中国女性の「自分磨き消費」が急拡大 ALO・NikeSKIMSが狙う巨大フィットネス市場

2026/08/20 12:30

中国で女性のスポーツ・フィットネス消費が急速に拡大している。米国発の人気アクティブウェアブランド「ALO」が中国本土で公式ECを開設したほか、NikeとSKIMSが協業する「NikeSKIMS」も上海に中国初の独立店舗を構える。海外ブランドが相次いで中国市場への進出を加速させる背景には、「他人に見せるため」から「自分自身を楽しむため」へと変化する中国女性の消費意識がある。

ALOが中国本土で本格展開へ

「セレブ御用達ブランド」として知られるALOはこのほど、中国本土で天猫(Tmall)の公式旗艦店をオープンした。現在、中国本土における同ブランド唯一の公式ECチャネルとなる。

同時に、店舗マネージャーや販売・サービスマネージャー、運営マネージャーなどの求人も開始。オンライン販売にとどまらず、今後の実店舗展開を見据えた動きとみられている。

ALOは米国市場で、ハリウッドスターやスーパーモデルの私服、SNSでの着用写真などを通じてブランドの知名度を高めてきた。中国でも著名人の着用アイテムがSNS上で話題となり、人気を集めている。

一方、これまで中国では公式販売ルートが限られていたため、模倣品や並行輸入品が市場に出回るケースも多く、ブランドイメージへの影響を指摘する声もあった。今回の公式EC開設は、こうした状況を改善し、中国でのブランド基盤を構築する上でも重要な一歩となる。

ALOの中国市場「初戦」は好調だ。天猫旗艦店の販売開始当日には、天猫のスポーツ・アウトドア分野における新規ブランドの開店時取引記録を更新した。現在も、ブランドアンバサダーの趙露思が着用した同型のゆったりパンツが1万本以上売れるなど、人気商品が生まれている。

NikeSKIMSも上海に初の独立店舗

ALOだけではない。女性向けブランドSKIMSとNikeが展開する「NikeSKIMS」も、中国市場への進出を本格化させている。

同ブランドは上海・興業太古匯に中国初となる独立店舗を開設する計画で、現在は店舗周辺に黒い仮囲いが設置されている。

SKIMSは2021年に高級百貨店Lane Crawford(連卡佛)を通じて中国市場に入り、国内では一部の正規販売コーナーを展開していた。しかし、販売網は限定的だった。その後、2025年にNikeとの提携を発表し、2026年にはNikeSKIMSとして初のコレクションを発売。中国国内では、これを受けて個人輸入や代理購入の人気も高まった。

海外で話題を集める2ブランドが相次いで中国市場での展開を強化していることは、国内の女性スポーツ消費市場が新たな成長分野として注目されていることを示している。

「悦人」から「悦己」へ 女性の消費意識が変化

業界関係者によると、中国の女性消費者は現在、「他人からどう見られるか」を意識した消費から、「自分自身が心地よく、楽しく感じるため」の消費へと変化している。

こうした「悦己(自分を喜ばせる)」消費の広がりが、女性のスポーツやフィットネス市場にも波及している。

10年前と比べると、ランニング、ジムでの筋力トレーニング、ハイキング、テニス、ヨガ、スキー、ダイビングなど、女性が日常的に取り組むスポーツの種類は大きく増えた。

あるフィットネスジム運営者は、かつて男性が中心だったジムのフリーウェイトエリアでも、現在ではデッドリフトやスクワットに取り組む女性を頻繁に見かけるようになったと話す。さらに、女性は男性よりもスポーツウェアやトレーニング用品への支出が多いと感じるという。

国内ブランドも女性向け商品を強化

急成長する女性フィットネス市場を狙っているのは海外ブランドだけではない。

中国のスポーツ大手、安踏(ANTA)や李寧(Li-Ning)も女性専用のスポーツラインを展開している。女性の身体特性に合わせた設計を取り入れ、サポート力や着心地、デザイン性などを継続的に改良。全国各地のショッピングモールなどに商品を展開し、比較的手頃な価格帯で初心者から本格的なトレーニング層まで幅広く取り込んでいる。

一方、海外ブランドにはファッション性やブランドイメージという強みがある。ALOはセレブリティやSNSを活用したトレンド発信を得意とし、NikeSKIMSはスポーツ機能とファッションを融合させることで差別化を図っている。

ただし、業界では、短期的な話題性だけで中国市場に定着するのは難しいとの見方もある。

スポーツ・アパレル業界のブランド戦略コンサルタント、程偉雄氏は、ALOについて「ファッション性、セレブリティによる影響力、トレンドマーケティング」が強みである一方、スポーツ専門の研究開発や機能性商品の面では課題があると指摘する。

中国のスポーツ消費が成熟するにつれ、消費者は素材の性能、運動時のサポート力、着心地などをより重視するようになっている。ファッション性だけでは、コアなヨガ・フィットネス層を長期的につなぎ留めることは難しい。商品開発の現地化や店舗網、販売・運営体制の構築など、長期的な投資が必要になる。

lululemonが築いた「ヨガ=ブランド」の壁

ALOにとって大きな競争相手の一つとなるのが、すでに中国市場で10年以上事業を展開してきたlululemonだ。lululemonは中国でヨガブランドとしての認知を着実に築き、「ヨガといえばlululemon」という強いイメージを形成している。実店舗も一線・二線都市から三線・四線都市へと拡大し、コミュニティー運営や顧客との関係構築にも力を入れてきた。

こうした長年の積み重ねがブランドの強固な基盤となっており、新規参入ブランドが短期間で追いつくのは容易ではない。そのため、ALOやNikeSKIMSの中国進出について、「参入が遅すぎる」と見る向きもある。一方で、女性のスポーツ人口そのものが急速に増えていることから、今後も新たな需要を取り込める余地は大きいとの見方もある。

「女性市場」がスポーツブランドの成長エンジンに

女性市場の拡大は、スポーツブランド各社の業績にも影響を与えている。アークテリクスなどを傘下に持つAmer Sportsの鄭捷CEOは8月18日の第2四半期決算説明会で、女性向け商品の伸びが業績を大きく押し上げていると説明した。

アークテリクスでは第2四半期、女性向けカテゴリーの成長率が全カテゴリーで最も高かった。新しいデザインや季節限定カラーに加え、ハイキング向け商品、機能性ベスト、ジャケット、パンツなどが女性消費者から支持を集め、女性カテゴリーの売上高の6割以上を新商品が占めたという。

また、競技スポーツの分野でも女性の存在感が高まっている。

世界的な総合フィットネス競技「HYROX」は、これまで「高強度の体力競技は男性向け」というイメージが強かったが、参加者の能力に応じた複数のカテゴリーを設定することで、女性の参加を拡大している。

HYROXの公式データによると、世界の女性参加者比率は2020年の24%から2025年には38%まで上昇。2025年11月の上海大会では、女性参加者の割合が43%に達した。

女性向けスポーツ市場では、単にデザイン性の高いウェアを提供するだけでは不十分になりつつある。スポーツブラには運動強度に応じたサポート力、ヨガパンツにはハイウエストや体型補正、高い伸縮性、通気性など、女性ならではの細かなニーズへの対応が求められている。

中国の女性フィットネス市場は、かつてのニッチなカテゴリーから、スポーツ業界全体の成長を左右する重要な市場へと変わりつつある。その背景にあるのは、女性のスポーツ参加率の上昇だけではない。自分自身のために健康やファッション、ライフスタイルへ投資する「悦己消費」の広がりと、女性の購買力の向上だ。

ALOやNikeSKIMSの参入は、この巨大市場をめぐる競争の新たな幕開けにすぎない。今後は、海外ブランドのブランド力と国内ブランドの供給網・価格競争力がぶつかり合いながら、中国の女性スポーツ市場はさらに細分化・高度化していくとみられる。

(中国経済新聞)