炭酸リチウムなど主要原材料の価格が足元で再び上昇し、動力電池産業にコスト圧力が強まっている。一方で業界は減速するどころか、ナトリウムイオン電池や半固体電池といった多様な技術路線の開発を加速させており、使用済み電池の回収・管理体制も全面的に高度化している。関係者は、中国の電池産業が「技術の多元化」「用途別最適化」「ライフサイクル全体の循環化」を軸とする深い構造転換期に入りつつあると指摘する。
データによれば、2025年下半期の安値と比べ、電池用炭酸リチウム価格はすでに2倍以上に上昇した。中長期的にも上昇圧力は強いとみられる。コンサルティング企業のウッドマッケンジー(Wood Mackenzie)が公表したリポート「エネルギー転換におけるリチウム展望」では、エネルギー転換の加速を背景に、2050年の世界のリチウム需要は1300万トン超と、基準シナリオの2倍以上に達する可能性があると予測。新規投資が不足すれば、早ければ2028年にも供給不足が顕在化する恐れがあるという。
電池メーカー関係者は、リチウム価格の上昇が業界に大きな影響を及ぼしていると指摘する。コスト転嫁が進まない企業では赤字に陥り、研究開発投資の削減や増産計画の延期を余儀なくされるケースも出ている。一方、業界大手は上流資源の確保に動くとともに、技術革新によるコスト低減で打開を図っている。
リチウム価格の周期的変動は、単一資源への依存リスクを浮き彫りにしている。中国科学院物理研究所クリーンエネルギー実験室の胡勇勝主任は、中国がリチウム資源の多くを輸入に依存している現状を踏まえ、「価格変動が電池産業の多元化とリサイクル志向を加速させている」と分析する。
投資家の間でも、低コストかつ高安全性の代替技術への需要が一段と高まっているとの見方が広がる。光合創投の翟浩苇副総裁は「リチウム価格の変動は需給関係と市場競争の結果であり、結果として業界再編を促している。コア技術やコスト優位性を欠く企業は淘汰され、多様な技術を備える企業が次の成長局面で主導権を握る」と指摘する。
政策面でも、価格競争から価値競争への転換が進む。工業情報化部が策定した強制国家標準「電動車用動力電池安全要求(GB38031-2025)」は2026年7月に施行予定で、安全・技術面のハードルを引き上げる。これにより企業の研究開発投資が促され、「過度な価格競争」の抑制と付加価値向上が期待されている。
こうした中、ナトリウムイオン電池や半固体電池といった新技術の実用化が加速している。ナトリウムイオン電池では、中国科学院物理研究所の研究チームが自己保護機能を備えた不燃性電解質を開発し、アンペア時級電池で熱暴走を完全に遮断することに成功した。
製品の商用化も進展している。寧徳時代は低温環境向けの量産型ナトリウム電池を投入し、億緯鋰能は大容量ナトリウム電池による蓄電システムの商用運転を開始した。中科海鈉も製品ラインアップを拡充し、大型トラックでの商用試験データを公表している。
胡氏によれば、ナトリウム電池は現在、産業化拡大の直前段階にある。エネルギー密度は量産品でリン酸鉄リチウム電池の約85%に達し、出力性能では同等水準に近づいている。コスト面では現状、リチウム電池が1ワット時当たり約0.4元(約8円)、ナトリウム電池は0.5~0.6元(約10~12円)だが、2027年には同等水準になる見通しだという。
安全性や低温特性に優れるナトリウム電池は、資源制約を受けにくい点も強みで、特に蓄電分野で大きな潜在力を持つとされる。電動車分野でもリチウム電池を補完する形での活用が見込まれている。
一方、固体電池でも進展が見られる。広汽集団傘下の電池企業は、半固体型の大容量蓄電セルを発表した。完全固体電池は依然として技術・コスト面の課題が残るが、現実的な解として半固体技術を活用し、既存生産ラインとの互換性を保ちながら量産化を進める動きが広がっている。
技術革新と並行し、使用済み電池の回収・再利用体制も制度面で大きく前進した。新たな動力電池トレーサビリティ情報プラットフォームが稼働を開始し、4月には「新エネルギー車用使用済み動力電池の回収・総合利用管理暫定弁法」が施行された。これにより、トレーサビリティ管理や生産者責任が法的義務として明確化された。
専門家は、制度の格上げとプラットフォームの高度化により、中国の動力電池リサイクル管理は「2.0時代」に入ったと評価する。
業界関係者は、今後の持続的発展には、技術の多元化とサプライチェーン全体の協調が不可欠だと強調する。代替技術の育成とリサイクル体制の整備を同時に進めることで、資源制約を緩和し、より強靭で持続可能な産業エコシステムの構築が求められている。
(中国経済新聞)
