米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)のジェンスン・フアン(黄仁勲)CEOが今週、日本を訪問し、ロボット、自動車、医療、金融など幅広い分野で相次いで協力を発表した。日本の製造業や半導体サプライチェーンとの連携を一段と深めることで、AIインフラと「フィジカルAI(Physical AI)」のエコシステム構築を加速させる狙いが鮮明になっている。
今回の訪日でエヌビディアは、日本の産業用ロボット大手ファナック、安川電機との提携を発表し、ロボット向けAI技術の共同開発を進める。また、トヨタ自動車との協力も拡大し、自動運転、工場のデジタルツイン、スマートシティなど幅広い分野で連携を強化する。
フアンCEOは東京で開かれたメディア向けイベントで、「AIによってロボットはより賢く、適応力が高く、誰もが利用できる存在になる」と述べ、日本をフィジカルAI時代の重要拠点と位置付けた。
また、AI投資を巡る市場の過熱感については、「AIバブルにはまだ程遠い。需要は極めて強い」との認識を示し、「今後少なくとも10年間はAIインフラの整備が必要になる」と強調した。さらに、日本の「ソブリンAI(国家AI)」に関する新たな協力計画も今週中に発表する予定だと明らかにした。
30年前の「恩人」と秋葉原で再会
今回の訪日で大きな注目を集めたのが、東京・秋葉原で実現した30年ぶりの再会だった。
世嘉(SEGA)によると、ジェンスン・フアン(黄仁勲)CEOは7月15日、世嘉が開催したイベントに出席し、同社元社長の入交昭一郎氏と久しぶりに同じステージに立った。

フアン氏はイベントで、「世嘉がしてくれたこと、そして入交昭一郎氏がしてくれたことがなければ、エヌビディアは今日まで生き残ることはできなかった」と語り、30年前の支援に改めて感謝の意を示した。
両者の縁は1996年ごろにさかのぼる。当時、創業間もないエヌビディアは、セガの次世代ゲーム機向けグラフィックスチップの開発を進めていたが、技術開発に失敗し、経営破綻の危機に直面していた。
フアン氏は当時世嘉副社長だった入交氏に自ら開発失敗を打ち明けた。しかし、入交氏は責任を追及することなく、資金繰りが尽きかけていたスタートアップ企業だったエヌビディアへの約500万ドルの出資を世嘉社内で後押しした。
フアン氏は当時を振り返り、次のように語っている。
「私は入交氏に、『この資金を私たちに投資すれば、そのお金は失われる可能性があります。しかし、投資していただけなければ、私たちは倒産します』と伝えました。数日後、入交氏は『投資しよう』と言ってくれました。」
この資金調達により、エヌビディアは人員を約60%削減して経営を立て直し、1997年に「RIVA 128」を投入。その後、「RIVA TNT」「GeForce 256」などの製品でGPU市場における地位を確立した。
その後、エヌビディアは1999年に時価総額約3億ドルで株式上場を果たした。世嘉は間もなく保有株式を売却し、約1500万ドルの利益を得たとされる。一方、現在のエヌビディアの時価総額は5兆ドルを超え、世界を代表するAI半導体企業へと成長した。
今回の再会では、両社が今後も協力関係を継続することも発表された。世嘉の今後のゲームタイトルはエヌビディアが新たに発表した「RTX Spark」プラットフォームに対応し、新作『Virtua Fighter CROSSROADS』にも採用される予定だ。両社の協力関係は30年前に始まり、当時エヌビディアの「NV1」チップはPC版『バーチャファイター』のグラフィックス処理を支えた。これが、現在まで続く両社の協業の原点となっている。(つづく)
(中国経済新聞)
