中国の美容・化粧品ブランドが海外市場での展開を加速させている。東南アジアから北米まで、オンライン販売を中心としたこれまでの進出に加え、現地の実店舗への出店も広がっている。中国国内で培った商品開発力やサプライチェーンを強みに、単なる「商品輸出」から「ブランド」「文化」「運営ノウハウ」の発信へと、海外展開の形も変わりつつある。
2026年に入ってから、中国の美容・化粧品ブランドは各国で存在感を高めている。ベトナムでは、TikTok Shopのスキンケアセット分野で上位に入るブランド「SIGHTFUTURE」が広州発のブランドとして販売を伸ばしている。マレーシアでは、珀莱雅(PROYA)の主力商品が現地のドラッグストア大手Guardianの200店舗以上に進出し、販売数量がカテゴリー上位を維持している。
シンガポールでは、橘宜集団傘下の「橘朵(Judydoll)」と「酵色(Joocyee)」が直営店3店舗を展開。米国では「花西子(Florasis)」が中国の美容ブランドとして初めて、大手美容小売チェーン「Ulta Beauty」に進出した。
輸出が拡大、海外でブランド力を高める
最新データによると、2026年1~6月の中国の美容・化粧品および洗剤などの輸出量は93.23万トンで、前年同期比33.1%増加した。輸出額は45億7700万ドル(約6650億円)で、同28.4%増となった。
中国の美容・化粧品産業では、国内市場で培ったサプライチェーンの強さや、商品開発の速さ、柔軟な生産体制を背景に、海外市場での競争力を高めている。
対外経済貿易大学の陳進教授は、中国には美容・化粧品分野のサプライチェーンが整っており、商品の改良・開発が速く、柔軟な生産能力も高いと指摘する。さらに越境ECの発展も追い風となり、従来のOEM・受託生産中心の輸出から、商品開発や自社ブランドの海外展開へと移行しているという。
特に東南アジアや中東などの新興市場が、成長をけん引する地域となっている。
2025年の中国の美容・化粧品輸出額は約78億2000万ドルに達した。ただ、フランスや米国など主要輸出国と比較すると、依然として差があり、海外市場には大きな成長余地が残されている。
「コスパ」から中国独自の文化発信へ
アジアの美容市場では長年、韓国や日本のブランドが大きな存在感を示してきた。一方、近年は中国ブランドの存在感も徐々に高まっている。米ブルームバーグは最近、美容・化粧品が中国にとって次の「ソフトパワー」の輸出品になりつつあると報じた。
中国企業の海外展開では、手頃な価格だけでなく、中国独自のデザインや文化的要素を打ち出す動きも目立つ。例えば花西子では、海外の消費者が商品を選ぶ際、機能や色だけでなく、デザインの背景や伝統技術、文化的なストーリーにも関心を示しているという。

同社の国際事業責任者Gabby Chen氏は、「品質を基礎とし、文化を核とする」ことを海外展開の方針として挙げる。同社は独自の品質基準を構築するとともに、「東洋的な美容製品の研究開発体系」を整備し、ブランドの国際展開を進めている。
橘宜集団も2025年の総小売額が7億3000万ドルを超え、そのうち海外事業の小売額は6億元(約138億円)を超えたと発表している。花西子の商品は、自社サイトやECプラットフォームを通じて、すでに世界110カ国・地域以上に販売されている。
中国コスメの海外展開では、販売方法にも変化がみられる。
初期段階では、越境ECを利用してオンラインの消費者を獲得し、価格競争力を武器に市場へ参入するケースが多かった。しかし2026年に入ってからは、海外で実店舗を展開し、現地市場に深く入り込む動きが強まっている。
業界メディアの集計によると、2026年6月時点で、中国の大手美容ブランドのうち16社以上が海外の実店舗やオフライン販売網に進出しており、東南アジア、東アジア、中東などに展開している。
珀莱雅では「源力」シリーズや「紅宝石」シリーズなどの主力商品が、マレーシアのGuardian各店舗に相次いで進出。花西子もフランス、米国、アラブ首長国連邦、日本、ベトナムなどへの販売網を拡大している。
なかでも東南アジアは、中国ブランドにとって重要な進出先となっている。中国と比較的近いEC環境や消費者の美意識、生活習慣などが背景にある。
橘宜集団の湯玥・広報・コミュニケーションディレクターは、東南アジアを海外進出の第一歩として選んだ理由として、若い人口構成、ソーシャルメディアの高い普及率、新ブランドを受け入れる消費者の速さを挙げる。また、肌の色や気候、消費者の美意識にも中国との共通点があり、ECやコンテンツプラットフォームの発展によって新ブランドが市場に参入しやすい環境が整っているという。
海外展開は「流量戦」から「市場経営」へ
中国コスメの海外進出が広がる一方、業界では短期的な売上や店舗数だけを追うのではなく、現地で長期的にブランドを定着させることが重要になっている。
金融評論家で金董匯の首席エコノミストを務める邢星氏は、投資家が美容ブランドの海外事業を評価する際、海外売上高だけでなく、海外事業の利益率、リピート率、マーケティング投資の効率、現地での運営能力などを重視していると説明する。
その上で、単純に広告費などを投入して売上高を伸ばすビジネスモデルには注意が必要だと指摘。多くの企業にとっては、「まず東南アジアで基盤を固め、その後、欧米市場で小規模に展開する」という段階的な戦略が現実的だとしている。
対外経済貿易大学の洪勇・副研究員も、短期的な成長を冷静に見る必要があると指摘する。今後は流量や価格だけの競争から、ブランド力、商品力、現地運営能力を総合的に競う段階へ移行するとみている。
中国政府も美容・化粧品産業の海外展開を政策面から支援している。
2026年1月末、税関総署は「広州市『国際美湾』輸出入化粧品産業の質の高い発展を支援する9項目の措置」を発表した。「ホワイトリスト」に登録された企業について、「適格性保証+サンプル検査後の通関」という監督管理方式を導入している。
改革から半年が経過し、広州市白雲区の第1陣7社では、検査率が約80~90%低下し、全体の通関時間も70%以上短縮されたという。さらに2026年5月には、税関総署が改訂版「輸出入化粧品検査検疫監督管理弁法」を発表した。同規定は12月1日から施行される予定で、海外展開を進める化粧品企業の負担軽減と通関効率の向上が期待されている。
陳進教授は、今後3~5年が中国美容ブランドにとって海外市場への本格進出と現地化を進める重要な時期になるとみている。今後は東南アジアだけに依存するのではなく、中東や中南米などを含む複数地域で事業を展開し、販売チャネルもオンライン中心からオンラインと実店舗を組み合わせた形へ移行すると予測している。
中国コスメの海外展開は、単に中国の商品を海外で販売する段階から、現地の消費者に合わせて商品やブランド、販売・運営体制を構築する段階へと移りつつある。
今後の課題は、「商品を売る」ことから「市場を運営する」ことへの転換だ。現地の肌質、気候、美意識、消費習慣に合わせた商品開発に加え、ブランド構築、現地人材、マーケティング、アフターサービスなどを整備し、現地の消費者に受け入れられるブランド価値を築けるかが、中国コスメのグローバル展開を左右することになりそうだ。
(中国経済新聞)
