット率はわずか0.47%だった。1000万回以上再生された作品も約1万2000本で、全体の5.8%に過ぎず、90%以上のAI短編ドラマが大きな注目を集められていない。

中国ネット視聴協会のデータでは、今年第1四半期に中国全土で公開された短編ドラマ約12万8000本のうち、AI短編ドラマは約12万2000本を占め、割合は95%を超えた。ピーク時には、1日に1000本以上のAI短編ドラマが新たに公開され、わずか20秒ごとに新作が登場する計算になる。
一方、従来型の実写短編ドラマは急速に存在感を失っている。月間新作数は年初の1934本から6月には1629本まで減少し、多くの制作会社がAI作品へと軸足を移している。
AI短編ドラマが急速に普及した最大の理由は、制作コストと制作期間の大幅な削減にある。中国作家協会会員で映画・映像プロデューサーの陳琪氏によると、AI漫画ドラマは実写短編ドラマと比べて制作費を約3分の2削減できる。撮影スタジオ、衣装、セット制作などが不要で、制作期間も大幅に短縮できるという。
高品質な実写短編ドラマの場合、制作費は数十万元(約200万円~1000万円)から100万元(約2000万円)規模に達することもある。一方、AI漫画ドラマの場合、一般的な制作費は10万元~50万元(約200万円~1000万円)程度に抑えられる。
低コストで大量生産が可能になったことで、多くの企業やクリエーターがAI短編ドラマ市場へ参入。しかし、その結果として作品の同質化が急速に進み、「ブルーオーシャン」と見られていた市場は短期間で激しい競争市場へと変化した。

現在、人気AI短編ドラマの多くは、ヒット作品のストーリー構成やキャラクター設定を参考にした類似作品が大量に制作されている。特に仙侠、終末世界、ファンタジーなど視覚効果を重視するジャンルでは、同じような設定や展開の作品が相次いで登場。視聴者が似た内容の作品を大量に受け取ることで、クリック率や視聴完了率が低下し、プラットフォーム側の推薦順位も下がるという悪循環が生まれている。
上海の映像制作会社関係者は、AI短編ドラマで成功するには一定の制作ノウハウが必要だと指摘する。例えば、冒頭3秒で強い映像的インパクトを作り、20秒以内に主人公の危機を提示し、その後に爽快感のある展開を配置するなど、短時間で視聴者を引き込む構成が重要だという。しかし、こうした「爆発的ヒットの方程式」が広く共有されるにつれ、多くの制作会社が同じ手法を採用し、差別化が難しくなっている。
AI短編ドラマ市場は拡大しているものの、制作コストも上昇傾向にある。陳氏(仮名)によると、AI短編ドラマの制作費はここ半年で1分当たり1000元(約2万1000円)程度から3000~5000元(約6万3000円~10万5000円)程度まで上昇した。より高品質な映像表現を求める場合、さらに費用が増えるという。
また、プラットフォームの収益分配制度も変化している。以前は一定の最低収益保証が設定されるケースもあったが、現在では保証制度を廃止するプラットフォームが増え、制作会社への分配額も低下している。業界関係者によると、かつて1万回再生で800元~1000元(約1万7000円~2万1000円)の収益を得られた作品でも、現在では同程度の再生数で100元(約2100円)程度しか得られないケースもあるという。
AI時代、俳優の肖像権ビジネスも拡大し、AI短編ドラマの台頭は、実写俳優にも大きな影響を与えている。一部の俳優は、自身の顔や姿のAI利用を認め、肖像権を制作会社へ提供することで新たな収益源を得ようとしている。一方で、契約内容や利用範囲への不安も広がっている。

短編ドラマ俳優の斉子喬氏は、AI制作会社から肖像権契約の提案を受けた経験を明かし、「正式な契約で、本人が望まない作品に使われないのであれば検討できる」と話す。しかし、単なる肖像権の買い取りではなく、「俳優としての将来を制限する契約」になることへの懸念も示した。
専門家は、今後俳優は単なる出演者ではなく、AI学習用の動作データ提供、感情表現の設計、脚本開発、AIマネジメントなど、新たな役割を担う可能性があると分析している。
AI短編ドラマは「量産」から「精品化」へ
証券会社の分析によると、2026年以降、中国短編ドラマ市場は大きな転換期を迎えている。これまでの大量制作・大量配信モデルから、質の高い作品に流入する「精品化」への移行が進んでいる。
業界関係者は、現在の市場環境はAI短編ドラマの「冬の時代」ではなく、初期段階での過剰な投資や供給拡大が修正される過程だと指摘する。今後は、単なるAI技術の活用ではなく、脚本力、キャラクター設計、感情表現などコンテンツ本来の価値が競争力の核心になるとみられる。
中国ネット視聴協会も「AI創作は単なるツール活用から制作プロセス全体への融合へ進む」と指摘しており、AI短編ドラマは今後、ゲームIP、教育コンテンツ、電子商取引向け動画素材など、新たな分野への展開も期待されている。
急成長を遂げた中国AI短編ドラマ市場は、現在、量を競う時代から「本当に選ばれる作品」を生み出す時代へと大きな転換点を迎えている。
(中国経済新聞)
