ローソンが描く次の中国地図

2026/08/24 11:00

1996年7月、上海に一軒のコンビニが開いた。日系コンビニとして中国初の出店だった。あれからちょうど30年。 2026年7月17日、ローソンは中国1号店で記念式典を開いた。竹増貞信社長は「中国出店30周年、さらに大胆に新たな挑戦を」と語る。数字だけを見れば、約7000店舗。日本国内の1万4600店に比べればまだ小さいが、人口規模を思えば「まだまだ始まったばかり」という言葉に、静かな野心がにじむ。

 振り返れば、最初の道のりは決して平坦ではなかった。仮説を立て、実行し、検証する。失敗を重ね、学びを積み重ねる。現地の嗜好や流通事情、行政の規制、競合の動き――すべてが日本とは違った。試行錯誤の連続だったという。それでも、ここ10年ほどの成長は目を見張るものがある。日本から派遣されたスタッフと現地スタッフ、フランチャイズオーナー、クルーたちが一体となって「中国のお客様のローソン」を育ててきた結果だ。

 その原動力は、現地の大胆な挑戦にある。朝と昼は普通のコンビニなのに、夜になるとDJが出演し、若者が集まる店舗がある。上海では今年7月、キャラクターグッズだけを扱う専門店もオープンした。中国のアニメやゲーム、日本の知的財産(IP)とコラボしたグッズを並べ、単なる売り場ではなく「IPの発信基地」のような位置づけを狙う。通常の店舗でも、からあげクンの導入やミニローソンの加速、実店舗とECを連動させたIPコンテンツの拡販が進められている。吉林省や福建省への展開も、2026年度の重点項目に挙がる。

 会社全体の中期計画を見ると、中国事業の位置づけはより明確だ。2030年に向けて海外の売上高と店舗数を2倍に伸ばす目標のなかで、中国は「1万店超+α」を目指す。人口が日本の10倍以上あることを考えれば、15万店あってもおかしくない、という社長の言葉は、決して誇張ではない。ただ、現実は厳しい。2025年末までに1万店という当初目標は届かず、景気の減速や地場コンビニの攻勢、宅配需要の拡大といった環境変化も重なる。

 それでもローソンは、拡大の手を緩めない。理由は単純だ。中国の都市生活者にとって、コンビニはすでに「マチのほっとステーション」になりつつあるからだ。あるときは日常の買い物の場、あるときは若者のたまり場、あるときはIP文化の接点。日本で磨いた「個客・個店主義」と、現地の柔軟な発想が交わるとき、店舗はただの売場を超える。プライベートブランドの比率が高いことも、ローソンの強みの一つだろう。画一的な商品ではなく、現地の好みに寄り添った品揃えが、支持を集めている。

 もちろん、課題は残る。経済の先行き、競合の激化、人材の育成、サプライチェーンの最適化。そして何より、規模を追い求めるあまり、品質や体験価値を損なわないこと。竹増社長が繰り返し強調する「大胆な挑戦」は、単なる店舗数の増加ではなく、中国の街に根ざした新しいコンビニ像を描くことなのだろう。

(中国経済新聞)