中国国内でネット融資(P2P貸付・オンライン小口融資)事業により巨額の利益を上げていた中国企業が、数年前にインド市場へ進出を決意した。巨大な人口と金融包摂の低さを背景に、国内で成功した「高金利・高回転」モデルをそのまま持ち込み、大儲けを狙った。しかし、現実は厳しく、インド側から「逆収穫」される形で大損失を被り、多くの企業が撤退を余儀なくされた。
インド市場の魅力は明らかだった。人口14億人超、携帯電話ユーザーは6億人以上。一方で銀行の金融サービス利用率は50%未満、クレジットカード普及率はわずか5%程度。まさにネット貸款の理想的な「ブルーオーシャン」だった。さらに、インド法では貸付年利の上限が明確に定められておらず、手数料(審査料など)の名目で実質金利を引き上げる余地もあった。これは国内の「頭金カット(中国語「砍頭息」)」に似た手法で、多くの中国企業を引きつけた。
しかし、現地に進出した企業はすぐに壁にぶつかった。最大の問題は不良債権率の高さだ。国内では通常5〜8%程度で抑えられていた不良債権率が、インドでは40〜80%を超えるケースが続出した。ある企業は2年間で約50億ルピー(約4.3億元相当)を貸し付けたが、不良債権率は47%に達した。100元貸して戻ってくるのは20元程度という惨状で、人件費・オフィス代・税金を考慮すれば赤字垂れ流し状態だった。
なぜここまで悪化したのか。主な原因は以下の通りだ。
言語と文化の壁:インドには22の公用語と数千の方言が存在する。催収チームが準備した英語・ヒンディー語スクリプトはほとんど通用せず、催収は「鶏同鴨講(鶏とアヒルの会話)」状態に。中国語の弁護士通知書など街頭ではただの紙切れで、訴訟を起こしても裁判・審理に3〜5年かかるのが普通だった。
信用体系の不在:インドでは信用情報が極めて薄い。最大の信用情報機関のデータによると、2024年時点で信用スコアをチェックした人は全人口の9%程度に過ぎず、特に農村部ではほぼゼロ。多くの借り手にとって「借金返済」は義務意識が薄く、返さないことが「賢い」行為とさえ見なされるケースもあった。国内のような「親族・職場への情報拡散」や「恥の文化」を活用した催収はほぼ無力だった。
厳格化する規制:当初は野放し状態だったが、2020年以降、インド準備銀行(RBI)が本格的に規制に乗り出した。デジタル貸付ガイドラインの強化、費用構造の公開義務化、金利上限の設定、暴力催収の禁止などだ。さらに、Google Playストアから中資系貸付アプリが大量に削除され、一部企業はマネーロンダリング容疑で資金凍結、幹部逮捕という事態に陥った。合規できないプラットフォームは次々と撤退を強いられた。
結果として、ピーク時にはインドのオンライン貸付プラットフォームの3分の1近くが中資系だったが、現在ではほぼ全滅状態。360数科(奇富科技)や小米金融、昆仑万维などが関与した著名プラットフォームも例外なく撤退した。
この失敗は、中国企業が出海(海外進出)する際の教訓を象徴している。同じビジネスモデルがどこでも通用するわけではない。現地の文化、信用環境、司法制度、規制動向を深く理解しなければ、どんなに優れた技術や資金があっても「水土不服」で失敗する。中国ネット融資のインド惨敗は、グローバル展開における「現地適応」の重要性を改めて痛感させる事例となった。
(中国経済新聞)
