中国、2025年夏休みの映画総興行収入2000億円超

2025/09/2 15:00

9月の新学期を迎え、約60日間にわたり盛り上がった2025年の中国映画・夏休みシーズンが終了した。総興行収入は119億6600万元(約2474.14億円)で、前年同期比2.76%の増加。わずかな伸びではあるが、市場拡大の余地を示す結果となった。

首位は申奥監督の『南京照相館』(28億9000万元約597.55億円)。史実に基づく緻密な構成と、王伝君や高葉ら俳優陣の熱演が高く評価され、抗日戦争勝利80周年の記念行事と呼応する作品となった。観客の強い共感を集め、夏休みシーズンを象徴する一本となった。

2位はアニメ映画『浪浪山小妖怪』(14億5500万元 約300.84億円)。『中国奇譚』の短編を基に長編化され、現代社会への風刺や若者の自己表現をテーマに展開。浪漫的な英雄主義を背景に若年層の支持を得て、予想以上の成果を挙げた。

続く『捕風追影』は成龍(ジャッキー・チェン)と梁家輝が共演したアクション大作。公開時期が8月中旬と遅く、興行収入は10億元(約206.76億円)台にとどまったが、緻密なストーリー展開と新鮮なアクション演出により「ここ10年で最も優れた国産アクション映画」との評価を獲得した。71歳の成龍が若手と肉弾戦を繰り広げ、梁家輝が悪役を圧倒的な存在感で演じた点が注目された。

大鵬監督の『長安のライチ』も脚本や演技で一定の評価を得たが、事前に配信されたドラマ版の不振が影響し、観客の期待値が下がったことで興行面では伸び悩んだ。

そのほか、『ロシャオヘイ戦記2』『戯台』なども上映されたが、完成度には差が見られた。管虎監督の『東極島』は映像美が評価される一方、難解な表現や意図の不明瞭さが観客に受け入れられず、議論を呼んだ。

さらに、陳思誠が手がけた『悪意』や、陳可辛監督の『醤園弄:懸案』も公開。後者は章子怡や雷佳音の出演で注目されたが、男女描写をめぐる議論で評価が割れ、興行的には伸びなかった。

『南京照相館』は史実の再現性と俳優の表現力が高く評価された。一方『捕風追影』は、旧作『跟踪』を基にしつつ新しいアクション要素を加え、梁家輝演じる悪役と若手集団「狼子団」の戦闘描写が印象的だった。成龍の健在ぶりも話題となり、観客に強いインパクトを残した。

また、大鵬の『長安のライチ』は役者陣の演技が好評を博したものの、作品全体の評価は事前の期待値に届かず。映像表現の面では、中国映画が国際的なレベルに近づきつつあることを示した。

特筆すべきはアニメ映画の存在感である。『浪浪山小妖怪』『聊斎:蘭若寺』『ロシャオヘイ戦記2』といった国産アニメが好成績を収め、日本の『名探偵コナン』や『ドラえもん』も安定した人気を維持した。『哪吒2』から続くアニメブームは今年も健在であり、観客の支持の広がりを示した。

一方、『東極島』のように芸術性を重視する作品は「難解」「説明不足」といった批判を受け、幅広い観客層の共感を得られなかった。この傾向は観客の嗜好が一層多様化し、作品に対して「共感性」や「理解しやすさ」を求める傾向が強まっていることを浮き彫りにした。

今シーズンは、題材やジャンルの「新旧」よりも、監督や脚本家の工夫が作品の成否を決めることを示した。アクションやアニメといったジャンルが依然として強い一方、観客の多様な嗜好に応えるための新しいアプローチが不可欠となっている。今後は、申奥や大鵬をはじめとする若手・中堅監督たちが、中国映画をさらに成長させていくことが期待される。

(中国経済新聞)