中国映画、年間興行収入290億元突破 海外市場でも広がる存在感

2026/09/16 15:45

中国映画市場の好調が続いている。年間興行収入は290億元(約6690億円)を突破し、映画を中心とする関連産業を含めた全産業チェーンの総生産額は4500億元(約10兆3950億円)を超えた。

夏休みの大型興行が終わった後も、口コミの良い作品がロングランを続けている。国内市場では多様なジャンルの作品が観客を引きつける一方、中国映画の海外進出も加速している。

なかでも注目を集めているのが、コメディーとスポーツを組み合わせた『功夫女足(Kung Fu Women’s Football)』だ。同作は周星馳(チャウ・シンチー)が脚本・監督を務め、約7年ぶりにコメディー作品の創作に復帰したことでも話題となった。前売りを含む興行収入は現在23.3億元(約538億円)を超えている。

豊かな想像力と熱いスポーツ競技を組み合わせた作品で、周星馳作品らしいユーモアも随所に盛り込まれている。観客からは、往年の作品を思い起こさせる笑いと、スポーツ映画ならではの爽快感を楽しめるとの声が寄せられている。

「戦争」と「食」を描いた『歓迎来龍餐館(Welcome to Long Restaurant)』は、戦争と食をテーマにした異色の作品だ。

舞台となるのは中東の小さな中華料理店。海外に出稼ぎに来た料理人の徐福は、静かに料理を作りながら生活することを望んでいた。しかし、突然戦争が始まり、店のマネージャーである馬俊生とともに、料理を通じて混乱の中に小さな安らぎの場を作っていく。

大規模な戦闘シーンを描くのではなく、一軒のレストランを舞台に戦争の現実を描いた点が特徴だ。砲火が飛び交う中でも営業を続ける店は、やがて一般市民や子どもたちにとっての避難場所となっていく。

海外でも評価が広がっている。フィンランドの『ヘルシンキ・タイムズ』は、劇中で繰り返される「ちゃんとご飯を食べよう」という言葉に注目。中国文化における調和や、一日一日を大切にする価値観を表していると紹介している。

家族の絆を描いた『給阿嬤的情書(A Letter to Grandma)』もロングランを続けている。世界興行収入は21億元(約485億円)を突破した。

作品の軸となるのは、海外に渡った華僑と故郷の家族を結んだ手紙「侨批(きょうひ)」。潮汕方言を中心に、南洋へ渡って生計を立てた中国人と、故郷に残された家族との間に続く絆を描いている。

派手な演出ではなく、家族への思いや故郷への郷愁を丁寧に描いたことが支持を集め、公開後も高い人気を維持している。

伝統文化を題材にした作品も注目されている。『八仙!(The Eight Immortals!)』は、中国の伝統的な「八仙」の物語をモチーフに、青緑山水画を思わせる美しい映像で蓬莱仙境を描いたファンタジー作品だ。

物語の中心となるのは、8人の普通の人々が繰り広げる冒険。随所にユーモアを盛り込みながら、互いに支え合い、ともに前へ進むことの大切さを描いている。古くから親しまれてきた神話を現代的な視点から再構築したことで、中国の伝統文化に新たな魅力を与えている。現在は海外の複数の国・地域でも公開されており、中国の「八仙」が新たな形で世界へ渡っている。

中国国内では9月に入ってからも、およそ20本の新作映画が公開された。コメディー・ドラマ作品の『燃焼吧!爸爸(Burn, Dad, Burn!)』や、恋愛ファンタジー作品の『我想留在你身辺(I Want to Stay by Your Side)』などの中国映画に加え、海外作品では『キル・ビル/ザ・ホール・ブラッディ・アフェア(Kill Bill: The Whole Bloody Affair)』や『怒之殺(Wrath of Kill)』なども注目を集めている。

こうした作品の多様化は、中国映画市場のジャンルの広がりを示している。

中国映画の勢いは国内市場だけにとどまらない。2026年の中国映画の海外累計興行収入は、8月下旬時点で4.5億元(約104億円)を突破した。上半期だけでも、20本を超える中国映画が海外市場に進出している。

これまで中国映画の海外展開は、武侠映画や大型商業作品など、一部の人気ジャンルに集中する傾向があった。しかし近年は、武侠、スポーツ、アニメーション、家族、現実社会を題材にした作品など、さまざまなジャンルが海外市場に進出している。

『功夫女足』は東南アジアで公開された後、オーストラリアやニュージーランドなどへの展開を進めている。『八仙!』も北米、欧州、大洋州などで順次公開されている。

『歓迎来龍餐館』は複数の国・地域で公開され、海外メディアからも評価を受けている。

また、『給阿嬤的情書』は海外興行収入が1億元(約23億円)を突破し、シンガポールでは年間の中国語映画興行収入で首位となった。

「中国映画を見る」から「中国を知る」へ。中国映画の海外展開には、明らかな変化が見られる。かつて海外の観客が中国映画に求めるものといえば、武侠やアクション、大規模な商業作品が中心だった。

しかし現在は、中国の美しい自然や伝統文化、家族の物語、普通の人々の日常など、より多面的な中国を知ることができる作品への関心が高まっている。

「他者の流通網を借りて海外へ進出する」という従来型の「借船出海」から、世界の観客と作品を通じて感情や価値観を共有する「グローバルな同時発信」へ。

中国国内で育った多様な作品が海外のスクリーンに広がるなか、中国映画は新たな海外展開の段階に入っている。

映画を通じて世界に届けられているのは、武侠やアクションだけではない。中国の風景、文化、歴史、家族、そしてそこで暮らす人々の日常そのものが、世界の観客に伝わり始めている。

(中国経済新聞)