かつて中国において、弁護士は「経済的自由を約束されたエリート」の代名詞であった。しかし、昨今の中国経済の停滞は、この花形職業の足元を激しく揺さぶっている。企業家たちが苦境に立たされる中、弁護士もまた「危機的職種」へと変貌を遂げつつある。中国メディア『財新網』の報道や業界内の実情から、彼らが直面している過酷な現実を浮き彫りにする。
北京のある法律事務所で長年パートナーを務めてきた40代の男性弁護士が、突如として弁護士登録の抹消を決断した。働き盛りで経験も豊富な彼を追い詰めたのは、「固定費」という名の重圧である。
多くの法律事務所では、パートナー弁護士は毎月の社会保険料に加え、事務所運営コストの分担金として数万元(数十万円)を納める義務がある。たとえその月の業務収入がゼロであっても、この支払いは免除されない。
「これでは自分の貯金を切り崩して仕事をしているようなものだ」
さらに、パートナーとして背負う経営リスクや、将来の受給額が不透明な社会保障制度への不信感が追い打ちをかけた。彼は「持ち出し」で働く矛盾に耐えかね、業界からの一時撤退を選んだのである。
30代の女性弁護士が直面しているのは、不動産バブル崩壊の余波だ。数年前に購入したマンションの資産価値が暴落し、銀行ローンの残高を下回る「ネガティブ・エクイティ(債務超過)」状態に陥っている。
不安定な弁護士収入に対し、毎月のローン返済は容赦なく押し寄せる。安定を求めて企業の法務担当(インハウスローヤー)への転身を試みるも、好条件のポストは空きがない。副業として露天商まで経験したが、得られる実入りは微々たるものであった。かつての「成功への階段」は、今や彼女を縛り付ける足枷へと変わってしまった。収入の減少が、彼女を深い心理的不安へと突き動かしている。
一般に、弁護士は「経験を積むほど価値が上がる(越老越吃香)」と言われてきた。しかし、ある60代の老弁護士が直面した現実は、その定説を冷酷に覆すものであった。
新しい事務所の面接に赴いた際、所長は彼に対し「これまでの人脈を活用して、どれほどの歩合(コミッション)を希望するか」と尋ねた。しかし、老弁護士の回答は意外なものであった。「私は給与制の勤務弁護士(授薪律師)として働きたい。案件はそちらで用意してほしい」
長年業界に身を置いても、自身の固定客を維持し続けることは容易ではない。引退を意識する年齢になってもなお、案件獲得能力を持たない「普通の弁護士」が大多数であるという現実が、そこにはある。
大都市を離れる弁護士も増えている。ある者は辺境の地へ、ある者は海外へ。数年前のパンデミックによるロックダウンのトラウマから立ち直れず、物理的な距離を置くことを選んだのだ。また、より現実的な戦略として、拠点を上海から隣接する浙江省へ移すケースも目立つ。浙江ではオフィス賃料が上海の3分の1程度で済むこともあり、同じ案件でもより低い価格で受任できる。逆に上海では、高いコストをカバーするために報酬を上げざるを得ず、競争力が低下してしまう。
豪華なオフィスビルに入居することは、弁護士にとって「信頼の象徴」であった。しかし今、それは「ビルオーナー(大家)のために働いている」という皮肉な現実に直結している。見栄を捨て、実利を取らなければ生き残れない時代が到来しているのだ。
(中国経済新聞)
