中国を代表する民営企業・杉杉グループの創業者、鄭永剛氏が、2023年2月10日に東京で心臓発作により65歳で死去してから、まもなく3年を迎える。この3年間で、同グループは深刻な内紛と債務危機に陥り、2025年1月には債権者から破産を申し立てられ、上海にある象徴的な本社ビル「君康金融広場」が司法競売にかけられる事態となった。
1月13日、同ビルは「アリババ司法オークション」プラットフォームで2回目の入札が開始され、開始価格は18億1,000万元(約380億円)に設定された。これは、1月8日に行われた初回入札(開始価格22億6,000万元)で落札者が現れなかったため、価格を20%引き下げたものだ。

君康金融広場は、上海市浦東新区の後外灘CBDに位置する高級オフィスビル群で、花びらのような形状をした5棟の独立建築から構成されている。総延床面積は約10万5,400平方メートルに及び、黄浦江に隣接し、地下鉄7号線の後外灘駅と直結するという恵まれた立地を誇る。もともとは杉杉グループの本社として使用されていたが、債務問題の深刻化に伴い所有権が何度も移転し、現在は司法処分の対象となっている。
管理費は1平方メートル当たり月約35元と高額で、未払い額はすでに3,946万元を超えている。一部の棟では空室が長期化し、設備の維持管理も十分とは言えない状況だ。また、後外灘エリアは浦東濱江の中核区域に位置するものの、前外灘地区と比べると開発が遅れており、商業的な集積や活気が限定的である点も課題とされている。
鄭永剛氏の急逝は、杉杉グループの運命を大きく左右した。遺言が残されていなかったため、1980年代生まれの妻と、1990年代生まれの嫡男との間で経営権を巡る激しい争いが勃発。いわゆる「お家騒動」はグループ内部に深刻な混乱をもたらした。

鄭永剛氏と妻の周婷氏
2024年11月には、妻の周婷氏が董事長(会長)に就任し、外部からプロ経営者チームを招いて再建を図ったものの、内紛によるダメージはあまりにも大きかった。金融機関による融資の引き揚げや利払いの遅延が相次ぎ、リチウム電池材料や偏光板を主力とする事業の業績は急速に悪化。最終的に2025年1月、債権者による破産申請に至った。
かつて中国の新エネルギー産業を牽引する存在として注目を集めた杉杉グループだが、今回の一連の経緯は、家族経営が抱えるリスクを浮き彫りにした象徴的な事例ともいえる。将来的な再建の可能性は残されているものの、上海本社ビルの競売は、同グループの低迷を象徴する出来事となった。入札結果は、今後数日以内に明らかになる見通しだ。
(中国経済新聞)
