中国では、AIを活用した「一人会社」(OPC: One Person Company)の起業ブームが各地で起きている。複数の都市で専用支援政策が相次いで打ち出され、注目を集めている。
不完全な統計によると、北京、上海、深圳、杭州、蘇州などの主要都市の複数の区で、現在、OPC向けの専用支援政策が施行されている。従来の個人事業主とは異なり、「一人会社」とは、1人の起業家がAIツール群を駆使して、製品開発から市場運営、顧客サービスに至る全プロセスを一人で完結させる新型起業形態を指す。「軽資産・高速イテレーション・高成長」がその大きな特徴だ。
きっかけとなったのは、2025年12月8日に北京市海淀区中関村が発表した北京市初のAI OPCサービス計画である。これを皮切りに、上海、蘇州、杭州、深圳などが次々と類似計画を公表した。
各地の支援重点は若干異なる。深圳南山区の「模力営」はソフト・ハード両方をカバーし、コンテンツクリエイティブ、具身知能(embodied AI)、AI+ハードウェア分野に注力している。一方、宝安区は「OPCハード起業」を明確に掲げ、プロジェクトにハードウェア実体と製造検証能力を必須とする。北京経済技術開発区(亦庄)はコンテンツ生成やデータインテリジェンス分野の「スーパー個人」を重点的に育成。成都高新区ではAI+デジタル文化創意に特化したOPC専用コミュニティが登場している。
政策内容を見ると、场地(オフィススペース)と資金支援が主な柱だ。各地の政府はOPC専用パークの整備を進め、単なる家賃減免から「スペース+コミュニティ+産業チェーン」のエコシステム構築へと進化している。例えば、深圳南山区の「模力営」AI OPC起業コミュニティは、入居チームに2年間の低コストオフィスを提供するほか、算力・データ・コンプライアンス・シーン・ハードウェア・人材・オープンソースの7大プラットフォームを一棟に集約。AIのアルゴリズム開発から製品実装まで必要なキーリソースを一箇所で完結させ、上流下流の連携・ソフトハードの協同を促す産業生態圏を目指している。
資金面では、政府系ファンドや国有資本プラットフォームが積極参入。杭州上城区は10億元規模のOPC専用子ファンドを設立予定。蘇州高新区は区属国有金融プラットフォーム「蘇高新金控」を活用し、企業全ライフサイクルをカバーする資本サービス体系を構築している。
算力支援も必須項目として定着。深圳龍崗区は算力施設の相互接続を推進し、医療・ビジュアル・建築などの垂直ドメイン大モデルを開放。北京亦庄は毎年、算力券・データ券・モデル券を最大3億元分投入。杭州のOPC起業者コミュニティ「鴻鵠匯」は業界初の「一人会社オペレーティングシステム」(OPC-OS)をリリースし、算力リソーススケジューリング機能を統合した。
加えて、ビジネス環境の改善も重視されている。上海徐匯区はOPCなどの初期創業者向けに、財務・税務・法務・人事などのアウトソーシングサービスパッケージを提供し、優良初創企業に対して無料の代理記帳・人事代理・専門法律サービスを無償で付与。深圳龍崗区は「OPC専用相談窓口」を設置し、「一窓通」サービスにより、起業者が3営業日以内に工商登記を完了できるようにしている。
AI技術の急速な進化により、従来のチーム起業モデルが根本から変わりつつある中、中国の複数都市が「一人+AI=会社」という新形態を国家戦略レベルのイノベーション最小単位として位置づけ、積極的に支援している。この動きは、AI時代の本格的な「スーパー個人」時代到来を象徴するものと言え、今後さらに広がる可能性が高い。
(中国経済新聞)
