5月14日午前中、北京の人民大会堂で習近平国家主席は米国のトランプ大統領との首脳会談に臨んだ後、午後にはトランプ大統領は習主席とともに北京市内にある世界文化遺産「天壇公園」を訪問した。この訪問は、単なる観光ではなく、米中関係の象徴として注目を集めている。
天壇公園は、明代と清代の歴代皇帝が「祭天」と「祈谷」の儀式を行った巨大な祭祀施設である。1420年に明の永楽帝によって故宮の東南に造営され、1998年にユネスコの世界文化遺産に登録された。総面積は約270万平方メートルと広大で、北京のシンボル的存在だ。紫禁城や故宮博物院と並ぶ重要な歴史的遺産である。
天壇の特徴的な構造は、北側が円形で南側が方形である点にある。これは古代中国の宇宙観「天円地方」(天は丸く、地は四角い)を反映したものだ。南端の「圜丘壇」は三層の円形石壇で、皇帝は毎年冬至に中央の丸い石板の上に立ち、天帝に向かって祈りを捧げた。北端には「祈年殿」が建ち、春節には五穀豊穣を祈願する儀式が行われた。これら二つの主要施設は「丹陛橋」と呼ばれる高架通路で結ばれており、途中には皇帝の位牌を安置した「皇穹宇」がある。
この天壇公園は、米中友好の歴史においても特別な意味を持つ。ニクソン元大統領による1972年の中国訪問、いわゆる「ニクソン・ショック」の立役者であるヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が、十数回にわたり訪れた「ゆかりの地」として知られる。キッシンジャー氏は米中関係正常化に大きく貢献した人物であり、天壇は両国和解の象徴的な場所となっている。

習近平国家主席がトランプ大統領をこの場所に案内した理由は複数考えられる。第一に、歴史的で格式高い名所を選ぶことで、友好ムードを演出し、対話を促進する狙いがある。米中間には貿易問題や台湾問題、地政学的緊張が存在する中、文化遺産を通じた「ソフトパワー」外交は効果的だ。第二に、トランプ氏が宗教意識の強い人物である点を考慮した選択だろう。シンガポールの聯合早報も指摘するように、天壇での祭祀の歴史は、トランプ大統領の価値観に響く可能性が高い。
トランプ大統領と習近平国家主席の散策は約30分間に及び、記念撮影の際、トランプ大統領は「中国は美しい」と語った。一方、米国の記者団から台湾問題について協議したかどうかを問われた際には、答えを避けた。この様子は、両首脳が敏感な政治問題を巡る直接対決を避けつつ、象徴的な場で関係改善の姿勢を示したものと解釈できる。
天壇公園訪問は、米中首脳外交の伝統的な手法でもある。過去の首脳会談でも、故宮や万里の長城などの文化遺産が舞台となることが多かった。こうした場所は、単なる背景ではなく、両国の歴史的つながりを想起させ、相互理解を深める役割を果たす。
しかし、現在の国際情勢を考えると、この訪問の意義は大きい。トランプ政権下での米中関係は、過去の政権同様に複雑だ。経済摩擦や安全保障問題を抱えながらも、両国は対話の窓口を維持する必要がある。天壇という「天に祈る」場所で、平和と繁栄を象徴する訪問は、両国国民に希望を与えるものかもしれない。
習近平主席の選択は巧みだと言える。トランプ大統領を感動させるだけでなく、国際社会に対し、開放的で文化を重視する中国のイメージを発信した。キッシンジャー氏の時代から続く米中友好の系譜を、再び強調した形だ。
(中国経済新聞)
