2025年に世界で飛躍が期待される技術は?

2025/01/7 07:30

世界は今、量子コンピューティングからバイオテクノロジー、そして宇宙探査からエコ型エネルギーなど、かつてない勢いで科学技術が進歩している。新たな1年も多くの注目すべき出来事が起こりそうである。

量子技術が商業化へ

2024年6月、国連は2025年を「国際量子科学技術年」とすることに決めた。量子科学とその応用の大切さについて一般の認識を高めることを目的としたものである。量子技術は今のところ大規模な商業化には至っていないが、研究開発や商業化への道のりは急速に進んでいる。

アメリカのグーグルは先ごろ、30年にわたり問題視されていた量子エラー問題を大幅に削減し、基準テストで極めて高度な性能を示した新型の量子チップ「Willow」を発表した。同社のスンダー・ピチャイCEOは、量子コンピューティングロードマップへの重要な一歩だと述べている。

同じく量子エラー問題について、アメリカのマイクロソフトとアトム・コンピューティングが先ごろ共同で、レーザーを使って中性原子を固定させることで24個の論理量子ビットを量子もつれ状態にすることに成功したと発表した。両社は2025年に、これをベースにした商用量子コンピューターを発売する予定である。

量子技術はまた、他の技術分野でも大きなけん引役となっている。量子コンピューティングは、暗号学について、サイバーセキュリティ-における従来の暗号化技術の課題に対応してポスト量子暗号学の発展を促したほか、製薬業界ではこれまでにない規模で分子間の役割をシミュレーションし、研究や開発の効率を引き上げている。

遺伝子治療の応用開拓

薬の研究開発について、「ハサミ遺伝子」とも言われるCRISPRを代表とするゲノム編集技術の利用が進んでいる。遺伝情報を持つDNAを正確に修正することで病気になる恐れのある遺伝子の変異を食い止めるものである。

イギリスとアメリカで2023年11月から12月にかけて、鎌状赤血球症や輸血依存型βサラセミア(地中海貧血)の治療用となる、CRISPRによる体内ゲノム編集療法Casgevyが、世界に先駆けて相次ぎ発売された。世界に目を向けると、CRISPRに基づく体内ゲノム編集療法について、B型慢性肝炎、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー、加齢黄斑変性などを対象に臨床実験が行われている。2025年は、CRISPRを使った療法が病気の治療に十分に役に立つようになると思われる。

宇宙開発

2025年は、各国で宇宙開発の機関や会社がそれぞれ探査計画を打ち立てている。この1年は、日本の民間企業「ispace」が月面着陸に挑戦し、アメリカの民間企業「インテュイティブ・マシーンズ」も月の南極へ着陸船を打ち上げるなど、月への往来が頻繁になりそうである。

宇宙の探査については、アメリカ航空宇宙局(NASA)が2025年2月に「宇宙の歴史を調べる分光測光器・宇宙の再電離と氷の探査機」(SPHEREx)を打ち上げる。ミッションは2年間にわたり行われ、可視光スペクトルと近赤外線スペクトルを測定して4.5億以上の星団や銀河系内の1億以上の恒星データをマッピングする。

さらに、太陽風の研究に向けた打ち上げが2件予定されている。中国科学院と欧州宇宙機関(ESA)との協力事業「太陽風・磁気圏相互作用パノラマイメージング衛星」(SMILE)では、太陽風と地球の磁気圏の相互作用を研究し、またNASAの「コロナと太陽圏観測偏光計」(PUNCH)では太陽の大気を深く観測し、太陽系内へのエネルギーの流れを探査する。

エコ型術で気候問題に対応

気候変動問題への対応が迫られている世界で、2025年はエコ型の技術が取り組みの中心になると見られている。技術の進歩に伴い、太陽光、風力、水素など再生可能エネルギーの効率や経済性が高まって、エネルギーのエコ化が一段と進むものと見られる。

AIの急速な普及によりエネルギー需要が一段と高まり、テクノロジー大手が原子力発電に目を向け始めている。2024年はグーグル、マイクロソフト、アマゾンなどが原子力発電事業者に対する出資や電力の購入を発表した。国際エネルギー機関(IEA)の先ごろの予測では、2025年は原子力による全世界の発電量が過去最高となるという。小型のモジュール化原子炉など技術的な革新により、安全で効率の良い方策が実行されるだろう。

2025年11月にはブラジルで「国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議」(COP30)が行われる。気候変動対策における資金問題の解決が望まれている。

AI化続く

AI(人工知能)は今、世界の経済や産業、社会の変化をもたらす原動力になっている。2025年は医療、教育、交通などでさらに浸透し、仕事や生活の中で一般的なツールになりそうである。

この中で、画期的な存在となるのがマルチモーダルAIである。テキスト、画像、音声、動画など、2つ以上のデータを統合し、より自然でダイレクトなマシンとのやりとりを果たすものである。グーグルのクラウドコンピューティング部門が先ごろ発表した「2025年AIビジネストレンド」によると、2025年は企業が導入するAIの中でマルチモーダルAIが中心的な存在になり、世界の市場規模は24億ドルになるという。

こうした変化を受け、業界内ではAI技術の有効的な統合の在り方に目が向けられている。この点について、AIを利用して環境を認知し意思決定やタスクの実行ができるエージェントが登場している。アメリカのガートナーは、このエージェントを2025年のテクノロジーにおける主な取り組み上位10件の1つに挙げており、2028年には日常活動における意思決定のうち15%がエージェントにより果たされると見ている。

(中国経済新聞)