「五一」連休期間中、中国を訪れる外国人観光客の姿が各地で目立った。ポーランド出身のアントニ(仮名)は家族10人で中国を訪れ、上海を起点に義烏、西安へと巡る約2週間の旅行を計画している。こうした大型連休に合わせた訪中旅行は増加傾向にあり、従来の主要都市だけでなく、特色ある中小都市にも関心が広がっている。
実際、現地取材では、訪日客ならぬ“訪中客”の新たな行動様式が浮かび上がった。その一つが、入浴施設での宿泊体験だ。ドイツから来たヴィヴィアンさん夫妻は、今回が2度目の中国旅行。AIを活用して旅行計画を立てる中で、上海の温浴施設を知り、実際に訪れた。
「入浴や温泉だけでなく、飲食、映画、カラオケ、さらにはワークスペースまである。ドイツでは見たことのない消費形態だ」と語る。宿泊費の高いホテルに比べ、追加料金数十元で夜を過ごせる点も魅力となっている。上海・五角場の温浴施設では、欧州や韓国からの観光客の利用も目立ち、若者を中心に“滞在型レジャー”として定着しつつある。

一方で、浙江省義烏市も人気の目的地として存在感を高めている。世界最大級の卸売市場である義烏国際商貿城には、観光客と商用客が混在する独特の光景が広がる。アントニ一家も観光を主目的としながら、衣料品や玩具の購入を楽しみにしているという。
現地では、従来の大量仕入れ中心のビジネスモデルに変化が見られる。多くの店舗が小口販売や小売に対応し、「1点から購入可」といった表示も一般的になった。文具などは卸価格に近い水準で購入できる場合もあり、観光客にとって“買い物のしやすさ”が向上している。
また、外国人観光客の間では値引き交渉も広がっている。エジプトから訪れたアリ(仮名)は、中国風の扇子をめぐり交渉を重ね、5元の商品を3元で購入。「土産として最適で、価格も魅力的」と満足げに語った。

こうした動きの背景には、“観光とビジネスの融合”がある。業界ではこれを「稼ぐ観光(いわゆる“搞钱式旅游”)」と呼び、観光の合間に少量仕入れを行い、自国市場での販売可能性を探るスタイルが広がっている。ビザ免除措置の拡大も追い風となり、欧州を中心にこの傾向が強まっている。
データ面でも、インバウンド需要の回復は鮮明だ。旅行予約サイトによると、「五一」期間中の人気都市は上海、北京、広州、深圳。一方で、三亜や揭陽への訪問者数は前年比で約2倍に増加し、西安や義烏も高い伸びを示した。国別では、カザフスタンからの訪問者が5倍、フランスが2倍、英国も倍増するなど、多様な市場からの流入が確認されている。
さらに、旅行予約プラットフォームの統計では、インバウンド関連商品の予約は前年同期比で55%増加。団体旅行も30人規模から少人数のカスタマイズ型まで幅広く、上海での平均滞在日数は2~3日程度となっている。南京東路や新天地、田子坊といった商業エリアや、キャラクター雑貨ブランドへの関心も高い。
地方都市の取り組みも進む。義烏では2025年の入境商旅客数が68万人を超え、前年比約20%増。ホテルでは外国人向けのネット環境整備や外貨対応ATMの設置など受け入れ体制の強化が進められている。
“体験”と“消費”、そして“ビジネス”を横断する新たな旅行スタイルが、中国のインバウンド市場に変化をもたらしている。連休を契機に顕在化したこの流れは、今後の観光産業の方向性を示す一つの指標となりそうだ。
(中国経済新聞)
