中国の宅配便収入、初の1兆元超えへ AI・無人機で物流効率も向上

2025/10/20 10:45

 中国の宅配市場が引き続き高い成長を見せている。国家郵政局が10月17日に発表した9月の「中国宅配発展指数」は459.6で、前年同月比3.9%上昇した。うち「発展規模指数」は589.3(同9.3%増)、「発展能力指数」は228.8(同1.9%増)と拡大を続けている。一方、「サービス品質指数」(690.8)と「発展動向指数」(69.3)は前年とほぼ同水準となった。

 今年1〜9月期(第3四半期まで)において、中国の宅配業界は国内消費の高度化を力強く支え、取扱個数はおよそ1450億件、業務収入は初めて1兆元(約22兆円)を突破する見通しだ。

地域間物流が活性化、地方の比重も上昇

 9月単月では、宅配取扱量が前年同月比約12%増、収入は同7%増と堅調な伸びを示した。背景には、地域をまたぐ流通ネットワークの拡充がある。異地間(クロスリージョン)取扱比率は、前年より約1ポイント上昇する見込みだ。

 また、地域間のバランスも改善している。業界は「東の製品を西へ、西の産品を東へ」とする物流構造を推進し、中西部地域の宅配比率が着実に上昇。特に寧夏、貴州、青海、山西などでは、取扱量の伸び率が30%を超えると予測されている。

ネットワーク拡充とAI活用で効率化

 宅配網の整備も進んでいる。山西省晋城、安徽省宿州などで新たな中継拠点が稼働したほか、四川省成都では大型物流園が竣工。広西省桂林では新転送センターが稼働し、設備のスマート化が進展している。

 航空ネットワークも拡大し、業界各社の自社航空便は「鄂州-マイアミ-深圳」や「深圳=シンガポール」などの国際貨物路線を新設。北米・東南アジア向けの輸送能力が一段と強化された。

 さらに、中国本土とマカオを結ぶ新たな宅配サービスも登場。通関、輸送、配送の一体化を進め、「ワンラベル・全行程追跡」を実現。マカオの物流コスト削減や生活利便性の向上にも寄与している。

無人機輸送や「超脳大模型」で新たな段階へ

 企業各社はデジタル技術を活用した新サービスにも積極的だ。無人機を使った長江横断ルートでは、蘇州・太倉港区から上海・崇明までの生鮮配送をわずか15分で実現。長江デルタの一体的な物流連携を象徴する事例となった。

 また、香港では離島向けの初の無人機航路が開設され、従来の海上輸送より60%以上の時間短縮を達成。離島住民の生活や物流効率を大きく改善している。

 AI技術の導入も進む。宅配大手は業界データと人工知能(AI)を融合した「超脳大模型」や「具身知能ロボットアームシステム」を開発。複数のスマートデバイスと人間の協働作業を可能にし、サプライチェーン全体の効率と品質を高めている。

「双十一」商戦控え、旺季入りへ

 国家郵政局の担当者は、「宅配業界は経済回復と内需拡大に重要な役割を果たしている」と述べた。今後は、11月の大型ネット通販セール「11・11(ダブルイレブン)」や「12・12(ダブルトゥエルブ)」など消費シーズンを迎え、取扱量がさらに増える見通しだ。業界全体としては、引き続き安定した成長基調を維持するとみられている。

(中国経済新聞)