2026 FIFAワールドカップ(米国・カナダ・メキシコ大会)が熱戦を繰り広げる中、世界中のサッカーファンを魅了している。ピッチ上の戦いだけでなく、大会が生み出す経済効果にも注目が集まっている。中国では、観光や外食、越境貿易、ECなど幅広い分野で「スポーツ+」による消費拡大が進み、ワールドカップが新たな消費活性化の原動力となっている。
今大会は日本時間の深夜から午前中に試合が行われるケースが多く、時差に対応した新たな消費ニーズが生まれている。観戦スタイルも自宅中心から、多様な場所で楽しむ形へと広がっており、各地の飲食店では「スポーツ+グルメ」をテーマにした企画が相次いでいる。

「朝8時観戦コーヒーセット」や「深夜応援軽食」、「週末オールナイト観戦プラン」などが続々登場。広東省では、茶楼で点心を味わいながら大型スクリーンで試合を観戦できるサービスが人気を集め、「梅開二度(2ゴール)」「ハットトリック」などサッカーをテーマにしたメニューも販売されている。売上高は前年同期比約30%増加し、サッカーゲームを取り入れた参加型イベントも好評だ。
映画館で観戦する新たなスタイルも定着しつつある。大型スクリーンや立体音響による没入感がサポーターを引き付けており、中国電影集団(チャイナ・フィルム・グループ)と華夏電影は全国1,200館以上の映画館にライブ中継システムを提供。北京や上海、広州など150都市以上で60試合以上が上映される予定となっている。

宿泊業界でも、高画質大型テレビや高速通信環境を備えた「観戦ルーム」の予約が大幅に増加。旅行会社では北米での試合観戦と観光を組み合わせたツアー商品の検索件数が急増し、複合型旅行商品の人気も高まっている。
大会は観戦だけでなく、実際にサッカーを楽しむ人々も増やしている。北京市内のスポーツ施設では、ワールドカップ効果によりグラウンド予約率が前年同期比40~50%上昇。自主的な試合開催が増え、青少年向けサッカークラブでも体験レッスンの申し込みが急増している。

関連商品の販売も好調だ。山東省製のぬいぐるみサッカーボール、浙江省製のワールドカップデザイン保温ボトル、江蘇省製のフィギュアキーホルダーなどが、各地の公式ポップアップストアやライセンスショップで人気を集めている。
さらに今年はAI(人工知能)やAR(拡張現実)対応スマートグラスも注目商品となった。ARグラスでは目の前に大型スクリーンのような映像が表示され、AIグラスは度付きレンズへの対応に加え、89言語の翻訳機能も備えるなど、観戦体験を大きく向上させている。
こうした「中国製造」は国内市場だけでなく海外市場でも存在感を高めている。世界最大級の雑貨市場を持つ浙江省義烏市では、中南米向けスポーツ用品輸出が大幅に拡大。今年1~5月のスポーツ用品輸出額は49億1,000万元(約1,000億円)に達し、このうち中南米向けは17.6%増加した。開催国の一つであるカナダ向け輸出は前年同期比2.83倍となった。

義烏ではOEM生産から自社ブランド・独自開発への転換も進む。ワールドカップ公式ライセンスを取得する企業が増え、多数の特許や商標を保有する企業も現れ、デザイン力と知的財産を武器に世界市場への展開を加速させている。
広東省深圳市の華強北では海外バイヤーの来訪が増え、外国人来訪者数は前年同期比10%以上増加した。深圳税関によると、今年1~5月の携帯電話、パソコン、テレビの輸出額はそれぞれ11.4%、21.5%、9.3%増加。海外ECではスマートグラスの検索数が前年比200%増となり、中国ブランドの販売台数は5倍以上に拡大している。
都市部の商業施設でも、ワールドカップを軸とした新たな消費モデルが広がっている。上海では観戦、ショッピング、飲食、体験イベントを融合した「スポーツ+商業+観光」の複合型イベントを展開。サッカー体験ゲームや世界各国のグルメフェスティバルなどが多くの来場者でにぎわっている。
浙江省寧波市では旧外灘地区で40日間にわたるワールドカップ・カーニバルを開催し、4メートルの大型スクリーンによる試合中継に加え、各国グルメやクリエーティブ商品を楽しめる空間を提供。深圳市では公園内に大会テーマの展示を設置し、写真撮影やスタンプラリー、夜間の観戦イベントを通じて、公園を観戦と交流の新たな拠点へと変えている。

各都市の取り組みは異なるものの、共通するのはワールドカップを日常の生活シーンへ自然に取り込むことだ。業界関係者は「現在のワールドカップ消費はサッカーファンだけのものではなく、ライフスタイル消費へと進化している」と分析する。ユニフォームファッションや観戦スポット巡り、SNSでの情報発信などを通じ、ライトユーザーも新たな消費層として市場を支えているという。
大会はいずれ幕を閉じるが、そこで培われた運営ノウハウや消費モデルは今後も残る。話題を日常へ、アクセス数を継続的な集客へ、そして高揚感を実際の消費へと結び付けられるかが、ワールドカップ後の消費市場にとっても重要な課題となりそうだ。
(中国経済新聞)
