2億人のアルバイターを抱える中国

2022/10/12 13:00

中国では今、「フレキシブルワーク」、すなわちアルバイトがほぼ選択肢の一つになり切っている。

中国国家統計局によると、2021年末現在で2億人のフレキシブルワーカーが存在しており、9億人近い労働人口のうちおよそ5人に1人以上の割合となっている。

メディア「每日人物」が実施した「アルバイト100種類の方法について」というアンケートで、様々な話が描かれている。誰でも生活苦に陥る可能性があり、そこでアルバイトはちょうど一息つくものとなる。受験料稼ぎが目的の人、振り込め詐欺の損害分を取り返す人、何度も大学院受験に失敗してすねかじりできなくなった人。さらには、事業に失敗して自宅から数百キロ離れた工事現場で働く37歳の父親もおり、高さ10数メートルのはしごの上で汗水を垂らし、2人の子供のことを思うと涙がこぼれるという。

驚くことに、集められた400件以上の体験談のうち半分以上が大学新卒者のものであった。厳しい就職戦線で理想と現実のはざまに苦しみ、とりあえずアルバイトを始めたのである。介護を専攻したけれど職がなく、毎日6時間の PCR検査で月に2000元をもらい、経験を積んでいずれ病院で勤務したいという人。ミュージカルを専攻しながら、好きなことをしたい気持ちも拭えず劇場でボランティアとして毎日入場者のチェックをする人。また、海外で大学院を出て、語学力を生かして月収7000元の海外旅行電話窓口をしている人もいる。

さらに、シーメンスのエコー検査モデルがゲームプレーヤーとなり、文化財の補修を学んだ女子大生がオークションハウスの電話窓口をし、通販会社の幹部がフラワーデザイナーに転身、ばっちり着飾ったモーターショーの男性コンパニオンはまかない付きで1日400~500元、中関村のマイクロソフト商品マネージャーが技術情報サイトで英文執筆、といった具合である。

アンケートの中から、すべての人がやるせなさを抱えているわけでもないことがわかる。本業をするより自ら選んだ仕事の方が、一番やりたかったこととして「本来の自分」を表現できる、ということもある。例えば、ある有名な会計事務所で5年間働いたのちに退社してアルバイターになったが、それは単に山登りの最中に電話を受けずに済むためという。「固定給はないけれど、待望久しかった自由を手に入れた」と言う。また、施設に住む子供たちを楽しませようと、ピエロになって風船を恐竜や草花の形に変えるバルーンアートをやりたい、という女性もいる。「風船をいじっている時こそが自分本来の姿なの」と言う。フリスビーが好きな若者は教育関連の仕事を辞めてプロのコーチになった。1回のレッスンで250-300元程度しか手に入らないが、人生を楽しんでおり、アルバイトを本職にして趣味を充実化させた。北京で日々不動産契約の仕事をしていたけれど、不動産バブルの一員が嫌になって、ペンギンが見えるオーストラリアの小島に行き、イチゴ摘みをしている女性もいる。「楽しみを追うのは大変。だからその意味を求めるしかない」と言う。

アルバイターが追い求めるもの、つらかったことや難しかったこと、それは100人に聞けば100通りの答えが出る。

(中国経済新聞)