日系自動車メーカー、中国で「存亡の危機」に

2024/06/3 14:30

日系自動車メーカーが今、中国市場でこれまでにない苦境に立たされている。大手各社が発表した最新のデータを見ると、今年4月の中国での販売台数は、トヨタ自動車が2023年4月より27.3%減、ホンダが同じく22.2%減、日産が10.4%減となっている。

ホンダは2024年度の中国での販売台数を13%減と予想しており、ピークだった2020年に比べて40%も落ち込むことになる。

中国自動車工業協会がまとめた中国市場での日系車のシェアについて、2020年には23.1%であったが、2024年1-4月には12.2%まで減った。一方で中国メーカーのシェアは38.4%から60.7%まで伸びている。

中国でシェアを落としているのは日系車だけでなく、ドイツ系も2019年の24.2%から2023年には17.8%に、韓国系も同じく3.1%から1.6%に減っている。

日系車はもはや中国で、「存亡の危機」に立たされている。ここまで追い込まれた理由について、まず中国は政府の後押しを受けて電気自動車(EV)が急速に普及しており、これを受けガソリン車の生産や販売が急減している。次に日系車はEVの開発や製造が遅れていて、いまだに中国でガソリン車を中心とした生産や販売をしていることから、販売台数が急降下している。

日本経済新聞は5月15日、中国で売上不振となったホンダが、現地の正社員の中から好条件で1700人の早期退職者を募集すると報道した。この割合はホンダの中国合弁企業における全正社員数の14%にあたる。またこの前に、三菱自動車が中国での生産停止を発表している。

また日産自動車は、2023年の中国での生産量が24%減の79万3000台で、2018年の156万台から半減した。2024年は生産をさらに30%減らす予定である。

日系各社は、世界的には販売台数を大きく落としてはいないが、中国はなにしろ主力市場であり、全世界の販売のうち中国の占める割合は、トヨタがおよそ30%、ホンダが20%、日産が20%である。また会社全体の利益については、これら大手3社は中国の占める割合が1-2割となっており、中国での売上減が続くとそのまま業績に響く。よって、そう簡単に中国に「別れを告げる」わけにはいかない。

ホンダはすでに、2025年に発売するEVにファーウェイが開発したディスプレイを導入することを決めている。中国の技術を使って中国市場での復活を探るものである。

また日産は、東風汽車集団との合弁である完成車工場8か所について業務調整をはかり、東南アジア向けの生産基地に改めていく。

中国での存在感が弱まっている日系車の中で、トヨタなどは北米や東南アジアでの生産力をアップして現地での販売拡大を続ける形で、中国での落ち込み分を補っていくと表明している。

中国のEV普及にどう対応するか。

ホンダの三部敏宏社長は5月16日の記者会見で、「長期的に見てEVは着実に伸びていくので、強力な事業基盤を築かなければいけない」と述べた。EVやソフトウェアの開発へ2021-2030年の10年間で10兆円(およそ5000億元)を投資するという。

またトヨタも、2023年までにEV関連に対して5兆円(約2500億元)の追加投資をすると発表しており、日産もここ5年間で2兆円(約1000億元)の追加投資を発表した。大手3社はEVの開発へ投資を拡大することで、中国の新興EVメーカーに肩を並べ、販売台数の確保を目指していく。

トヨタの佐藤社長は5月の年度決算報告会で、中国問題について「しのぐことが数年続くことになる」と述べている。

では、トヨタが中国で起死回生を果たし中国メーカーに奪われたシェアを取り戻すにはどうすべきか。佐藤社長は明言をしなかった。ただし今後、EVの開発や生産を強化せず、生産コストや販売価格をできる限り低減しないようであれば、中国での勝算が一段と薄れることになりそうである。

中国は世界最大の自動車市場である。2023年の自動車販売台数は史上初めて3000万台を突破して約3009万台となり、15年連続で世界一となった。中国に次ぐ市場規模のアメリカ市場が約1560万台)ですから、じつにその約2倍となる規模だ。

このうちEVの販売台数は約669万台とこれも世界最大で、市場全体に対するEV販売比率は約22%に達す。また、プラグインハイブリッド車(PHEV)の販売台数も約280万台と伸びており、EVとPHEVを合わせた市場占有率は約32%。中国で販売されている車のうち約3台に1台がEV・PHEVということになっている。

中国は世界最大の自動車市場である。2023年の自動車販売台数は史上初めて3000万台を突破して約3009万台となり、15年連続で世界一となった。中国に次ぐ市場規模のアメリカ市場が約1560万台)ですから、じつにその約2倍となる規模だ。

このうちEVの販売台数は約669万台とこれも世界最大で、市場全体に対するEV販売比率は約22%に達す。また、プラグインハイブリッド車(PHEV)の販売台数も約280万台と伸びており、EVとPHEVを合わせた市場占有率は約32%。中国で販売されている車のうち約3台に1台がEV・PHEVということになっている。

なぜ中国市場ではこれほどまでにEVが消費者の支持を集めているのでしょうか。その理由のひとつとして「低価格でコンパクトなEVが数多く用意されている」という点が挙げられる。

中国の低価格EVでは、2020年に上汽GM五菱(上汽通用五菱汽車)が約50万円という驚きの車両価格で販売した「宏光MINI EV」が大ヒットしたことがあった。しかし、現在のコンパクトカークラスでは、全長4m前後のボディサイズの4人乗りハッチバックが支持されており、なかでもBYD「シーガル(海鴎)」と上汽GM五菱「ビンゴ(繽果)」が人気を二分している。

このうち「ビンゴ」には5モデルが用意され、航続距離が203km(バッテリー容量:17.3kWh)のエントリーモデルは車両価格5.98万元(約125万円)。このように低価格かつコンパクトなEVが数多く供給されるのは世界中を見渡しても中国市場だけだ。

(中国経済新聞)