勝宏科技、香港IPO始動 最大175億香港ドル調達へ ジャック・マー氏ら出資でAI需要追い風

2026/04/15 10:45

 プリント基板(PCB)大手の勝宏科技は4月13日、香港市場での新規株式公開(IPO)に向けた募集を正式に開始した。最大175億香港ドル(約152億元、約3200億円)を調達する計画で、4月21日の上場を予定している。これは、イラン戦争勃発以降で世界最大規模の株式発行となる見通しで、2026年の香港市場でも最大級のIPOの一つとなる。

 公開資料によると、同社は8335万株を発行し、1株当たりの上限価格は209.88香港ドル。調達額は最大175億香港ドル(約3200億円)で、15%のオーバーアロットメント(追加売出)を含めると約170億元(約3400億円)規模に拡大する可能性がある。ただし、タイミングは極めて微妙だ。4月12日には米国とイランの協議が決裂し、米国がイラン海運への封鎖措置を発表。原油価格やドルが上昇する一方、世界の株式・債券市場は下落した。

 それでも市場関係者の間では強気の見方もある。香港の証券会社アナリストは「同社の香港株はA株に比べ約37%のディスカウントで、通常の約15%を大きく上回り、投資妙味が高い」と指摘。実際、4月13日時点で機関投資家の需要はすでに全発行株をカバーしたとされる。

 2006年設立の勝宏科技は、すでに深セン証券取引所の創業板に上場しており、NVIDIAの重要サプライヤーとして知られる。同社は高密度配線板(HDI)や多層PCBを主力とし、AIアクセラレーター、AIサーバー、データセンター用スイッチ、光通信モジュールなどの中核部品を供給している。

 調査会社のデータによれば、2025年上半期におけるAI・高性能計算(HPC)向けPCB市場で世界首位となり、市場シェアは13.8%に達した。AI投資が半導体からインフラへと拡大する中、同社は“ツルハシを売る企業”として存在感を高めている。

 2025年の売上高は193億元(約4000億円)に達し、2026年にはさらに約70%の増収が見込まれている。一方で、A株の予想株価収益率(PER)は約24倍と、中国のハイテク株指数(約50倍)と比べ割安感がある。

 今回のIPOでは、豪華な基石投資家(アンカー投資家)陣も注目されている。37機関が合計約9.97億ドル(約1500億円)の出資を約束し、最低6カ月のロックアップ(売却制限)を設定した。

 主な投資家には、馬雲(ジャック・マー)氏系のYunfeng Capital、Hillhouse Investment、Morgan Stanleyなどが名を連ねる。こうした有力投資家の参画は、同社の事業基盤とAI関連需要への期待の高さを示すものといえる。

 香港は2025年に世界最大のIPO市場となり、2026年1〜3月の資金調達額も前年同期の24億ドルから116.4億ドル(約1.7兆円)へと急増している。

 ただし、今回のように「地政学リスク」と「資源価格高騰」が同時に重なる環境下での大型上場は少ない。勝宏科技のIPOは、AIハードウェア関連銘柄への投資需要が不透明な外部環境を上回るかどうかを測る重要な試金石となる。

 順調な上場と安定した株価推移を実現できれば、「AIインフラは確実な成長分野」とのメッセージを市場に発することになる。一方で、上場後のパフォーマンスが低迷すれば、後続のテック企業の資金調達にも影響を与える可能性がある。

(中国経済新聞)