日中平和友好条約締結45周年を記念して「張濱二胡音楽会2023東京公演」が8月17日、東京・上野の国重要文化財「旧東京音楽学校奏楽堂」で開催された。奏楽堂で日本在住の中国人演奏家による音楽会が開かれるのは今回が初めてで歴史に新たなる1ページが刻まれた。
張濱(チャン・ビン)さんは、国内外で活躍する中国の著名な二胡奏者。遼寧省出身で7歳から二胡を学び18歳の時、中国でプロデビューを果たした。1992年、周囲の反対を押し切り国家公務員の演奏家生活を捨てて来日。愛知県立芸術大学などで計9年間学び、その間、愛知大学の二胡部でボランティア指導を続けていた。そして、熱心に二胡の練習をする日本人大学生たちや演奏会で涙を流して「生きていてよかった」と手を握ってくれた年配女性との出会いによって、二胡は言葉を超えて日本の人々と絆を結ぶことができると感動し、日本で二胡の道を歩む決意をする。2000年、日本初の二胡芸術ビザを取得、2005年の愛知万博ではEXPOドームで二胡史上初となる外国人122名による大合奏を披露。その後もNHKや中国中央電視台(CCTV)で演奏会が放送されるなど、現在まで日中交流親善の音楽活動を国内外で幅広く行っている。また昨年の日中国交正常化50周年記念慶典では、娘の張日妮(チャン・ヒナ)さんや東儀秀樹さん等とともに締結記念日コンサートに出演した。
本音楽会では、張さんが作曲した『絆』や『大地の歌』、『風月同天』の他にも秦派の二胡名曲『陝北抒懐』、二胡独奏曲『万馬奔騰』、モンゴル民族の祭りで行われる競馬をテーマにした『賽馬』など12曲が、佐藤光さんのチェロ、宮下はる美さんのピアノ、鈴木純子さんの琴とともに演奏された。そして、かつて奏楽堂で演奏したこともある作曲家・滝廉太郎の没後120年を記念して『荒城の月』が二胡で奏でられた。
音楽会開催にあたり、中華人民共和国駐日本国大使館の陳諍公使参事官は「中国文化の激しい移り変わりが繰り返されてきた中、二胡は貴重な精髄の一つとして、長く中日両国民に愛されてきました。張濱先生の長年の尽力により中国伝統文化の二胡が日本で更に広く知られるようになりました。中日平和友好条約締結45周年に開催されるこの公演は、大変深い意義があります。この公演が日本の観客にとって、卓越した伝統文化芸術の盛宴となる事を期待し、中日両国民の相互理解と友誼の促進に貢献すると確信しております。最後に、公演のご成功を記念し、お祝いの言葉と致します」と祝辞を述べた。
張さんは、今年で来日31年目を迎える。二胡の演奏だけでなく2008年よりNPO法人「チャン・ビン二胡演奏団」を創設し、日中文化交流に関する事業を行い二胡愛好者と中国文化への理解者の増進を図ることにより、市民レベルでの「日中友好」の発展に努めてきた。そして2015年には、こうした張さんの日中交流活動に対する貢献を称え小原総領事より「在外公館長表彰」が授与された。
音楽会のパンフレットには、「私の人生は日本と中国が友好だからこそ導かれてきました。これからの未来も平和友好であるように、二胡の絆を世界に伝えていきたいです」と綴られている。二胡が日中両国民の心の「絆」となり、そして平和を象徴する音楽が日中友好の美しい「音色」となることを願い、今後も張さんの演奏は多くの日本人へと届けられる。
(中国経済新聞)