中国のスマートビル管理システム大手ダシスマートの創業者・劉磅氏が当局調査対象に 

2025/11/5 15:51

 11月3日夜、中国のスマートビル管理システム大手「ダシスマート(達実智能、002421.SZ)」は公告を発表し、同社の実質的支配人であり董事長(会長)を務める劉磅(リウ・バン)氏が安徽省潁上県の監察委員会から立件調査および「管護」(一定期間の行動管理措置)を受けたことを明らかにした。

 同社によると、現時点で会社の支配権に変化はなく、他の取締役および経営陣は通常どおり職務を遂行しており、子会社を含む日常業務にも大きな支障は出ていないという。ダシスマートは「引き続き関連法令に基づき、調査の進展を注視しながら適切に情報開示を行う」としている。

■ 創業者でありスマート医療事業を推進

 劉磅氏は1963年10月生まれ。1995年にダシスマートを創業し、以来同社の発展を牽引してきた。深圳市の人民代表(地方議会議員)を務めた経歴もあり、同市のハイテク業界で広く知られる人物である。

 10月6日には安徽理工大学に王陽明の銅像を寄贈し、同大学附属の「第一附属医院(淮南市第一人民医院)」がダシスマートの技術を導入してから1周年を迎えたと紹介。この病院は同社のAIoT(人工知能×IoT)基盤を活用し、後方支援や設備管理の人員を42%削減しながら、エネルギー管理効率を大幅に改善したという。

 また同日、劉氏は合肥工業大学校友企業家連合会の副理事長にも選出されていた。

■ PPP方式で医療プロジェクトを推進

 ダシスマートは2025年中間報告で、PPP(官民連携)方式によって安徽理工大学第一附属医院をはじめ、総投資額約30億元(約660億円)に上る3件のスマートホスピタル事業に参画していると説明している。

■ 株式売却と経営成績の悪化

 今年10月20日から23日にかけて、劉氏は集中取引およびブロックトレード方式で計1562.81万株を売却。持株比率は0.74ポイント減少し、劉氏および一致行動者である「昌都市達実企業管理(集団)有限公司」の合計持株は3億7700万株、発行済み株式の17.78%となった。

 業績面では苦戦が続いている。2025年1〜9月期(第3四半期累計)の売上高は14.73億元(約324億円)で、前年同期比31.36%減。純損益は4.15億元(約91億円)の赤字と、前年同期の4798.8万元(約10億5000万円)の黒字から大幅な赤字転落となった。営業キャッシュフローもマイナス3.88億元(約85億円)と、資金繰り面での課題が浮き彫りになっている。

■ 会社概要

 ダシスマートは1995年に深圳で設立され、2010年6月に深セン証券取引所に上場。自社開発のAIoTスマート管制プラットフォームを基盤に、ビルや病院などの空間管理・エネルギー管理を一括制御する「スマート空間」ソリューションを提供している。

 同社は「社内統治と内部統制の仕組みは健全であり、現時点で事業への重大な影響はない」としながらも、トップの調査が長期化すれば、今後の資本市場や公共プロジェクトへの信用面に影響を及ぼす可能性も指摘されている。

(中国経済新聞)