8月20日、『黒神話:悟空』の発売からちょうど1年を迎えたタイミングで、ゲーム科学は多くのファンの予想を裏切る形で、新作『黒神話:鐘馗』のティザー映像を公開した。2025年のケルンゲームズコム開幕夜にて続編の発表が期待されていた中、全く新しいタイトルが登場したことで、大きな話題となっている。

公開された予告編はすでにBilibiliで500万再生を突破し、微博では「#黑神話#」がトレンド1位に浮上。公式によれば、『黒神話:鐘馗』は中国の民間伝承に登場する退魔の神「鐘馗」をモチーフにしたシングルプレイ型アクションRPGで、ビジネスモデルは前作と同様、PCおよび主要コンソール向けに展開される予定だ。現在は開発初期段階で、実機映像はまだ公開されていない。

ゲーム産業アナリストの張書楽氏は、「AAAタイトルは制作期間が長く、『黒神話:悟空』発売からまだ1年しか経っていない現段階で続編を出すのは現実的ではない」と指摘。その上で、「鐘馗」という新テーマに挑戦することで、新しいゲームコンセプトの試行錯誤を行いつつ、“黒神話”シリーズのIP基盤をさらに強化できると分析し、「非常にゲーム科学らしい判断だ」と評した。
同時にオープンした公式サイトでは、なぜ『悟空』の続編ではなく新作から着手したのかについて、次のように説明している。
「天命人の物語が一段落した今、あえて肩の力を抜き、これまでとは異なるゲーム体験や挑戦的なゲーム特性を試したいと考えました。世界観や叙事の面でも新しい試みを行うため、『鐘馗』という題材を選びました」。
一方で、『黒神話:悟空』については「ここで終わりではありません」と明言。CEO馮驥氏も「悟空の伝説は、より完成度の高い形で必ず戻ってくる」とコメントしている。
馮驥氏は発売後の心境について、「20年近く胸に抱き続けてきた夢が実現したことで、一時は興奮したが、その後は“DLCはあるのか、いつ出すのか”という声に包まれ、少し迷いを感じていた」と吐露。チームは当初DLC制作に着手していたものの、ある日、共同創業者の楊奇氏と“まずは新しいことをやってみよう”と意見が一致したという。「未知があるからこそ、挑戦と楽しさが生まれる」として、DLCは着実に進めながら、並行して新作の開発を開始した。

楊奇氏は新作の着想について、「黒い顔に赤い髭、虎を連れた怪人」の夢を見たことがきっかけだったと語り、そこから“虎に乗る鐘馗”というキャラクターが誕生したと明かした。「10年以上にわたり『西遊記』の題材を扱ってきたからこそ、発想を切り替えるタイミングだったのかもしれない」と述べている。
『黒神話:悟空』は昨年の発売以降、国内外で大きな反響を呼び、全プラットフォームでの累計販売本数は3,000万本近いと推定されている。大成功を収めたゆえに、安易な続編には大きなプレッシャーが伴う。張書楽氏は「シリーズIPを長期的に維持するためには、ゲームの基本路線を維持しつつ、品質と内容を拡充することが最善」と述べる一方、新たな題材に挑戦したゲーム科学の姿勢を評価している。
もっとも、『悟空』が6年の開発期間を経て世に出たことを考えると、『鐘馗』がプレイヤーの手元に届くまでには、まだしばらく時間がかかると見られる。
(中国経済新聞)