中国最大のコメントアプリ「微信」(WeChat)を運営しているテンセントの創業者・ポニー・マー氏は、極めて控えめな実業家である。アリババを立ち上げたジャック・マー氏とは異なり、全国政治協商委員を務めていることから、滅多に取材を受け付けず、またフォーラムなどでの発言も拒否している。
ただ、そのテンセントは2022年第一四半期、コロナの影響やゲームに対する当局の規制などにより、利益が52%落ち込んだ。ポニー・マー氏はこれに不満を募らせている。
5月20日午前、環球時報の元編集長である胡錫進氏が、個人開設のメディア「胡錫進観察」で、「市場の自信を戻すには驚くような策を講じる必要がある」とのコメントを発表し、これについてこの日夜、別の個人メディアで「胡錫進氏以外は誰も経済に関心がない」とのコメントが発表された。
ポニー・マー氏はこのコメントを、5月21日の深夜3時29分にウィーチャットのモーメンツに掲載したうえ、そのコメント中に書かれた次のような一節をツイートした。
「経済に対するネット上でのコメントは、『企業は倒産してもいいがリストラはダメ、残業もダメ』、あるいは『中国経済どこじゃない』といったもの。わかっていないし関心もない。唯一関心があるのは、中国経済はチップ、そして俗に言うハードテクノロジーということ。衣食住や移動なんてありきたりでどうでもいい。もちろん、弁当の配送が10分でも遅れたらもうボロクソ。配達員を恐ろしく叱りつける」
ポニー・マー氏はこれに、「実に言い得て妙だ」と付け加えている。
かねてから控えめだったポニー・マーのツイートは、たちまちにしてスクリーンショットされ、SNSに拡散していった。これに対してすぐに「テンセントは罰が当たる」とのコメントも出た。
2年前、ジャック・マー氏が上海のバンドで行われた金融サミットで、切れ味の鋭い演説をした。チャレンジ精神満点で創業者たちを次々と叱咤激励してきたこの若きリーダーは、これがきっかけでフェードアウトしていった。
ジャック・マー氏だけでなく、実業家の引退が相次いでいる中国で、経営の第一線に踏みとどまっているポニー・マー氏の立ち振る舞いは、中国のIT業界におけるバロメーターとなっている。今回のツイートが波紋を呼んだことで、彼は一段と言葉を慎むようになるのではないか。
(中国経済新聞)