中国政府は、景気の下振れ圧力が続く中、内需拡大を下支えする政策手段として、2026年の「消費品買い替え向け国家補助金(国補)」制度を正式に始動させる。元旦および春節(旧正月)という消費の最盛期を見据え、政府はこのほど、第1弾として625億元(約1兆2,500億円)に上る超長期特別国債資金を地方政府に前倒しで配分した。
今回の国補は、2025年の制度設計を概ね踏襲しつつ、自動車や家電の買い替え支援、デジタル・スマート製品の購入補助を継続する内容となっている。加えて、ウェアラブル分野の成長を見据え、スマートグラス(知能眼鏡)が新たに補助対象に加えられた点が注目される。
■ ECと実店舗を一体活用し、消費喚起を加速
アリババグループ傘下の淘宝(タオバオ)および天猫(Tmall)は、2026年1月1日から国補の受け取りおよび即時利用を開始すると発表した。
利用者は、アプリ内で「国家補貼(国家補助金)」と検索することで補助金を取得し、対象商品にその場で適用できる。
初期段階で対応するのは、広東、浙江、江蘇、安徽、山東、河北、福建、内モンゴル、江西、重慶など12の省・直轄市。
オンラインに加え、全国1万店を超える「天猫優品」実店舗でも制度を利用できる体制を整え、ECとリアル店舗を組み合わせた消費喚起を図る。
■ 補助内容:省エネ・スマート分野に重点
① 家電の買い替え補助
対象は、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコン、パソコン、給湯器の6品目。一級エネルギー効率・節水基準を満たす製品に対し、販売価格の15%を補助する。補助額は、1人1点あたり最大1,500元(約3万円)。
② デジタル・スマート製品の購入補助
スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ(リストバンド型を含む)、スマートグラス、スマートホーム製品(高齢者向け住宅設備を含む)が対象となる。単価6,000元(約12万円)以下の商品に対し、補助率は15%、補助上限は500元(約1万円)に設定されている。
省エネ性能やスマート化を条件とする制度設計は、単なる短期的な消費刺激にとどまらず、産業の高度化や製品の高付加価値化を促す政策意図を色濃く反映したものと言える。
■ 淘宝・天猫、国補実施で最大規模のプラットフォームに
淘宝側によると、2025年には3,000を超える品目、1万以上のブランド、約50万点の商品が国補対象として同プラットフォームに掲載された。
国補特設ページの1日平均閲覧者数は1億5,000万人超に達し、制度利用の中心的な窓口となった。
補助対象の品目数、ブランド数、商品点数、利用頻度のいずれにおいても、淘宝・天猫は国補実施プラットフォームの中で最大規模を誇る。
2026年も引き続き、政府の消費刺激策を実体経済へと波及させる重要なインフラとして、その役割は一段と高まりそうだ。
(中国経済新聞)
