パナマ最高裁判所は1月29日、パナマ運河の太平洋側に位置するバルボア港(Balboa)と、大西洋側のクリストバル港(Cristóbal)の運営契約について、憲法に違反すると判断した。両港の運営は、香港の実業家・李嘉誠(リー・カーシン)一族が支配する長江和記実業(CKハチソン・ホールディングス)傘下のパナマ・ポーツ・カンパニー(PPC)が1997年から担ってきた。契約は2021年に25年間延長されていたが、パナマ会計監査院が未払い金や手続きの不透明さ、国家に損失を与えた可能性などを指摘したことを受け、最高裁が無効と判断した。
これを受け、パナマ海事管理局(AMP)は1月30日、新たな長期運営事業者が決定するまでの暫定措置として、デンマークの海運大手A.P.モラー・マースク(マースク)傘下のAPMターミナルズを、両港の暫定管理者とする技術的移行計画を発表した。APMターミナルズも同日、運営の継続性確保と、地域および国際貿易へのリスク低減を目的に、暫定管理を引き受ける意向を表明した。
この措置は、パナマ運河という国際物流の中枢機能を中断させないための緊急対応である。マースクは世界最大級のコンテナ船会社で、中国・米国双方と長年にわたり協力関係を築いており、中国本土でも大規模な物流投資を行ってきた。地政学的に敏感な状況の中で、中国系企業の影響力を抑えつつ、米国の関与を強めたいトランプ政権の意向に配慮しながら、関係各方面が受け入れやすい「中立的な選択肢」として機能しているとの見方もある。
ムリノ大統領は今回の判断について、「国民の資産を守る上で極めて重要な決定だ」と評価し、運河運営の継続性を強調した。一方、ルビオ米国務長官は判決を歓迎し、在パナマ米国大使館も「法の信頼性向上と安全保障の強化につながる」との声明を出した。これに対し、香港側およびCKハチソンは強く反発しており、法的措置を取る可能性を示唆している。
今回の動きは、パナマ運河を巡る米中対立を象徴する事例の一つであり、グローバル・サプライチェーンの安定性にも直結する。マースクによる暫定運営がどこまで円滑に進むのか、また将来的な再入札や新たな運営契約がどのように決着するのかが、今後の注目点となる。
(中国経済新聞)
