累計赤字1,500億円超、それでも上場へ 粤芯半導体が挑む中国半導体産業の新たな一歩

2026/06/16 11:00

広東省広州市で2017年に誕生した半導体メーカー・粤芯半導体が、中国資本市場で新たな歴史を刻もうとしている。

6月15日、深セン証券取引所の上場審査委員会は、粤芯半導体技術股份有限公司の創業板(ChiNext)上場申請を承認した。今後、登録手続きを経て上場が実現すれば、同社は中国本土で初めて創業板に上場するウエハー製造企業となる。

もっとも、その道のりは決して平坦ではない。

同社は中国本土で唯一、12インチシリコンフォトニクス(SiPho)ウエハーの量産能力を持つ企業として注目を集める一方、創業以来続く巨額赤字という重い課題も抱えている。

目論見書によると、粤芯半導体の売上高は近年急速に拡大している。2023年の10億4,400万元(約219億円)から、2025年には25億8,200万元(約542億円)へと増加し、年平均成長率は57%を超えた。

しかし、売上拡大の陰で損失も膨らんでいる。

2023年から2025年までの3年間で計上した純損失は合計65億元超(約1,365億円)。2025年末時点の累積未処理損失は65億元、日本円に換算すると約1,540億円に達する。

2026年第1四半期も状況は変わらなかった。売上高は前年同期比72%増の8億元(約168億円)となったが、最終損失は約124億円へ拡大した。

こうした数字だけを見ると、上場企業としての将来性に疑問を抱く向きもある。

だが、半導体業界では必ずしも珍しいことではない。

特にウエハー製造を手掛けるファウンドリー事業は、巨額の設備投資と長期的な研究開発が不可欠な典型的な装置産業だ。工場建設から量産体制の確立までに数年を要し、その間は赤字が続くケースも少なくない。

粤芯半導体も今回の上場で75億元(約1,575億円)を調達する計画だ。そのうち35億元(約735億円)を新たな12インチ生産ライン建設に充てるほか、研究開発や運転資金にも投資する。

現在、同社は2つの12インチ工場を運営しており、月産能力は6万3,300枚。設備稼働率は96%を超える高水準を維持している。

さらに、第4工場の建設も始まった。完成後には総生産能力が月産12万枚へ拡大する見込みで、中国南部最大級のファウンドリーへと成長する可能性がある。

同社が特に力を入れているのが、シリコンフォトニクス分野だ。

シリコンフォトニクスは、半導体回路と光通信技術を融合する次世代技術として期待されており、AIデータセンターや高速通信分野で需要拡大が見込まれている。

粤芯半導体は2024年に12インチ90ナノメートルのシリコンフォトニクス技術プラットフォームを立ち上げた。市場調査会社のデータによると、中国本土で12インチシリコンフォトニクスウエハーを大規模量産できる企業は現在のところ同社だけだという。

広州黄埔区に誕生した同社は、地元では「広州第一芯(広州初の本格半導体工場)」とも呼ばれている。

2019年に量産を開始して以来、累計出荷枚数は180万枚を突破。顧客数は200社を超え、中国国内の主要アナログ半導体メーカーの約8割と取引関係を築いている。

もちろん課題も残る。

2025年末時点の資産負債率は84%を超え、上位5社の顧客が売上高の6割以上を占める。黒字化についても、会社側は最短でも2029年になるとの見通しを示している。

それでも、中国半導体産業の育成を進める中で、粤芯半導体の上場は象徴的な意味を持つ。

AI需要の拡大や半導体市場の回復を背景に、世界のファウンドリー市場は新たな成長局面に入ろうとしている。巨額赤字を抱えながらも最先端技術への投資を続ける粤芯半導体の挑戦は、中国の半導体産業が次の段階へ進めるかどうかを占う試金石となりそうだ。

(中国経済新聞)