中国国家統計局は1月17日、2024年の中国の国内総生産(GDP)は前年比5.0%増だったと発表した。
国家統計局の康義局長は同日、中国国務院報道弁公室による記者会見で2024年の国民経済について、「外部からの圧力が強まり、内部の困難が増えるという複雑で厳しい情勢に直面する中で、全体として安定を保ち、安定の中で前進した。経済と社会の発展の主要目標と任務を順調に達成した」と述べた。
年間GDPの速報値は134兆9084億元(約2840兆円)で、物価変動要素を控除した数値で前年より5.0%増加した。
産業別に見ると、第一次産業は前年比3.5%増の9兆1414億元(約194兆円)、第二次産業は同5.3%増の49兆2087億元(約1040兆円)で、第三次産業は同5.0%増の76兆5583億元(約1620兆円)だった。
経済統計の対象となる一定規模以上の企業全体による通年の工業増加値は前年比5.8%増で、装備製造業では全体を1.9ポイント上回る同7.7%増、ハイテク製造業では3.1ポイント上回る同8.9%増でした。また、通年のサービス業の増加値は前年比5.0%増でした。社会消費財小売総額は前年比3.5%増の48兆7895億元(約1040兆円)で、ネット小売額は同7.2%増の15兆5225億元(約329兆円)だった。
康局長は、2024年の経済推移は総合的に見て安定しており「質の高い発展が推進された」などと述べた上で、「ただし、国内需要が依然として不足しており、一部企業は経営難に陥った。経済は依然として多くの困難と試練に直面している」と説明した。
とはいえ、2024年の実質GDPは、1年前と比べてプラス5.0%となり、2023年の5.2%からは減速したが、政府が目標としていた「5.0%前後」は達成した。一方で、不動産開発投資額は1年前と比べてマイナス10.6%と不動産不況が長期化しているほか、節約志向も高まる中、百貨店、スーパーの売り上げやインターネット販売を合計した社会消費品小売総額(小売売上高)は前年を3.5%上回ったが、前年の7.2%の増加から伸び率は大きく縮小した。全体の1割を占める飲食店収入が5.3%伸びた。
また、不動産開発投資は、マイナス10.6%と、引き続き大幅な落ち込みとなった。
国家統計局が12月16日発表した新築住宅の販売面積によると2024年1〜11月はピーク時の21年同期から半減した。住宅在庫も膨らんでおり、政府による追加支援策の効果は見えない。
さらに2024年12月の新築の住宅価格指数は、主要な70都市のうち、43都市で11月から下落した。下落した都市の数は11月の発表から6都市減ったものの、依然として主要都市の6割以上で下落していて、不動産価格の低迷が続いている。
中国では不動産不況の長期化などで経済の低迷が続き、地方政府の収入の在り方にも影を落としている。中国東北部にある遼寧省の盤錦は、かつて石油の産出によって急速に発展したが、産出量が大きく減少。新型コロナの感染拡大に不動産不況が追い打ちとなり、市の中心部の繁華街では、人通りも少なく、空き店舗が目立つ。
NHKの報道によると、地方では罰金が重要な財源になっている。
不動産不況の長期化で、主要な財源だった土地の使用権の売却収入が落ち込み、罰金が重要な財源になっているという指摘が出ている。
盤錦では、2023年の罰金収入が前の年から15.5%増えて、13億2900万元余り、日本円にして280億円余りにのぼった。市民1人当たり年間2万円以上を徴収したことになる計算で、罰金が市の収入の10.2%を占めた。
市の中心部には、交通違反や露天商の無許可営業などを取り締まる「都市管理法律執行」と記された車両が複数見られたほか、罰金の警告や法律の順守を促す看板も数多く見られた。
中国財政省によりますと、国全体でも去年1月から11月までの罰金などの収入は前の年から17%増え、10月と11月は、前の年の同じ月と比べてそれぞれおよそ40%増加した。
罰金の急増は、企業や消費者のマインドをさらに冷え込ませかねず、李強首相は去年12月「地方政府による罰金収入の異常な増加を注視している。問題があれば、速やかに是正すべきだ」と述べ警戒感を示している。
景気の減速傾向が鮮明になって、中国政府や中国人民銀行(中央銀行)は24年になって相次ぎ景気対策が相次いで打ち出された。
5月に住宅ローン金利の下限を撤廃し、9月には融資済みのローン金利を新規のローン並みに下げると発表した。いずれも消費者の負担を軽くして販売を促す狙いだ。10月には地方政府が優良な住宅開発案件を選定して銀行融資を促す制度を拡大し、不動産開発会社の資金繰りを支援している。一部都市では住宅販売の値下げ制限を解除し、企業に大幅値下げを容認し始めた。
10月には財政省が特別国債を発行して大手国有銀行の資本増強を行うとともに、財政出動を伴う大規模な景気刺激策に踏み切る方針を示した。
さらに11月には、不動産不況で悪化している地方政府の財政を支援するため、総額10兆人民元、日本円でおよそ215兆円に上る新たな対策を打ち出した。
そして12月、中国共産党が金融政策について、これまでの中立的な姿勢から14年ぶりに「適度に緩和的」に転換することを決めたほか、積極的な財政出動で景気を下支えする方針を示した。
ただ、最大の懸念材料となっている不動産価格の下落には歯止めがかかっておらず、内需の停滞が続いている。
中国経済を取り巻く環境は厳しい。人口減少と少子高齢化が加速し、24年末の総人口は14億828万人と3年連続で減少した。23年にゼロコロナ政策が撤廃され婚姻数が増えた影響で出生数が8年ぶりにプラスとなったものの、増加傾向が定着するとの見通しは少ない。
人口全体に占める65歳以上の比率は15.6%と前年から上昇した。消費性向の高い若年層の減少が消費のさらなる減退を招き成長の重荷となる。15〜64歳の生産年齢人口も13年をピークにマイナス傾向だ。働き手世代が減れば経済成長を支える労働力の不足が一段と深刻になる。
それに加え、経済をけん引してきた輸出も、アメリカのトランプ大統領の就任で米中の貿易摩擦が激化すれば影響は避けられず、先行きには不透明感が広がっている、25年の経済運営には逆風も予想される。
(中国経済新聞)