8月13日付の科創板日報によると、阿里巴巴(アリババ)集団の元パートナーであり、同社在籍25年の蔡景現(さい・けいげん)氏が退職したことが分かった。社内外のアカウント状態は「退隠江湖(俗世から身を引く)」と表示され、アリババ関係者もこの情報を確認している。阿里巴巴公式は現時点でコメントを発表していない。
蔡氏は社内での花名(ニックネーム)を「多隆(ドゥオロン)」とし、「淘宝(タオバオ)第1号プログラマー」と呼ばれる存在だ。2000年に杭州大学生物学系の修士課程を修了後、当時は無名だった阿里巴巴に入社。2003年には馬雲(ジャック・マー)氏により淘宝プロジェクトチームへ招かれ、他の2人のエンジニアと共にわずか1カ月でゼロから淘宝サイトを構築、取引システムやプラットフォームシステムを完成させた。

淘宝初期、蔡氏は卓越した技術力を発揮した。2003年から2007年まで、淘宝の検索エンジン開発・運用を単独で担い、それに加えて取引システムやプラットフォーム構築も主導。未経験の分野でも短期間で問題解決できる能力を持ち、同僚からは「故障対応の神」と称された。阿里巴巴の首席人事責任者を務めた彭蕾氏も「彼はコードを書き始めると入定(深い集中状態)に入る人物」と評している。
2014年4月、蔡氏は阿里巴巴合伙人(パートナー)推薦委員会の審査を通過し、同年9月に正式就任。2017年には胡潤(フージュン)富豪ランキングに資産26億元(約540億円)で登場した。
しかし、2023年の阿里巴巴集団による「1+6+N」構造改革の過程でパートナー職を離任。最盛期には38人いた阿里巴巴パートナーは、2025年度の最新年報によると17人にまで減少し、上場以来の最少となった。今回の改編では9人が退任しており、「十八羅漢」の彭蕾氏や戴珊氏、8年間CEOを務めた張勇氏も含まれる。現在残る創業期メンバーは馬雲氏、蔡崇信会長、呉泳銘CEO、蒋芳CPOの4名のみ。残り13名は電商、クラウド、AIなどの第一線で事業を率いる責任者で、最年少は39歳の蒋凡・電商事業群CEO。さらに80年代生まれのパートナーも4人おり、クラウド部門の王磊SVP、蒋江偉VP、呉澤明CTOらが名を連ねている。
今回の蔡氏退職は、アリババ創業期を支えた技術者の一つの時代の終わりを象徴する出来事といえそうだ。

アリババ本社ガーデン景色
(中国経済新聞)