大手IT企業、AI人材争奪が過熱 インターン月収100万円超・求人は14倍に急増

2026/03/17 14:30

2026年春の採用シーズンに入り、中国のインターネット大手によるAI人材の争奪が一段と激化している。現在までに、ByteDance、Tencent、Meituan、Ant Groupなどが相次いで春季の新卒採用やインターン募集を発表し、合計で約3万件の求人を公開した。中でもAI関連職の割合は過去最高となり、正社員への登用機会も拡大している。

ByteDanceは、今年のインターン採用が同社史上最大規模となり、正社員への登用率が50%を超える見込みであると明らかにした。

AI求人、わずか1年で14倍に拡大

2026年卒業予定の学生は、かつてないAIブームの中に置かれている。ビジネスSNS「脈脈(マイマイ)」のデータによれば、2026年1~2月のAI関連求人は前年同期比で約12倍に増加した。新経済分野に占めるAI職の割合も、2025年の2.29%から26.23%へと急拡大している。さらに、2026年以降に新規掲載されたAI求人は前年同期比で14倍に達した。

求職者側の競争も激しさを増している。人材サービス「猟聘(Liepin)」によると、2026年の仕事始めの週において、「AIツールの使用経験あり」と明記した履歴書は前年同期比で139.67%増加した。特に、プロダクトマネージャー、グラフィックデザイン、ビジュアルデザインの分野で顕著である。

こうした状況の中、いわゆる「大規模モデル対策の定番問題集」とも言える面接対策資料が学生の間で広まり、インターン経験を積むことでAI時代の不安と機会に対応しようとする動きが見られる。

AI人材の早期確保を狙い、企業の採用競争は大学にとどまらず、さらに若い世代へと広がっている。ヘッドハンターのAllen氏は、「AI分野は技術革新と製品開発の両面で急速に進展しており、大手企業は全体の6~7割の力をトップ人材の確保に注いでいる」と指摘する。一部のスタートアップでは、最高技術責任者(CTO)の採用対象を「清華大学の博士に限定する」ケースもあるという。

これらの人材には、若年であること、名門大学出身であること、高い潜在能力を持つことといった共通点がある。AIネイティブ世代として、従来のモバイルインターネット時代に育った人材に比べ、技術や製品への理解で優位性があるとされる。

背景には需給のひっ迫がある。2030年までに世界のAI人材不足は280万人を超えると見込まれ、中国国内でも需要と供給の比率は3.5対1に達している。

また、トップ人材の価値も急騰しており、大手企業ではAI分野の博士課程修了者の初任給が年200万~300万元(約4600万円~7000万円)に達するのが一般的となっている。

こうした「中核人材」への需要の高まりにより、企業間の引き抜き競争も一段と激化している。企業はGoogleやDeepSeekといった国内外の有力企業から人材を積極的に採用している。

Tencentは昨年、OpenAI出身の研究者・姚順雨氏を迎え、「混元」大規模モデルチームの再編を担わせた。ByteDanceも、Google傘下のDeepMindの元副社長・呉永輝氏を招聘し、基礎研究チーム「Seed」の責任者に据えた。また、DeepSeek出身の若手研究者・羅福莉氏はXiaomiに加わっている。

さらに、アリババの大規模モデル「通義千問(Qwen)」の元責任者・林俊旸氏の退職も大きな注目を集めた。同時に退職した後工程責任者の郁博文氏は、ByteDanceのSeedチームに移り、視覚モデルおよびマルチモーダル分野の後工程を担当している。

投資機関も採用競争に参入

AI分野への関心は、ベンチャーキャピタルや投資ファンドにも広がっている。従来、大規模モデルの開発はコストが高く、事業化の見通しも不透明であったため、投資は慎重だった。しかし、ManusやOpenClawといった応用型企業の登場と急速な企業価値の上昇により、AIの実用化への期待が高まっている。

その結果、投資機関は「AI投資担当人材」の採用を強化しており、ByteDanceの「豆包」やKimi、MiniMaxなどで製品や戦略に携わった経験を持つ人材を特に重視している。

中高生向け育成プログラムも拡充

企業はさらに若年層への人材育成にも力を入れている。Tencentは2019年から高校生向けの「星火計画」を実施しているほか、2025年にはByteDance創業者の張一鳴と上海交通大学の俞勇教授が「知春イノベーションセンター」を設立し、16~18歳の若者を「専任の予備研究員」として育成する取り組みを開始した。

2026年3月には、Tencentが世界の中学生を対象とした「青少年科学実習プログラム」を発表し、フィンテック、微信ミニプログラム(AI+教育)、検索(AIプロダクト)の3分野で実習機会を提供している。

学生はインターン重視、月収6万元(約140万円)の事例も

一方、多くの学生にとっての課題は、「AI時代における自らの立ち位置」を見極めることである。AIに乗り遅れる不安と、AIに代替される懸念が同時に存在している。

理工系からAI分野に転向した大学院生は、100日以上かけて大規模モデルを独学し、複数の企業から内定を得た。「就職を目的とするなら、論文やコンテストよりもインターン経験の方が価値が高い」と語る。

また、英語専攻からAI分野に転身した学生も、AlibabaやXiaomiから内定を得ており、「実務経験とプロジェクトの蓄積が差別化につながる」と指摘する。

特にロボット分野では求人が急増している。2026年の春節後最初の週には、身体性を持つ人工知能分野の新規求人が前年同期比で73.65%増加し、全業界平均を大きく上回った。

スタートアップ企業の待遇も高水準で、強化学習アルゴリズムの専門家は月給6万~9万元、身体性AIモデルの専門家は7万~10万元、AIアルゴリズムエンジニアは4万~7万元とされる。

さらに、清華大学出身の若手起業家が設立した企業では、大規模モデル関連インターンの1日あたりの報酬が最大3000元に達し、月収換算で最大6万元となるケースもある。

大学改革と文系人材の活用

AI人材の育成に向け、大学改革も進んでいる。2025年以降、北京大学や清華大学など15以上の大学が定員拡大を進め、AIなどの先端分野への重点化を図っている。

一方で、中国伝媒大学は翻訳や写真など16専攻を廃止し、中南大学も学部専攻数を104から89へ削減するなど、構造改革が進められている。

2020年から2024年にかけて新設された人気専攻では、人工知能、デジタル経済、スマート製造、大規模データ管理などが急増し、特に人工知能分野では5年間で406の専攻が新設された。

また近年では、中国語、脚本、社会学、ジャーナリズムなどの文系分野出身者を対象としたAI関連職も増加している。AI評価専門家(文章分野)、AIストーリー設計者、AI訓練担当者などがその例であり、技術者と連携して、より人間らしい表現を実現する役割を担っている。

シリコンバレーでは、「最高ストーリー責任者」と呼ばれる新たな職種も登場し、年収は約30万ドルに達するとされる。

AIの急速な普及は、雇用構造そのものを大きく変えつつある。大手企業、スタートアップ、投資機関、教育機関を巻き込んだ人材争奪戦は、今後さらに激化していくとみられる。

(中国経済新聞)