中国の不動産大手「中国恒大集団」の創業者であり、かつての会長である許家印氏の元妻、丁玉梅氏が、ロンドンの高級住宅プロジェクト「The Thames City(泰晤士城)」において、合計33戸の高級アパートメントを購入していたことが明らかになった。これは、2025年1月に提出された英国内の裁判所文書に基づき、米ブルームバーグ通信が報じたものである。

報道によれば、物件の購入は2022年9月に行われ、総額は約4,980万ポンド(約90億円)に達するとされている。これは、中国当局が許家印氏に対して、個人資産を用いて債務返済を行うよう強く要請していた時期の翌年にあたる。
登記記録によると、これらの物件は英領バージン諸島(BVI)に拠点を置く5つの法人を通じて取得されており、資産の実質的所有者が丁氏であることが判明している。裁判所提出資料では、丁氏が英系不動産サービス大手ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)を代理人として雇用し、物件の管理および賃貸運用を任せていることも記されている。

恒大創業者・許家印氏と元妻丁玉梅氏
また、丁氏自身が現在居住しているロンドンのアパートメントの評価額は約540万ポンドで、彼女は2人の子供と2人の孫とともに生活しているという。
丁玉梅氏は、中国恒大の創業初期からのキーパーソンとして知られており、長年にわたって許家印氏と夫婦関係にあったが、現在は離婚が確認されている。報道によると、彼女が世界各地に保有する総資産は3.5億米ドル(約550億円)を超えるとされている。

彼女が所有する資産の中には、2020年に購入したロンドン中心部の高級住宅(当時、同地域での取引価格の記録を更新したとされる)や、カナダ・バンクーバーの不動産も含まれている。
中国恒大集団は、近年深刻な債務危機に直面し、中国国内外で巨額の債務不履行が相次いでいる。2023年には、香港で恒大の清算命令が出され、事実上の破綻状態に陥った。そうした中、創業者一族の個人資産がどのように移動・保全されているかについて、当局や投資家の関心が高まっている。
今回明らかになったロンドン不動産の大量購入は、資産保全・資産移転を意識した「資産逃避」としての側面が指摘されており、丁氏の行動はさらなる議論を呼ぶ可能性がある。
(中国経済新聞)