北京網易伝媒は4月25日、法人、総経理、役員であった丁磊氏が退任すると発表した。一般的な登記変更であると称してはいるが、中国のポータルサイト大手「網易」を立ち上げた同氏が51歳の若さで一線を退くことに、驚きの声が上がっている。
中国ではこの3年間で、IT界の大物のうちジャック・マー氏、張一鳴氏、劉強東氏など11人が一線から離れている。
丁氏の去就などはさておき、ITの大物が相次いで退く傾向が鮮明となっているが、ここ数年でモバイルネットにおける利益が薄れ、会社間の競争が激化する中、今を盛りとしている大物が示し合わせたかのように続々と「引退」する理由は何だろうか。
マー氏は、中国のビジネスITにおけるトップランナー的な存在であった。1999年にアリババを立ち上げ、十数年の努力を経て2014年に過去最高額となる250億ドルでIPO上場を果たした。そして2019年にアリババの会長職を離れ、引退した。
また、拼多多のCEOであった黄崢氏も、設立からわずか5年ほどであった2020年7月に退任した。黄氏は、2018年7月に同社を率いて市場デビューを果たし、会社の上場にあわせて資産を急激に膨らませ、「2018フォーチュン長者番付」に拼多多の上場後初めてランクインした。資産総額950億元の13位であった。
意気揚々であったマー氏や黄氏などの勇退とはあべこべに、不利な状況から退任を余儀なくされる人物もいる。
アリババと並ぶ通販サイトの大手である「京東」を立ち上げた劉強東氏は、2018年9月にアメリカのミネソタ州で性的暴行の嫌疑がかけられてから失脚状態になり、京東の株価は3か月間で1000億元も落ち込んだ。その後、劉氏はメディアの前から姿を消し、2022年4月に徐雷氏が京東グループの最高経営責任者に就任した。つまり京東が経営のプロに委ねられる会社となったのである。
IT業界は当初、抜群のスキルや根性を備えたカリスマたちが会社を牽引する中でイノベーションを果たし、ビジネス上の神話を作り上げていった。しかし経営が安定するにつれ、さらなる利益を求めて、創業者との身分を引っ提げて世間で影響力を維持するカリスマもいる中、中国の政治やビジネス環境の変化を受け、十分にたくわえた資産をもって一線を退き、経営を離れて悠々自適の生活を求めることもある。こうしてITの大物の引退劇が生まれるわけである。
(中国経済新聞 山本博史)