元旦の3連休と、最大9連休となる春節休暇を目前に控え、中国の観光市場は冬季需要の最盛期を迎えている。休暇日数の違いを活かし、「3日休めば8連休」といった柔軟な休暇取得が広がるなか、年末年始の旅行消費は多様化と拡大の様相を一段と強めている。
1.「飛行機で行く年越しコンサート」が定着
旅行予約サイト「去哪儿(Qunar)」のデータによると、2025年末から2026年初頭にかけて全国各地で開催される年越しコンサートが、開催地の観光消費を大きく押し上げている。
南寧では元旦期間中、胡夏(フー・シャー)や華晨宇(ホア・チェンユー)のコンサートが予定されており、会場周辺の体育センター一帯が元旦期間で最も人気の高いエリアとなった。周辺ホテルの予約は前年比で数十倍に急増。温暖な気候も追い風となり、市内全体のホテル予約数は前年比17倍に達した。上海や北京を上回り、南寧は初めて「元旦の人気旅行先トップ3」にランクインしている。
また、元旦期間中の南寧行き国内線航空券の予約数も前年比1.4倍に増加しており、「飛行機でコンサートを観に行く」年越しスタイルが定着しつつある。
広州では、鄧紫棋(G.E.M.)が元旦前後に計9公演を開催。カウントダウン公演では、年越しの瞬間に花火を打ち上げる演出も話題を集めた。会場となる広州オリンピックセンター周辺は、市内の人気商圏トップ3に入り、周辺ホテルの予約数は前年比13倍、市全体でも約3倍に増加し、元旦期間で最も人気の高い旅行先となった。
このほか、仏山、鄭州、紹興などでも音楽イベントの開催を背景に、ホテル予約数が3~10倍に伸びている。

2. 映画とテーマパークも需要を喚起
現在公開中の映画『ズートピア2』のヒットを背景に、上海ディズニーリゾートの元旦期間の入園チケット販売数は、人気観光スポットの中でトップとなり、前年比5.2倍に拡大した。北京ユニバーサル・スタジオも来場者数が大きく伸び、前年同期比で約3倍の増加を記録している。
Qunarのデータによると、2026年1月1日から3日にかけての人気都市におけるホテル予約数は、全体で前年比3倍以上に増加。予約数上位10都市は、広州、南寧、上海、北京、ハルビン、深圳、南京、重慶、武漢、鄭州となっている。
3.「一棟貸し」で年越し、主役は00年代生まれ
旅行会社・春秋旅游によると、元旦休暇の旅行予約人数は前年比60%以上増加し、国内旅行・海外旅行ともに50%を超える高い伸びを示した。春節休暇の予約もすでに本格化しており、予約人数は前年同期比で約50%増となっている。
国内旅行では、「氷雪」と「暖冬」という二極化の傾向が鮮明だ。氷雪観光では長白山が人気を集め、スキーや霧氷観賞を目的とした予約人数は元旦期間中に倍増。一方、暖冬エリアでは三亜が家族連れを中心に高い支持を得ている。
民泊プラットフォーム「途家(Tujia)」のデータによると、2026年元旦期間に「別荘一棟貸し」で年越しをするスタイルが急速に広がり、独立型ヴィラの予約数は前年比1.4倍となった。
とりわけ00年代生まれが民泊利用の中心となっており、元旦期間の民泊予約に占める割合は52%に達し、前年比では1.7倍に拡大している。
ハルビンの「氷雪大世界」は今年も高い人気を維持しており、年越し当日の入場券が最も早く完売した。宿泊需要も急増し、元旦期間の民泊予約数は全国で最多となった。威海も年越し旅行先として注目を集め、全国トップ10に入っている。
また、没入型体験が楽しめる開封の「万歳山武侠城」周辺では、民泊予約数が前年比15倍に増加。開封市全体でも7倍を超える伸びを示し、全国でもトップクラスの成長率となった。
4. 海外旅行も回復、ロシアが急浮上
海外旅行市場も拡大基調にある。日本路線の調整を背景に、プーケット、バンコク、済州島といった近距離の海外旅行先が代替先として選ばれ、利便性の高い交通網や高いコストパフォーマンス、成熟した受入体制を武器に需要を取り込んでいる。
一方で、サンパウロ、バルセロナ、ブダペストなど、長距離の海外旅行先の予約も着実に増加している。
春秋旅游の周衛紅(ジョウ・ウェイホン)副総経理によると、長距離の海外旅行ではロシア・ムルマンスクのオーロラ観賞ツアーが最も高い人気を集めている。ロシアが中国国民に対し、30日間の個人ビザ免除を正式に発表して以降、旅行需要は急拡大。政策発表からわずか4日間で、2026年1~2月出発分の予約が急増し、春節前後に出発するムルマンスク関連商品はほぼ完売状態となっている。
年末年始の「体験型消費」を軸に、中国の冬季観光市場は、世代交代とともに新たな成長段階へと移行しつつある。
(中国経済新聞)
