河南省南陽市で昨年末、15歳の男子生徒がマンションの18階から飛び降りるという痛ましい出来事が起きた。幸い命は助かったものの、13日間の昏睡状態から目覚めた彼が父親に最初に尋ねた言葉は、「お父さん、僕はこれからも学校へ行かなければならないの?」だった。この一言は、中国社会に大きな衝撃を与えた。
実はこの少年は、母親の微信(WeChat)アカウントを使い、18回にわたって学校への欠席連絡を送り、合計38日間も学校を休んでいた。しかし、その異変に家族も学校も気付かなかった。多くの人はこの事件を特別なケースだと思ったかもしれない。しかし、最新の調査結果を見ると、決してそうではないことが分かる。

財新網の報道によると、青少年向け心理支援機関「渡過」が発表した『高校生拒学心理調査報告(2025)』では、調査対象となった高校1年生の74.9%が、何らかの形で「学校へ行きたくない」と考えた経験があるという。つまり、高校生の4人に3人が拒学意識を抱えていることになる。さらに26.4%の生徒は、週末に学校のことを考えただけで不安や恐怖、憂うつな気分になると回答した。31%は気分の落ち込みや抑うつ状態を理由に欠席した経験があり、42.4%には欠席歴があった。もはや「学校へ行きたくない」という感情は、一部の生徒だけの問題ではなく、多くの高校生に共通する心理状態となっているのである。
では、なぜこれほど多くの子どもたちが学校を苦痛に感じるようになったのだろうか。一般的には受験競争や学習負担の重さが原因だと考えられがちだが、今回の調査結果は少し異なる現実を示している。拒学意識の原因として最も多かったのは、スマートフォンやネットゲーム、動画視聴などの「学校外の楽しみ」で、その割合は46.1%に達した。一方、試験のプレッシャーや厳しい校則、学習負担など「学校環境からの逃避」は18.7%、家庭への依存が14.3%、友人関係などの社会的な悩みはさらに低い割合だった。
しかし、この結果だけを見て「子どもたちがゲームに夢中になり過ぎている」と結論付けるのは早計である。多くの専門家は、ゲームやSNSへの依存は原因ではなく結果だと指摘する。勉強のストレス、将来への不安、親からの期待、人間関係の悩みなどによって心が疲れた子どもたちが、一時的な安らぎや逃げ場をネット空間に求めているのである。現実世界で感じる苦しさが大きいほど、ゲームや動画の世界に長く留まりたくなる。その結果として生活リズムが崩れ、朝起きられなくなり、学校へ足が向かなくなるケースが少なくない。
さらに注目すべきは、拒学意識と精神状態との強い関連である。調査では、高校生全体の抑うつスコアと不安スコアがすでに軽度の抑うつ状態、軽度の不安状態に達していた。34.4%の生徒には中等度以上の抑うつ症状が見られ、8.8%は重度の不安症状を抱えていた。特に「学校へ行きたくない」と頻繁に考える生徒ほど、抑うつや不安の数値が高い傾向が確認されている。つまり、「学校へ行きたくない」という言葉は、単なる怠け心や反抗心ではなく、心の健康状態が悪化しているサインである可能性が高いのである。
こうした現象の背景には、中国社会全体の変化もある。かつて中国では、「勉強すれば人生を変えられる」という信念が広く共有されていた。良い大学に入り、安定した仕事に就き、豊かな生活を実現することが、多くの家庭の目標だった。しかし近年は状況が変わりつつある。大学進学率は大幅に上昇した一方で、若者の就職環境は厳しさを増し、住宅価格や生活コストも高いままだ。高校生たちはこうした現実を見ながら、「これほど努力して勉強しても、本当に将来は開けるのか」と不安を抱いている。その迷いが学習意欲の低下や拒学感情につながっている側面も否定できない。

もちろん、親たちも苦しんでいる。激しい競争社会の中で、子どもに少しでも良い未来を与えたいという思いから、勉強を促し、成績を気にし、スマートフォンの使用を制限しようとする。しかし、その過程で親子の対話が失われ、子どもが抱える不安や孤独に気付けなくなることもある。今回の調査でも、家庭関係が悪化するほど拒学意識が強まる傾向が見られた。子どもたちが本当に求めているのは、「もっと頑張れ」という言葉ではなく、自分の苦しさや不安を理解してくれる存在なのかもしれない。
高校生の4人に3人が学校へ行きたくないと感じているという現実は、単なる教育問題ではない。それは家庭の問題であり、社会の問題であり、そして現代中国が抱える若者の心の問題でもある。河南省の少年が目覚めて最初に発した「これからも学校へ行かなければならないのか」という問いは、彼一人のものではない。いま中国の多くの若者たちが胸の内に抱えている、静かな叫びなのである。その声に耳を傾けることができるかどうか。それが今、中国社会に問われている。
(中国経済新聞)
