中国のIT大手、字節跳動(バイトダンス)の創業者、張一鳴氏(43才)が、インドの大富豪ゴータム・アダニ氏を抜き、アジアで最も資産を持つ人物となった。
米ブルームバーグの「ビリオネア指数」によると、張氏の純資産は現在、1,055億ドル(約15兆6,000億円)に達している。世界的な人気を誇る動画投稿アプリ「TikTok」に加え、同社が力を入れる生成AI事業への期待も、資産価値を押し上げる要因となっている。
張氏の資産がブルームバーグによって初めて追跡された2019年3月時点では、約130億ドル(約1兆9,200億円)だった。それから約7年半で1,055億ドルまで増加し、ドルベースでは約8倍に膨らんだ計算になる。増加額は約925億ドル、日本円に換算すると約13兆7,000億円に上る。※1ドル=148円で換算した概算。
張氏が2012年に創業したバイトダンスは、ニュースアプリ「今日頭条」や短編動画アプリ「抖音 TikTok」などを相次いで成長させてきた。

なかでも同社を世界的企業へと押し上げたのが「TikTok」だ。短い動画を次々と表示する独自のアルゴリズムを武器に、若者を中心に世界中で利用者を増やした。
現在、バイトダンスが注力しているのがAI分野だ。同社はAIチャットボット「豆包」を展開するほか、動画生成モデル「Seedance」などの開発も進めている。
生成AIをめぐる競争が激しくなるなか、字節跳動のAI事業に対する市場の期待が高まれば、同社の価値、ひいては張氏が保有する資産の評価にも影響する。
「伝統産業の富豪」から「AI富豪」へ。
アジアの富豪ランキングではこれまで、エネルギーや小売りなどの伝統的な産業を基盤とする実業家が上位を占めてきた。今回、張氏が抜いたアダニ氏のほか、インドのムケシュ・アンバニ氏、日本のファーストリテイリングを率いる柳井正氏らも、その代表格だ。
一方、張氏の資産形成を支えているのは、ソーシャルメディアやアルゴリズムといったデジタル技術だ。そこに近年はAIという新たな成長分野が加わった。
AI関連企業の企業価値が急速に高まるなか、その恩恵を受ける創業者や大株主の資産も膨らんでいる。張氏の台頭は、こうした「AI時代の新たな富」の誕生を象徴する動きともいえる。
わずか数年前まで、世界の富豪ランキングを席巻していたのは、エネルギー、金融、小売り、不動産などの巨大企業を築いた実業家たちだった。
しかし、インターネットやスマートフォンの普及、そして生成AIの急速な発展によって、テクノロジー企業の創業者が巨額の資産を築くケースが相次いでいる。
TikTokで世界的なサービスを築き上げた張氏は、今やAIという次の成長分野にも事業を広げている。
張氏の資産が2019年の約130億ドルから1,055億ドルまで増えたことは、デジタル技術とAIが世界の富の勢力図を変えつつあることを示す一例といえそうだ。
(中国経済新聞)
