中国ブランドの自動車がアフリカ市場で存在感を高めている。近年、中国の自動車メーカーは完成車の輸出にとどまらず、現地組立や販売、アフターサービスまで事業を広げている。エジプトのカイロからアンゴラの首都ルアンダまで、価格競争力や耐久性を強みに、現地の通勤や家庭、商用など幅広い用途に対応している。
中国メーカーは現地企業との協力を通じて、生産、販売、整備などの体制を整備するとともに、人材育成や技術移転も進めている。こうした取り組みは、アフリカの自動車産業や製造業の発展を支える動きとして注目されている。
「中国車に乗り換える同業者が増えている」
エジプト・カイロのタハリール広場では、タクシー運転手のワエルさんが新型の吉利汽車「エンペラード」を運転している。この車はエジプトのBAMC工場で現地組立されており、カイロのタクシーや配車サービスで主要車種の一つとなっている。
ワエルさんによると、この車は耐久性が高く、燃費が良いうえ、故障が少ないという。気温が40度に達することもあるカイロで、長時間の低速走行が続いても安定して走行できる点を評価している。
また、現地での販売・整備体制も購入を後押しした。吉利はエジプトに部品の中央倉庫を設け、ブレーキパッドやオイルフィルターなどの消耗品を迅速に供給している。購入方法にも柔軟な選択肢があり、7年間の保証も用意されている。現地の道路事情に合わせて、車台や足回りも改良されているという。
ワエルさんは「ちょっとした故障ならすぐ修理して営業に戻れる」と話し、「同業者の間でも中国車に乗り換える人が増えている。手間も費用も少なく、信頼できる」と語った。
アンゴラのルアンダ近郊に住む小学校教師のソフィアさんは、通勤のため、最近初めて自家用車を購入した。選んだのは中国の捷途(ジェトゥール)の車だった。
ソフィアさんは「車内が広く、通勤だけでなく家族での移動にも使いやすい。分割払いの月額が、毎月のタクシー代より安かった」と話している。
ルアンダの大規模な自動車販売市場では、捷途、長安汽車、吉利汽車などの中国ブランドが大きな存在感を示している。アンゴラ自動車販売業者協会のフェルナンド氏によると、5年前の同市場では欧米や日本のブランドが中心で、SUVは一般家庭にとって高価だったという。
同氏は「中国ブランドの参入によって自動車価格がより手頃になった」と指摘し、中国ブランドの市場シェアが現在60%を超え、現地の自動車市場の構図が変化したと説明している。
2025年の中国車のエジプト市場での販売シェアは39%に達した。また、アンゴラでは中国ブランドが通勤、家庭での利用、商用などさまざまな用途に広がっている。
中国メーカーによる現地化は販売だけにとどまらない。7月3日には、奇瑞汽車のロズリン工場の操業開始式典が南アフリカの行政首都プレトリアで開かれた。
1963年に建設された同工場は、南アフリカで最も歴史のある自動車生産拠点の一つで、かつては日本の自動車メーカー、日産が運営していた。奇瑞汽車は同工場を取得し、現地調達やサプライチェーンの構築を進め、研究開発、製造、部品供給、人材育成、輸出を一体化した自動車産業拠点にする計画だ。
南アフリカのマシャティレ副大統領は式典で、自動車産業は同国の工業発展を支える重要な柱だと指摘し、今回の投資が自動化やデジタル化、先進的な製造システムの整備を促し、雇用創出や経済成長につながることへの期待を示した。
エジプトのヘルワンにある捷途の組立工場でも、自動化設備が稼働し、車両の生産が進められている。
工場の責任者によると、中国側のパートナーが自動車製造の技術や管理ノウハウを提供したことで、現地の組立技術が向上した。工場は約1500人の雇用を生み出し、これまでに約200人の専門技術者を育成したという。専用の技術研修センターでは、中国人技術者が現地の若者に自動車の組立、故障診断、電気系統の修理などを指導している。
2025年5月には、エジプトのマドブーリー首相立ち会いのもと、捷途と現地企業がノックダウン生産プロジェクトで契約を締結した。完成車の輸出から現地生産へと事業モデルを広げ、現在はエジプト国内だけでなく、スーダンやリビアなどにも製品を輸出している。
長安汽車もカイロに組立工場を設け、現地生産を進めている。現地組立車は価格競争力を背景に、エジプトの小型SUV市場で上位の販売台数を維持しているという。同社は2026年にエジプト現地生産の2車種目を投入する計画で、2028年までに5車種の現地生産を実現し、生産、研究開発、販売を一体化した拠点の構築を目指している。
中国ブランドのアフリカ進出を支えているのが、販売網とアフターサービスの整備だ。
アンゴラのルアンダにある捷途の販売・展示センターは、敷地面積3260平方メートルで、アフリカ最大規模の自動車展示・販売施設の一つとなっている。現地で20年間事業を続けてきた販売会社の責任者によると、ルアンダに大型店舗12店を展開し、地方にも直営店を設け、アンゴラの主要都市を販売網でカバーしている。
現地の道路事情や生活スタイルに合わせた車両開発も進めている。アンゴラでは複雑な道路環境に対応するため走破性を高め、多人数世帯が多いことを踏まえて車内空間を広げるなど、現地の需要に合わせた改良を行っている。捷途の2025年のアフリカ年間販売台数は3万台を超えた。
アフターサービスの拡充も中国ブランドの競争力の一つとなっている。カイロやルアンダなどでは中国ブランドの4S店が増え、整備設備や交換部品を整え、現地の技術者が車両の修理に対応している。

吉利汽車はアンゴラで24時間対応のロードサービスを展開し、奇瑞汽車はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに大型部品倉庫を設け、アフリカ各地への部品供給を支える体制を構築している。
中国メーカーは事業拡大だけでなく、現地社会への貢献にも取り組んでいる。捷途はアフリカの環境保護に関する公益活動に参加し、長安汽車は自動車文化体験施設を整備。吉利汽車も教育支援活動を展開している。
中国ブランドの自動車は、完成車を輸出する段階から、現地での生産、販売、整備、人材育成までを含む事業モデルへと広がりつつある。アフリカで自動車需要が拡大する中、中国メーカーによる現地化が、現地の産業や雇用、技術人材の育成にどのような影響を与えるかが注目されている。
