2026年の春節は、中国経済の回復力と構造変化を同時に示す節目となった。
中国交通運輸部の発表によれば、春節前後の全国における地域間の移動総数と単日あたりの移動者数はいずれも過去最高を更新した。春の特別輸送期間(春運)全体の移動者数も2025年を上回り、移動の規模は新たな段階に入ったといえる。
注目すべきは、移動の「質」の変化である。従来の帰省ラッシュに加え、旧正月2日以降にも第二の小さなピークが確認された。背景には、仕事始めの前倒しに加え、いったん帰省した後に改めて旅行へ出かけるといった、いわば「分けて過ごす年越し」の広がりがある。
実際、旅行関連の統計によると、春節期間中に2回以上航空機を利用した旅行者数は前年同期比で50%以上増加する見込みだ。帰省と観光を組み合わせる過ごし方が一般化しつつある。
海外旅行も訪中旅行も拡大
海外旅行も大きく伸びた。春節期間中の香港・マカオ・台湾および国際線の運航便数は2025年を明確に上回り、人気の渡航先はタイ、韓国、ヨーロッパの三地域に集中した。
一方で、中国を訪れる外国人観光客も大幅に増えている。春節休暇最初の5日間における中国行き航空券の予約枚数は、前年同期比で312%増となった。海外からの観光客が中国で旧正月を体験する動きが広がり、訪中観光が新たな消費の原動力となっている。

サービス消費が全体を押し上げる
消費関連のデータも堅調だ。春節休暇前4日間、全国の主要な小売・飲食企業の1日平均売上高は前年同期比8.6%増加した。また、商務部が重点的に観測している78の商業地区では、来訪者数が4.5%増、売上高が4.8%増となった。
特に目立つのがサービス分野の伸びである。主要な予約サイトにおける国内旅行の消費額は4.5%増加し、高速道路の通行料金無料措置や電気自動車向け充電設備の整備拡大を背景に、レンタカーの利用件数は26%増えた。移動や体験に対する支出が着実に広がっている。
映画市場は1,000億円規模に到達も、熱狂は限定的
映画市場では、2026年春節シーズンの総興行収入が50億元(約1,000億円)を突破した。ただし、前年に社会現象となった『哪吒之魔童闹海(Ne Zha 2)』のような大ヒット作は現れなかった。作品の題材や完成度などの影響もあり、今年の興行収入や観客動員数は、過去の春節シーズンと比べてやや低い水準にとどまっている。この点は示唆的である。消費意欲そのものは回復しているが、それを実際の支出に結びつけられるかどうかは、提供される商品やコンテンツの質に大きく左右される。
補助金政策と免税販売が下支え
春節前に拡充された国家補助金政策も消費を後押しした。家電製品やスマートフォン、スマートグラスなどが補助の対象となり、いわゆる「電子機器の年越し需要」が広がった。
海南省の離島免税店の売上高は、春節休暇前4日間で9.7億元(約約194億円)に達した。政策による下支えと消費意欲の回復が重なり、一定の押し上げ効果を生み出している。
2026年春節の各種データが示すのは、人々が再び積極的に移動し、旅行し、体験にお金を使っているという事実である。一方で、映画市場が象徴するように、消費意欲があるだけでは十分ではない。魅力ある商品や質の高いコンテンツがなければ、爆発的な広がりにはつながらない。
春節は、中国経済の回復基調を裏付けると同時に、今後の成長を左右するのは供給側の創造力であることを、静かに物語っている。
(中国経済新聞)
